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オフィスの生産性を下げる悪魔は”嫉妬“

敵は自分の内にいる

昨日、日本のオフィスの生産性をどうにかしろ、と申し上げましたが、実は問題はハイブリッド何とかとか、オフィスのレイアウトとか、ワークスケジュールとかではないのかも知れません。

ウォールストリートジャーナル2021年6月28日号は、それはジェラシーだ、と喝破しています。どういうことか、「仕事でジェラシーを超えて動けMove beyond jealousy on the job」と題した記事を見てみましょう。

記事は様々なオフィスであった嫉妬の事例を上げています。

事例1 他人と自分を比較するという罠

同僚が出世した、素晴らしいプロジェクトをやり遂げた、おめでとうと言えない自分がいる。嫉妬が忍び寄ってきた。嫉妬でいま、自分の夢と能力と実績に疑問が湧いてきた。あいつと自分はいったいどこが違うのだ。

事例2 なぜ自分だけもらえないの

エンタテイメント企業でのこと。やり手の女子社員、他人の案件も持っていってしまうようなタイプで、役得でイベントチケットなどをいつももらっていた。嫉妬した同僚は「なぜ私がもらえないの」とそのたびに腹がたって仕事にならない。

事例3 上司に相談したけど

ある女性は、同じ営業マネジャーとして飛び抜けた能力を見せる同僚に嫉妬した。営業の経験もろくにないのに、働きながら学ぶタイプでどんどん業績を上げていくのだ。悩んだ挙げ句、上司に相談したところ、会社は彼女を評価しているし、必要としているからと言われ落ち着いたのだが、同僚が会議で新しいソフトウェアを導入して生産性を上げようなどと提案すると、心が揺らぐ。

事例4 部署に黒人女性二人

黒人女性のAさんは、オフィスの中のネガティブな噂話にイライラしていた。噂を撒き散らしているのは同じ黒人女性のBだとわかったので、腹を割って話せば解決すると感じ、思い切ってその同僚Bと向き合った。「一緒に仲良くやりましょう」と持ちかけた。ゴシップは消えたが、Bのよそよそしさはもっとひどくなった。Aさんは後に、同じ部署に黒人女性が二人いることが、微妙に彼女を苛立たせてたことを知った。


嫉妬は自然な感情だが・・

オハイオ州立大学のビジネススクール教授のタニヤ・メノン(Tanya Menon)氏はこういいます。

「嫉妬心をもつのは、我々が人間である限り、自然なことです。我々は社会的な動物なのです。我々は自分たちがそのヒエラルキーの中で、どこに立ってるかを知りたい欲望があるのです」。

しかし、一方でメノン氏は、「あなたがあることに対して否定的であると、危険なことが起こる。意識してなくても嫉妬心を持っていると、その人に対してあらゆる種類の有害なやり方でその人を攻撃する。嫉妬がまさにそれで、嫉妬は憤り、羨望、怒りすら産む。それらはあなたのキャリアを妨害するといってもいい」と警鐘を鳴らします。

メノンさんは嫉妬を「破壊的」と定義します。同僚の成功を妬むことは、同僚の成功を妨害、破壊しようとすることだといいます。

嫉妬処方箋1 まずその感情を認めよ

前述のメノン氏は、まずその嫉妬という感情を認めることから始めよ、と教えます。
その是非を判断してはいけない、その感情を葬り去ってもだめだというのです。

彼女は、「嫉妬は競争心を掻き立てられるだけなら健全です。その気持を自分のゲームをやり遂げるために使えばいいのです。ライバルを出し抜きたいとなるならば、嫉妬もモチベーションと言えるでしょう」と話します。しかし辛いことでもあるとの但し書きがつきます。

嫉妬処方箋 2 自ら助けよ

「仕事における感情をナビゲートする」と副題がついた、Trust Yourselfをいう本を書いた、メロディ・ウィルディングさんは、「自慢ファイル」をつけることを勧める。彼女は「誰かにあなたはグレートだと言ってもらうことを期待してはいけない。自分を元気づけて、認めてあげるのはあなたしかいない」と言います。自分をほめてあげたいことがあったら、それを一週間単位でファイルにつけておけ、というのです。

嫉妬処方箋3 ダイレクトメッセージ

Playbook . comのCEOは、ダイレクトメッセージで個々の社員に褒め言葉を伝えています。彼女は以前は大っぴらにやっていたのですが、次第に社員が「あの社員はCEOのお気に入りなんだな」と疑心暗鬼になったので、個人に伝えることにしたといいます。

野呂の感想:大谷翔平が示したもの

オフィスの生産性を下げる、古くて新しい問題は人間の感情、というテーマだったのですが、コロナだからこんな記事がでたのか、大変根源的な問題で興味深かったですね。

でも我々が今コロナで突きつけられているのは、まさにこれではないでしょうか。メノン先生が言った「人間は社会的動物である」はまさに今を表すキーワードだと思います。

コロナの問題は、結局物理的にダメージがどうこうというのではなく、コロナが「人間が社会的存在であるという弱点をこれでもかと見せつけた」、ことにあると考えます。

コロナ差別、コロナストレス、コロナ倒産、コロナ解雇。人間は協力しあい、集団でなくては生きられず、まるでだるま落としのように、部分が少しでも欠けたら全体が揺らいでしまうという脆い存在なのだと知らされました。

嫉妬に関しては、大谷選手も今随分そういう目にあっているんじゃないかと危惧していたのですが、もはやあまりに凄すぎて、同時代を生きるメジャーリーガーたちが嫉妬を超えて、ただただ憧憬して仰ぎ見ている、というところでしょうか。

そこまで行けば、こんな問題は解決するよ、そう大谷選手に我々人類が教わっているのかも知れません。

今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

また明日お目にかかりましょう。

                             野呂 一郎

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