岸田内閣の経済成長戦略(案)
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:経済学の成長理論の理解。経済をマクロでなく、ミクロで視る視点。経営学が使えるかも知れない学問である可能性の理解。
アベノミクスが的外れだった理由
僕も経営学者の端くれなので、いつも経営学の立場から、どう日本の、世界の経済を上向きにしたらいいか考えていますし、またそれを問われます。
岸田さんは安倍さんの3つの政策、成長戦略、財務戦略、金融戦略というやつを引き継いでいるようです。
要するに成長戦略ってのはAIにカネを使うよ、財務戦略は予算の配分を変えるよ、金融戦略は金利をゼロにしてお金をじゃぶじゃぶにして、物価が上がれば景気がよくなるよ、というものでした。
でも経済は生き物、そう理屈通りに行くわけがありません。
僕は岸田さんは、以下の図に書いた3つの経済政策を、アベノミクスの三本の矢の代わりにやればいいんじゃないかと思っているんですよ。
まあ金融、財務戦略はともかく、成長戦略ですよね、問題は。
岸田さんは経済成長させて、再分配がどうのこうの言っているけれど、枝野さんのツッコミじゃないけれど、その前にどうやって経済成長させんだよ、って話ですよね。
日本経済低迷のワケ
企業が成長しないから、つまり儲からないから、給料が上がらない、こういうことですよね。
だから企業が儲かるようにすればいいんだけれど、マクロ経済学的な成長分野に投資なんて、大雑把すぎるんですよ。
ここは経営学の出番で、企業を儲かるようにするには、企業とそこで働く労働者の生産性を上げればいいんですよ。経営学は企業を良くするための、小さな経済学と考えています。
えっ?経済学者でもないお前が?経営学で、経済改革なんてできるの?
そう文句をつけられるに違いないんで、ちょっと経済学の知見を借ります。
この前申し上げましたよね、MBAもっているから経済学も少しはわかるよって(笑)それでこんないいあんちょこもってるって。
そうそのあんちょこ(頼りになる教科書)、トーマス・ソーゥエル(Thomas Sowell)先生の書いたBasic Economicsですよ。
この本は結構、経営学的なことが書いてあって、「経済学も経営学も同じなんだな」って言っても決して暴論じゃないんじゃないか、と思わせる、すごくわかりやすくていい本なんですよ。
経済を成長させる3つの要素
先生は生産性って何か、って議論をしているんです。
ようするに、生産性を上げるものは3つで、機材、マネジメント、労働者なんです。
いや、僕が言ってるんじゃないんですよ、大経済学者のソーゥエル先生がそうおっしゃっているんです。でもこれって、すごく経営学的なんですよ。
ソーゥエル先生のこの生産性を上げる3つを、経営学的に解釈したのが、右欄の政府の具体的サポートです。
具体的に説明しましょう。
使用機材の質を上げる
生産性を上げるには、機械化、IT化、AI化がどうしても必要ですよね。だってアマゾン見てくださいよ。あの配送センターはほとんど全部自動、それもロボットがやってるんですよ。
まあ、政府はDX(デジタル・トランスフォーメーション)とかいうけれどさ、確かにデジタル化するのも大事ですけれども、まずは生産現場をもう少し、ラクにしましょう。
サポートしてね、っていうことです。
でも、大企業にはしなくていいですよ。格差の拡大はどの国でも最もやっちゃいけないことですからね。
マネジメントの質を上げる
ソーゥエル先生はご著書の中で、1930年代のイギリス企業と日本企業の比較をして、両者同等の機械設備があるのに、どうして日本企業が生産性に優れているのかを分析して、「マネジメントの違い」という結論を出しているんです。
まあ、当たり前のことですが、DXだけじゃなくて、やはり、今こそ日本企業は人を動かす、マネジメント、っていうやつを考えなきゃなんないじゃないですかね。
だから、政府は中小企業めがけて、社員教育とか、能力開発とか、マネジメント強化を奨励して、そういう研修はタダにするとか、控除するとかしてほしいんです。
自分以外の労働者の質を上げる
ソーゥエル先生はすごく面白い人で、わかりやすい例を出してるんですよ。
例えば映画。
主役がいいパフォーマンスできるのは、助演の脇役のおかげ、照明のおかげ、いい脚本のおかげだって言うんですよ。
人が良い働きをしてるっていうのは、そいつの実力じゃないんっていうんです。
これって、今の最先端の経営学が説いていることと同じなんですよ。
それはね、ある意味で日本的経営の復活を高らかに謳い上げてるんです。
欧米式の成果主義なんてまやかしだ、って言ってるんですよ、ソーゥエル先生は。
経営学的にこれを翻訳すると、仲間をサポートする労働を奨励しろ、ってことなんです。
成果主義は自分だけ良ければいいって考え方、しかし、ソーゥエル先生はそうじゃない、仲間を助けることこそが企業の生産性を上げる正しい態度だ、って言ってるんです。
年功序列、終身雇用を復活させ、経済を安定させれば日本経済は成長する
しかし、今の日本企業は、成果主義一点張り。ソーゥエル先生のおっしゃることは、年功序列、終身雇用に戻しなさい、ということです。
日本企業がなぜ、この30年だめになったか。それは成果主義とかで、女性(男性もそうですが)が安定して働けないから、子供も家庭も創れないからですよ。
少子化、不安定な経済基盤で、どうして経済が成長するんですか。
そろそろ暴論を終わりますね、でも暴論でもないよね、かの大経済学者ソーゥエル先生が言ってることだから。
長々と読んで頂き、ありがとうございました。
ではまた明日。
野呂 一郎