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5・28トルコ大統領決選投票が世界の命運を決める?

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:トルコ大統領選がなぜ、世界の命運を握っているのか。ポピュリズムの恐ろしさ。トルコ大統領選は民主主義vs強権主義。一国の政治の行方が、世界に与える多大な影響を考える。トップ画は”トルコライス”(笑)

迫りくる運命の5・28

そうです。

5月14日にトルコ大統領選が行われ、現役のエルドアン大統領が野党統一候補に優勢も、得票率が5割に満たなかったため、5月28日に決選投票が行われるのです。

なぜ、世界がこの選挙を注視しているかというと、民主主義の流れが変わるかもしれないからです。

トルコの地政学的位値

その理由は、トルコが黒海を隔てて、ロシア、ウクライナ、ヨーロッパ、そして中東諸国と隣接しているからです。

民主国家の建前をとっていますが、エルドアン大統領は強権主義(マイクロマネジメントmicromanagement)と言われており、いやはっきり言えば独裁に近く、今回野党が民主主義の復権を訴え、選挙戦に統一候補で臨んでいます。

民主主義のリトマス試験紙としての大統領選

5月28日の選挙結果を世界が注視しているのは、次のような現実があるからです。

1.ポピュリズムの分水嶺

ここ数年ポピュリズム(populism大衆迎合主義)が世界中に台頭してきました。選挙に勝つために耳障りのいいことを言って、人気をとろうとするやり方です。

エルドアン氏はまさにポピュリズムの権化のような人物で、特に5月の大統領選に勝つために、中小企業むけに年間130億ドルの補助金付きローンと、最低賃金55%増を約束しました。

中小企業の新陳代謝を促すために、労働者を早く引退させたら、年間1億3千万タダで貸すよ、つまりあげるよといい、労働者の賃金も上げる、というわけです。

地震の犠牲者を助けることは当たり前ですが、選挙直前に現金をばらまいたのも、ポピュリズムそのものといえましょう。

2.民主主義の分水嶺

大体からして党の名前に民主的な響きがあるときは、逆と考えていいでしょう。エルドアンさんの党は「公正発展党」(Justice and Development Party)ですよ。

9000億ドル規模の経済を、すべてエルドアン氏とその側近が独裁的に動かしているのが実体です。

話し合いで、すべてを決める民主主義が、そもそも国を発展させる要の経済で用いられてないのです。

今回エルドアン氏が、5月14日に過半数の得票には至らないまでも、野党候補に勝った結果も、はたして真正なのかと西側の一部では疑問視しています。

3.地政学の分水嶺

トルコほど、地政学的な位値と外交の結びつきを指摘されている国はありません。

なにせ、ロシアとウクライナに近く、ヨーロッパとも近接しています。そこでエルドアン氏は、様々な駆け引きを打ってきました。

ロシアのウクライナ侵攻には反対だが、ロシアへの制裁には加わらないという、究極の二枚舌がそれです。

もちろん、これはトルコという国を守るためですが、地理的な有利で一国が駆け引きすることが、世界にとってマイナスになることがあるわけです。

武力による現状変更に絶対反対、これが今回のG7の共同宣言でもあったわけで、その意味でトルコは世界の平和への脅威になっているとも言えましょう。

4.政府による危機管理の分水嶺

2月に起きたトルコ大地震では、5万人のトルコ人が犠牲になり、家屋等に1千万ドルの損害が発生しました。

初動の遅れ、古い建物を放置していた責任、これら致命的なミスが、エルドアン氏再選により、チャラになればこれは、世界的にもよくない前例となります。

5.でたらめな金融政策の分水嶺

これは1のポピュリズムとも、2の民主主義とも関係しますが、とにかくいま首都イスタンブールでは物価が倍に跳ね上がっています。

通貨リラの価値は、2022年初頭から対ドル費で32%低下しています。

これはエルドアン氏の超低金利政策によるものです。

確かに経済はG20国中トップの5.6%成長を遂げましたが、インフレ率は100%で、国民の生活を圧迫しています。

英語でイージ・マネー・ポリシー(easy money policy)と呼ばれる、この異常で不健全な金融政策が支持されているはずもなく、その意味で5・14の選挙結果に疑問の声が多く上がるのも当然と言えましょう。

民主主義は胸突き八丁

しかし、マスコミ報道では、どうも5・28はエルドアン氏が優勢のようですね。

選挙自体に不正があれば、もうどうしようもないですよね。

そして現代はプロパガンダの時代であり、ミスインフォメーション(虚偽情報)の時代でもあります。SNSがそれを増幅しているという現実は、もっともっと重く受け止めないと、民主主義は危ない、そう強く感じます。

皆様、今日もお読み頂きありがとうございました。

それではまた明日、お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授




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