見出し画像

「プロレス総選挙」女子圧勝をプロレス経済学で読み解く。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:新日本プロレスにとって女子プロレスというサプライ(新製品)を獲得した経済的意義。「プロレス総選挙」にみる、サプライをどう価値化するかの実戦。トップ画はhttps://www.excite.co.jp/news/article/TokyoSports_4369253/

供給は需要以上のものを生み出す

女子プロレスを傘下に収めた新日本プロレスは期待できる、ということをお話しましたが、ポイントはサプライサイド経済学の「サプライ(供給)」という概念です。

経済学の基礎とされるSayの法則によると「供給はそれ自身の需要を生むsupply creates its own demand」で、これは「商品をとりあえず置いときゃ、売れるよ」という意味に解釈できます。

しかし、昨日の記事のThe Wall Street Journalアンディ・ケセラーさんは、こう言います。

「ひとつの商品を供給することは、それとは別の商品の需要を生み出すということだ。

もっと簡単にいえば、ある商品を出せば、消費者はじゃあこれも欲しい、あれも欲しいってなるのさ」(一部筆者が解釈)。

アンディ・ケセラー氏

経済学は「供給が需要を生み出す」としか言っていませんが、僕はケセラーさんのより踏み込んだ解説こそが、サプライサイド経済学のもっとも重要なポイントだと思います。

実際は、サプライはそのやり方次第で、本来の需要以上のものを生み出すのです。

女子プロレスという新経済学

ケセラーさんの「ある商品を出せば、消費者はあれもこれもほしいってなる」は、そのとおりとしか言いようがありません。

しかし、その製品がきらびやかで、悪魔的なアピールをまとっていたらどうでしょう。

大衆はやはりなびきますよ。

女子プロレスの話に戻すと、ルックスで、コスチュームで、パフォーマンスで見せる、そして実際のムーブ(プロレス的動き)をもっている女子プロレスは、類まれな大衆へのアピールを持った製品なのです。

そして需要が需要を呼ぶ、という事実。

これはある種サプライサイド経済学の理論を超えています。

例えば、こうです。

岩谷麻優が出てきた。ファンは当然のようにライバルを、敵役つまり岩谷をぶっ潰すヒールを欲しがります。

それだけでは、女子プロレスの生態系は完成しないので、ジュリア軍団だとか、コズミック・エンジェルだとか、格闘系の朱里チームだとかが出てきます。

コズミック・エンジェルだ。https://kids-future-navi.com/2021/03/cosmicangel-bigpush/

ウナギ・サヤカみたいな全く別のキャラクターがブレイクしたのも、岩谷というひとつの商品の供給が、自然なかたちで展開していったことの結果なのです。

ウナギ・サヤカ。https://number.bunshun.jp/articles/-/849691

「プロレス総選挙」とサプライサイドの関係

こうした、一つの供給物をきっかけに大げさに言えば”それが生態系に発展する”、というのが、アンディ・ケセラーのサプライサイド経済学なのではないでしょうか。

いや、申し上げたように、新しい経済学なのかもしれない。

もう一つのポイントは、「サプライは目立ってナンボ」ということです。

間違いなく、スターダムは新日本プロレスに買収されて、大きな発展を遂げました。

それは、新日本プロレスのご威光に預かったからです。

目立つためには、カネが必要ということです。

その象徴が、先日テレ朝系で放送された「プロレス総選挙」です。

50位までのプロレスラーに、スターダムの選手が大挙してランクインされたのです。

これはどう考えても、新日本プロレスがスターダムを傘下に収めた影響でしょう。(もちろん、選手の魅力や実力が世の中に届いているということはあるにせよ、です)

このように、大きな資本があれば選手という商品の露出が、PRが大きくなります。

それこそが、サプライの威力を増強するのです。

カネの力で商品の露出、演出を高めることにより、商品の認知、魅力が自然に大きくなり、需要が高まり売れ、それが波及効果となって他の商品も売れ、商品を中心とした”生態系”も整うのです。

それをまざまざと見せられたのが、今回の「プロレス総選挙」でのスターダムの活躍でした。

ある意味、あの番組ってスターダムの女子選手をより売り出すために仕組んだ、一大プロジェクトだったのではないでしょうか。

僕にとっては、「サプライサイド経済学って、実戦的にはこう活かすのか」と教えられた一件でしたね。

男性中心社会と戦う週プロ

ここ数ヶ月、週プロこと、週刊プロレスが表紙に女子を起用することが目立って増えています。

それも、なつぽいとか上谷沙弥(かみたに・さや)とか、プロレスファンにも馴染みがないような選手が表紙を飾るケースが激増しているんです。

なつぽい。https://wwr-stardom.com/fighters/natsupoi/

これは、週プロが、女子プロレス経済圏がキテる、ことを察知して、これを業界全体の起爆剤にしようとしているのではないでしょうか。

プロレスの世界は、団体もファンもまだまだ男社会なのです。

女子を表紙にすることには、明らかな反発があるのに、あえてそれをやっているところに、業界全体の発展を考える週プロの「公共性」を見る思いがします。

プロレス界に必要なのは、こうした全体の利益を考えて業界を動かすような仕組みなのではないでしょうか。

あす、また女子プロレスについて語ろうと思っています。

皆様、残暑にお気をつけてお過ごし下さい。

                             野呂 一郎
               清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?