今年「ハンコを復活させろ」は暴論ではない。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:リモートやアバター環境で失われるものは”ハイタッチ(他者とのふれあい)”。しかしそれはデジタル社会では必要ない”どうでもいい資産”なのだろうか。経営の本質が”ハンコ”に秘められているという説を唱えた?イギリスの大学者。

リモートワークの権威の予言

ここ2年位に世に出た経営書って、役に立たないと思うんですよ。

みぃんなコロナに気を取られて、後ろ向きなディフェンシブなとらえかたをしているからです。

リスク管理がどうしても表に出てきています。

それまでの経営の問題がどこかに行ってしまっている。

本質の議論が忘れられてしまっている。

そんなことで、最近はちょっと昔の経営書を見直しているんです。

いい本がありました。

以前にリモートワークの権威として紹介した、この方を覚えているでしょうか。

ロンドン・ビジネススクールの教授で、リモート・ワークの権威リンダ・グラットン教授(Lynda Gratton)です。

https://qr.quel.jp/pv.php?b=3WXOA1e

今日紹介するのは、この方の「ザ・キーThe Key」という著書です。

https://qr.quel.jp/pv.php?b=3X1SEwW

この本は2014年に書かれているのですが、預言の書と言うべきです。

ノストラダムスの大予言と同じく、よく読むと日本のことにも触れています。(後述)

この方は予言者というしかありません。

リモートワークも、ましてやメタバースなどという言葉もなかった10年前に、この著書で未来のオフィスについてこんな言葉を残しているんです。

The Keyの5ページの彼女の言葉を引用します。

What impact will these increasingly virtual working environments have on social connectivity, and how can trust and cooperation be supported in these low-touch working environment. (労働環境はこれからどんどんバーチャルなものになっていく。これが社会的なつながりにどんな影響を及ぼすだろうか。また”ロータッチ”なオフィス環境で、信頼と協力はどうやってサポートされるのだろうか。)

仮想空間の陥穽ワナ

下手な解説をつけてみましょう。

グラットン先生は、これからの(2014年以降)の社会はどんどんバーチャルにつまり仮想空間(電脳空間)に移行すると言っています。

まさにデジタル・トランスフォーメーション時代を読んでいますね。

そこにはあなたの分身が活躍するだろう、メタバースの時代の到来も含まれています。

メタバース時代、あなたの存在はアバターになるって。https://qr.quel.jp/pv.php?b=3Xc7IrP

今や彼女の代名詞となった「リモートワーク」も、”予言”に含まれていたと考えるのが自然です。デジタルとリモートは兄弟のような概念だからです。

そして、彼女の言うように現在の労働環境はデジタルで、リモートでメタバース的なものになったわけです。

彼女のキーワードは、”ロータッチ”な労働環境”です。

ロータッチとは、人々の物理的、心理的な接触の度合いが低いことを表す言葉です。

ふれあいが少ない職場、というとわかりやすいかな。

その反対がハイタッチです。

両語ともかつて30年ほど前に、盛んに取り上げられた言葉でもありました。

彼女は更に説きます。

「一見先進的になったような労働空間は危険である」と。

なぜならば、労働の経営の本質である「信頼と協力」が実現、実感されにくくなるからです。

ロータッチな社会をどう生きるか

ロータッチの、つまり何でもかんでもデジタルで、リモートで、メタバースで個人と組織をつなぐ社会は、人間社会のこれまでの習慣であった「確信」が持ちにくいからです。

考えてみればこれは納得がいきます。

これまでのようにオフィスでフェイス・トゥ・フェイスで働いていたときは、なにか不確かなことがあれば直接確認できました。

しかし、デジタルやリモートではそういうわけには行きません。

ましてや、メタバース世界であなたのアバターとやらが動くとすれば、確信など持てる訳がないじゃないですか。

経営の勘所は彼女の言うように、信頼と強力であり、それらの本質はアナログであり、デジタル、リモート、メタバースという概念と対立するものなのです。

そう、今の我々が直面している最大の課題は、”ロータッチ社会”で、どうやってこれまでのように信頼と協力を獲得していけるか、なのです。

はんこ廃止の危険性

昨年は(一昨年か?)、ハンコ業者受難の年でもありました。

電子ハンコが声高に唱えられ、今までの判子を押す社会のあり方が覆されたのです。

「ハンコ反対」行革大臣の近視眼。https://qr.quel.jp/pv.php?b=3IsLs8S

効率化、デジタル化の掛け声のもとで、ハンコこそが前近代的な日本の経営の最大最悪の悪弊とされ、主犯の象牙でできた小さな棒は袋叩きに遭い、消滅しつつあります。

しかし、考えてみれば、ハンコこそ「確信を伴う信頼と協力」のシンボルであり、実践であったのではないでしょうか。

「休みなのに、ハンコを押すだけのために出社しなきゃならない」、ハンコ断罪の世で、しばしば聞かれた、一見笑いと共感を呼んだこのセリフ。

でも、ハンコはその価値があったのです。

2023年の初頭にあたり、世界の最高の知性の一人が、日本人にハンコの本当の価値を教えてくれたような気がするのです。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

じゃあ、また明日お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー


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