結婚アプリを信じる愚。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:データとアルゴリズムの危うさ。機械絶対視という産業革命からの人類の悪弊が治ってない件。なぜ、採用はデータとアルゴリズムを使ってはいけないのか。結婚はどうなの?(笑)
データは真理ではない
昨日、日本のエリートの巣窟である人事部こそが、諸悪の根源?みたいなことを言いました。
今日はちょっとその補足をさせて下さい。
きのうの最重要ポイントは、Less is More データは少ないほどよい、です。
なぜ、これが正しいかというと、僕の考えはこうです。
われわれ人類はデータを神聖視しすぎているから。
猫も杓子もデータ、データで、人間の生活のありとあらゆるものが、データに基づいて設計されるようになっています。
人間のあらゆる営みが、データに基づいて決定されるようになっています。
確かにデータに基づいて作られたシステム、製品が人類に恩恵を与えたきたことは、事実です。
しかし、人間はいつの間にか、データを神のごとく絶対視し始めました。
日本でも、水戸黄門の印籠のように「データじゃあ、控えおろう!」ってなもんです。
政府が大号令をかけている、デジタル化とやらだって、全部数字や記号というデータに置き換えろ、ってわけですよ。
データの正体
GDP(国民総生産)、失業率、公定歩合いわゆるマクロ経済の指標と言われる数字があります。でもこれは、計算式で出てきた数字でしかありません。
インフレ率が2%って言ったって、その中身は数字ではまったく伝わってきません。
電気代が高騰し、食材が爆上がりし我々の生活が直面している厳しい現実を、データは反映していません。
僕の好きな経済書に「街角景気の経済学」というのがあります。これは景気という目に見えない複雑怪奇な現象を、無理くりに数字に直してデータにする過程が説明されています。
経済は何でもかんでも数字にしなくてはならないため、人々が感じている経済に関するフィーリングも数字にしようとします。
景気指数っていうデータのからくりは、景気感の度数を、非常に悪い5から非常にいい1までに分けて、数字にするだけです。
経済は生き物なので、実は、庶民のその感覚こそが経済の真実をとらえているのですが、そんなものは無視して無理やり数字にしているだけです。
そんなデータで、経済がわかるもんですか。
アルゴリズムを絶対視する滑稽さ
アルゴリズムはAIと置き換えてもいいです。
機械といってもいいし、ロボットと言ってもいいです。
それらが人間の仕事を奪うと、本気で心配している人たちもいます。
しかし、それほどの価値も実力もありません。
僕らが完全に忘れているのは、アルゴリズムは人間が作っているという事実です。
どこまでいっても人間が作っているのです、不完全な僕らが。
きのうジャーカ・デンレル教授(Jerker Denrell)が、言ったこの言葉を思い出してください。
アルゴリズムが完全じゃないのは、人間が完全じゃないからだ、とデンレル教授は喝破しているんです。
そして仮に人間が完全だとしても、完全にデータを処理するアルゴリズムはないのです。
経営学では、現代のデータ絶対視を予言していて、産業革命になぞらえて「機械絶対視」と戒めています。
度々引用しますが、Technically Wrongという本は、アルゴリズム信仰の盲点を指摘しています。
人間が差別や偏見から逃れられない限り、それはアルゴリズムの前提として組み込まれてしまう。
だから、結果として出てきた解決策は、差別や偏見に満ちた間違ったモノになる、というのです。
人事はどうすべきか
人の採用は、データじゃなくて、直感に頼ったほうが賢い、というのが僕の結論です。
データは文脈が抜けており、アルゴリズムは偏見が入っているシステムだから、それらに頼っても正しい解答はでません。
いや、生涯組織のために働く人材を選ぶには、この方法はリスクがありすぎる、と言ったほうがいいかもしれません。
やっぱり、貴社であなたと一緒に働く人材は、あなたの眼で選ぶべき、じゃないですか。
これから、ますます企業は難しい意思決定をすることが増えていきます。
僕はその時のカンタンなルールがあると思うんです。
それは、やり直しの効く経営課題(利益関連)に関してはデータやアルゴリズムに頼っていい、でもやり直しの効かないそれ(人事関連)に関しては、直感や感性、議論だけに頼れ、というものです。
結婚アプリとやらで、年収がいくら、学歴がいくら、身長がいくらとデータを打ち込んで、「この人と結婚すると幸せ度が80%」とか計算して貴女を誘うシステムが跋扈しています。
「貴女はそのアプリの言うことを聞くの?」、そう僕は聞きたいのです。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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