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労働流動性なんて要らない。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:転職について、哲学的に考える。日本とアメリカで転職の意識はどう違うのか、違わないのか。労働流動性という問題。

「労働流動性」はピントがズレてる

昨日、アメリカの転職事情をとりあげました。

よく、アメリカは労働市場の流動性があっていい、日本もアメリカ並になるべきだ、という論を耳にします。

流動性、ようするに転職しやすさのことです。

「気に入らなければ気軽にやめられる、能力が上がればどんどん給料のいいい会社にうつれる、アメリカ人はいいな、日本もそういう社会になれば産業は発達し、労働市場が活発になるのに」、という考えがそこにはあります。

昨日の記事は、これに明快な答えを出しているのではないでしょうか。

「流動性の高さと、経済成長そして労働者の幸せは関係ない」。

英語のことわざで考える転職問題

転職の話になるとよく引き合いに出される、二つのことわざがあります。

1.隣の芝生は青く見える(The grass is always greener on the other side of the fence)

https://www.christart.com/clipart/image/greener-grass

2.転がる石には苔が生えぬ(A rolling stone gathers no moss)

https://drawception.com/game/g759BPAwfK/a-rolling-stone-gathers-no-moss/

1の隣の芝生は青く見える、ですが、これはじつに人間の心理をよくとらえているとしかいいようがありません。

お隣の立派な青い芝。

しかし、近くに行ってその芝を覗いてみると、そうでもないのです。

それどころか、すぐに芝が伸びてきて刈るのが大変だったり、病気を抱えている種だったりするのです。

有名な投資会社にヘッドハントされた、アメリカ人の男性は、こう言っています。

「最初は『ヤッタァ、すげえいいところにうつれた』と思うんだよ。でも実際働いてみると、ほどなくしてこの会社もいろんな問題を抱えてるってわかるのさ」。

The Wall Street Journal2021年7月26日

まさに「隣の芝生」ですね。

では、二番目のことわざ、「転がる石には苔が生えぬ」、はどうでしょうか。

これは、コケを年月を積み重ねてやっと獲得できるお金とか人間関係と見るか、それとも、意味のないゴミ、と見るかによります。

当然、転職推進派の解釈は後者ですね。

読者の皆様のなかには「この転職楽観論こそが、アメリカの企業家精神だろうが」というご意見もあるでしょう。

信頼こそが仕事の核だという真実

僕は昨日の記事で、があんと頭を殴られた思いをした箇所がありました。

この部分です。

迷っているなら、やめるな。

あなたは今の会社で信頼を築いてきたはずなんだ。

同僚からの信頼を。そして、今の会社でどうやったら人を動かしたらいいか、学んできたはずなんだ。

それを全部なくしてまで、移る価値があるのか、自分に問え!」

サム・ジェイコブズさん

そうなんですよ、転職したら一から信頼を築かなくてはなりません。

専門能力が買われているから、それを発揮すりゃいいじゃんか、とはならないのです。

なぜならば、日本であれ、アメリカであれ、働く場所は人間の社会だからです。

信頼がなければ、人は動かないのは、洋の東西を問わない。これは真実だと思います。

そういう意味で、アメリカ=いつでも気軽に転職できる良い社会、日本=一生一つのところにとどまる発展しない世界、というステレオタイプは、単に刷り込みにすぎないことがわかります。

いろんなアメリカの有力企業のCEO(最高経営責任者)の人事を見てみると、外から実績のあるタレントをもってくるのはあくまで例外であって、20年以上その企業に奉仕している内部のベテランを起用するケースが、圧倒的です。

アメリカの経営は基本トップダウンですから、下は命令に従うだけです。

しかし、今求められるリーダーシップは、共感や納得性です。

そういう意味で、部下はきのう着任した外部のスター経営者よりも、長年苦労をともにしたリーダーのほうが、シンパシーを感じるのではないでしょうか。

https://media.unipos.me/organization

要するに、叩き上げのリーダーのほうが、すぐれているという仮説です。

よけいなことを言ってしまいました。

さて、今夜から台風来るかもしれません。

皆様、「備えあれば憂いなし」です。

                             野呂 一郎
               清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー

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