今年、なぜあなたは転職しないほうがいいのか?
この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:一昨日、「沈まぬ太陽」の話で日本人は柔軟性と多様性が足りない、と言ったことに関して補足。なぜ今年、あなたは会社を辞めてはならないのか。
常識に囚われたら飛躍はない
おととい、沈まぬ太陽の主人公・恩地(おんち)がパキスタン、イラン、ケニヤと、誰もが働くのを嫌がる赴任地に追いやられた描写について、野呂は「もっと前向きにとらえて、ガンガン喜び勇んで働けばいいのに」と批判しました。
物語の設定では、恩地は東大卒、労働組合委員長で、正義感が強く、曲がったことが大嫌いという性格です。
英語も堪能で、エリート、労組のリーダーとして会社に楯突いてなければ、出世コースをひた走っていたでしょう。
しかし、その反体制で切れ者というキャラクター故に、会社は彼を恐れ、いわゆる島流しにしたのです。
これはフィクションですとテロップでしつこく断っていますけれど、山崎豊子氏は、超大作「白い巨塔」のときと同じく、膨大な数の関係者に取材しています。
おそらくこの恩地も、実在のモデルがいるはずです。
そういうことから推し量ると、やっぱり東大卒エリートの考え方、行動は「狭いな」と感じるのです。
もっと有り体に言うと、恩地は本社の中枢部、メインストリームにいないと不幸を強く感じる、つまりありきたりな出世欲に駆られている俗物だなあ、と感じるのです。正義感は買いますけど。
左遷など実は存在しない
この映画では、「懲罰人事」という言葉が何度も出てきました。
会社に労組委員長として反対の立場を取った、みせしめに重要でないポスト、それも生活環境が厳しい海外の土地に放り捨てた、これが懲罰人事というものです。
この言葉は終身雇用が前提の日本の大企業というものを、端的に物語っています。
嫌ならやめればいいのですが、やめると収入や地位、世間体が、もっというと自分の存在意義さえ、なくなってしまうのです。
しかし、昨日も申し上げましたが、ものは受けとりかたひとつです。
ピンチはチャンスであり、人間万事塞翁が馬なのです。
発展途上国ならば政府関係者に見識とビジネスのスキルを見せつけて、国のアドバイザーになることだって可能でしょう。
ビジネスの前に世界平和に貢献すべきだ、という思想があれば、ビジネスそしてプライベートでその国にいろんな形で貢献できるでしょう。
身近なコミニュティで武道を教えたり、そうした心得がなければ折り紙教室くらいやれば、大変な国際貢献になりますよね。
しかし、映画で描かれている主人公は、僻地に飛ばされた我が身の不幸を嘆くだけです。
実は、左遷なんて存在しないんです。
会社が左遷、懲罰人事のつもりでも、受け取る側が「住めば都」「人間万事塞翁が馬」だと思えばいいんです。
恩地にはその柔軟性と、多様性が明らかに欠けています。
ふつうの東大出のエリートは、成功は単線、一つの道しかないと思っているんです。
それは受験で、勉強という正攻法で今まで勝ってきた中で身についた習性だから、しょうがないんです。
受験校→東大→有名企業→エリート階段(ファストトラックfast track 最短出世コース)っていう強迫観念があるんです。
僕は周りが東大に入った奴らばかりだから、よくわかりますよ。
でも、その習性が、日本経済を成長させ、またダメにしてきたのです。
人生はケセラセラだ
ケセラセラ、なるようになるさ、です。
何度か「人間万事塞翁が馬」という言葉を持ち出しましたが、表面的に不利な出来事であっても、その中にどんなチャンスや幸福のきっかけがあるかなんて、誰にもわからないんです。
東大生は発展途上国への赴任を、ただ嘆くだけ。
でも色々苦労してきたあなたは、それをチャンスととらえる。
意に染まない仕事をあてがわれたときの正しい態度は、「一生懸命やる」ことだけです。
たとえ嫌いな、苦手な仕事でも好きになるように、頑張ることです。
なあに、いろんな苦労を経験し、群れたがらない、モノの見方が豊かなあなたならば、たとえこの映画で出てきた、何の仕事のない窓際に追い込まれたって、むしろそれを奇貨として何かやってのけますよ。
今年の方針は「なんでも喜んでやる」にしろ
「沈まぬ太陽」は、僕にとっても反面教師でした。
読者の皆様にとっても、そうかもしれません。
なぜならば、世の中はこれからまたインフレで、景気が悪くなり、ますます不確実性の時代になるからです。
そうしたらどうなるか?
今の仕事から外され、別の仕事をあてがわれことが、つまり配置転換が増えるのです。
その時に「自分に合わない仕事だから、適当にやる」のか、「よくわからない仕事だけれど、一から勉強してこの分野の第一人者になってやる」のか、どっちをとるか、あなたは迫られるでしょう。
どちらかを選ぶかで、あなたの人生は天と地の違いになるでしょう。
今年あなたは会社を辞めてはならない
若い時、僕は間違って前者を選んでしまったんですよ。
恩地ほどの優秀さなど、かけらもなかったくせに、です。
若い皆さんには言いたいんです、入社して気に入らない部署に配属されても、やめないで、と。
40代、50代の読者の方にも言いたいのです、こんな例がありました。
中国との長年の交渉の実績を買われ、スカウトされて中国担当になったが、中国経済の悪化により、今年からM&Aの部署に配置転換された、約束が違うと憤り、その会社をやめようとした人がいました。
しかし、彼は契約違反で会社を訴えるのをやめて、M&Aを一から勉強し、3年たった今ではM&A界では知らぬものがいない、エキスパートになったというのです。
ですから、配置転換、新しい業務を恐れてはなりません。
あなたの今までのキャリアならば、新しいことを学ぶスピードとパワーは若手を遥かに凌駕しているはずです。
今年、僕らは東大卒の絵に描いたようなエリートであってはいけないのです。
野呂 一郎
清和大学教授
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?