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なぜ、尾身会長は急にトーンダウンしたのか

尾身さんがトーンダウンしたわけ

「普通はやらない」。

コロナ専門家会議・尾身会長が政府にこう反旗を翻してから、2週間、爆弾宣言がウソのように、尾身会長は五輪開催容認ともとられる発言をするようになっています。

「普通は・・」は国民に大喝采で迎えられました。尾身さんやってくれた、の驚きと感動が大きかっただけ、トーンダウンは失望を招きました。しかし、この変節はグループシンク(groupthink)という理論で説明することができます。

これは心理学の用語でもあり、ネットなどを引くと「集団で何かの合意形成をするに当たって、意見や結論に対して正しいのかやリスクなどを適切に判断・評価されることなく愚かな決定をしてしまうこと」と出ています。

しかし、原語のニュアンスはちょっと違います。

Groupthink is a psychological phenomenon that occurs within a group of people in which the desire for harmony or conformity in the group results in an irrational or dysfunctional decision-making outcome.
直訳すると、「調和や一致への欲望が不合理な機能しない結論を招く現象」です。

つまりこの言葉は「人間というものがグループを形成すると、無難な、波風を立てない結論を出しがちだ」という意味です。

尾身さんは、専門家会議のグループシンク、無難な方向へより戻す力に負けたのです。しかし、僕は彼の勇気をたたえこそすれ、妥協を責めたりしません。なぜならばグループシンクは個人の手に負えるような代物ではないからです。

グループシンクは国境を超える

アメリカのメディアが、コロナでのアメリカの医療業界の動きをグループシンクだと批判しています。

医療業界も事実や理想を追求するのではなくて、自分たちが損しないような無難な方向に動いている、というのです。

私のグループシンクの解釈は、もっとあけすけです。

「人間はグループになると『易きに流れる』集団的思考というものが形成され、グループに属する個人の思考、方向性などその集団思考という濁流にいとも簡単に飲まれてしまう」。

コロナ専門会議の尾身会長のあの一件も、やはりグループシンクです。

2週間前は尾身さんは五輪開催について「普通はやらない」とこれまでの政府よりの姿勢を一変、五輪開催に強い懸念を表明しました。事実上の反対です。

しかし、今日このごろはまた借りてきた猫状態。政府の言いなりに戻ってしまいました。これは「五輪開催というお約束破りはタブーだから」という専門家委員会のグループシンクに、負けたのです。

僕の愛読書である、アメリカ経済をわかりやすく教えてくれるU.S. Economy A compact and irreverent guide to economic life in Americaは、

アメリカの上下院選挙における、アメリカ人有権者のグループシンクを紹介しています。それは「アメリカの上下院選挙は行っても仕方ない。カネで勝者が決まるからだ」、という意識です。

専門家会議はなぜ個人の意見を表明しないのか

グループシンクとは、現実に逆らってもしょうがないから妥協する、という強い集団心理、です。個人が抵抗できるようなものではないのです。

ではグループシンクを打ち破るためにはどうしたらいいでしょうか。

個人がそれでも孤高の抵抗をする。グループの個々人に責任をもたせる、という手があります。例えば今回、尾身さんの専門会議で誰が五輪に反対で、誰が賛成で、誰が最終決定をしたのかというカタチで個人の責任の所在を明らかにすればいいのです。

しかし、この動きは皆無です。これこそがグループシンクの強さです。個人の責任を問うルールなど作れば、グループシンクの旨味がなくなるからです。グループシンクとは、個人の責任を逃れグループのせいにできる、ある種日本的なしくみなのです。

政府はおそらく専門家会議に何も言ってませんよ。

おそらく、尾身さんたちのグループのグループシンクを利用しただけです。

そもそもそれは最初からあったのです。

政府五輪推進派のグループシンクと、専門家のグループシンクとどちらが強いかは自明でした。

尾身さんが「ふつうならやらない」と抵抗の狼煙をあげると、専門家グループのグループシンクは自然とレジリエンス(集団を守る立場に還る性質)を強めたのです。

首相としては、ほっとけば元にかえることがわかっていたので、そんなに心配はしてなかったのです。

グループシンクをぶち破れ

グループシンクを見破るには、そのグループの背後にある様々な現実、利害を把握、理解、分析しなくてはなりません。つまり現実です。

例えば、さきほどの上下院選挙におけるアメリカ選挙民のグループシンクにはこういう背景がありました。

アメリカ上下院選挙投票者の背景
下院(日本の衆議院)の当選者は非当選者の平均3.7倍のかネを使っている。上院の当選者は平均760万ドル(約8億円)を使っている。これは敗者が使ったカネの2倍である。(2004年のデータ。前掲US Economy P12)

国民としては、専門家会議の背景を調べ、最初から政府に反対できない背景があれば、専門家会議自体に反対すべきでした。

世の中にグループシンクの罠はたくさんあります。

グループシンクを打ち破るには、水面下の根回しなど高度なコミュニケーション、人間力言ってみれば戦略マインドが必要とされるでしょう。

五輪開催で国民的な危機感が高まっています。グループシンクに負けない戦略マインドを持ったリーダーがいれば、無用なさらなるコロナ禍を招くことは、ありませんでした。

今日も最後までお読み頂きありがとうございました。

また明日お目にかかりましょう。

                              野呂一郎


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