見出し画像

ニューヨーク・タイムズが今年を予言?AIと人間の危うい未来。

この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:最近、ニューヨーク・タイムズが無断で記事を学習させたとしてAIプロバイダーを訴えた件。AIの危険性について、同紙は、紙面でもAI総本山とも言うべき、オープンAIをメッタ斬りしています。その背後にあるものは何か、探りたいと思います。

オープンAIをバカにするニューヨーク・タイムズ

皆様、あけましておめでとうございます。

本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

さて、あけまして、だから、オープン、オープンといえば「オープンAI」。

そんなことで強引にオープンAIのお話をしましょう。

CEOのサム・アルトマン氏が解任されたと思ったら、また元のサヤに戻り、大山鳴動して鼠一匹といったお騒がせに終わりました。

日本も、欧米メディアの報道も、何か隔靴掻痒というか、はれものに触るような具合でした。

しかし、その中でニューヨーク・タイムズだけは、オープンAIの騒動を一刀両断にしているんです。

紙面のタイトルからして、ひどいんです。

「サム・アルトマン、オープンAIは絶滅状態なのに、それをひた隠しにしてる。(Sam Altman, sugarcoating annihilation)」

ニューヨーク・タイムズWeekly2023年12月10日号より

もっとひどいのは、冒頭のオープンAIを宇宙人に例えたこのくだりです。

皆さんはトワイライトゾーンという映画をご覧になったことがありますか。

宇宙人登場のシーンがあって、地球代表とコミュニケーションを交わすんですが、地球人は宇宙人たちが「人類への奉仕To Serve Man」を約束してくれたと信じてたんです。

でもフタを開けたら、宇宙人達のよこした文書は「料理本Cook Book」で、全人類の肉を料理して食べてしまう計画が書いてあった、というのです。

AIは人類の敵なのか

ニューヨーク・タイムズが、この念入りな例え話で表現したかったことは、オープンAIのボス、アルトマンさんが「嘘つき宇宙人」「期待させといて、平気で裏切る卑劣漢」「実は人類の敵」だということです(笑)。

その後も、記事はアルトマンさんと、彼がトップのオープンAI、そしてAIそのものに対して、ネガティブのオンパレードです。

・AIはまだ思春期、だから冒頭に書いたようなエイリアン地球上陸みたいなことが起こる
・オープンAIは非営利団体だったはずが、いつの間にか金儲けの企業になっている
・アルトマンは投資家の利益より、会社を危険に晒す方がスキ
・アルトマンはAIから「人間性を守る」なんて嘘をついている
・オープンAIは、「AIを悪魔から守る」なんて言ってたけど、大嘘
・創業者の一人がイーロン・マスクで、アルトマンとは仲違いして、離脱した
・政府はAIを取り締まろうとしているが、官僚たちののろまなペースでは、AIの進展に追いつけてない
・アルトマン追放のクーデターが、元の鞘に戻ったのはまさに茶番
・だけれど、シリコンバレーの少年たちがおもちゃで遊んでいるを、我々はただ見ているだけという現実は恐ろしい
・今回の事件はAI企業の中でのエゴの相尅、野望、強欲が渦を巻いている

ニューヨーク・タイムズWeekly2023年12月10日号より

なぜだかイーロン・マスクを持ち上げるニューヨーク・タイムズ

あと、こんな記述が気になるんですよ。

・イーロン・マスクは、ならず者のAIを取り締まることに熱心だった
・人間の価値観を守り、AIの悪影響を抑えるのがマスク氏のスタンス、でもそれでオープンAIの現職と仲違いした
・オープンAIの幹部から、マスク氏は「間抜け」と言われていた

マスクvsアルトマンの図。https://qr1.jp/rHB91p

こんなことも書いています。

「イーロン・マスクは時として鬼のモードに入ることができる。でも、アルトマンはいつもなあなあだ。投資家に対しても、エンジニアに対しても、政治家に対しても、だ。だけれど、我々はAIの未来に対して脳天気な人物を良いと思うだろうか。否、だ。イーロン・マスクがいうように、『いつこの世の終わりが来るかなんてわからない』からだ。

ニューヨーク・タイムズWeekly2023年12月10日号より

AIの父と呼ばれるグーグルのジェオフリー・ヒントン氏(Geoffrey Hinton)は、名物番組シックスティ・ミニッツでこんな発言をしています。

「オープンAIがチャットGPTというお化けを発明したのは正直驚いた。しかし、AIは人類を悪用しつつある。古今東西の人類が書いた著作をすべて学んで、我々を支配しようとしているんだ。そうあの悪名高い、『目的のためには手段を選ばない』マキアベリの本もしっかり読み込んでいるのさ」。超・要注意だって!

ジェオフリー・ヒントン氏(Geoffrey Hinton)

今年はAI大混乱の年になる

さて、皆様もニューヨーク・タイムズが何を言いたいのか、わかってきたのではないでしょうか。

結局我々は、AIの周辺で何が起きているかなんて、技術的なことはわからないのです。

そして、企業周辺の人間模様も、わかっていません。

しかし、ニューヨーク・タイムズは様々な取材によって、いろんなことを知っています。

それは、

AIという魔界は人間のエゴとその葛藤と欲望が渦巻くところで、アルトマン解任騒動は、そのバカげた子供じみた闘争が表にでただけで、でも世間はただ呆れているだけしかできない、ということなのです。

そして、
生成AIの正体ってのは、どこまで行っても「人類のこれまでの叡智をコピーした」だけの存在であって、世界をまともな方向には連れて行かない、ってことなのです。

https://qr1.jp/rI0H3U

いやいや、今回は僕のAI論じゃなく、ニューヨーク・タイムズのそれですからね。

何となく、僕もニューヨーク・タイムズの言いたいことがわかってきましたよ。

AIは、人間的に未熟な者たちがもてあそんでいる玩具なのだ。でもそれは張子の虎でしかない、つまりコケオドシだ。

でも、その危険性は、ブラックボックス(中身がわからない箱)であることにあり、我々がコントロールできないところに、その恐ろしさがある。

筆者によるニューヨーク・タイムズ記事の行間を読んでのまとめ

これって、ニューヨーク・タイムズの今年の予言であり、人類への警告じゃないのかなあ。

最後また「ムー」になっちゃったか。

野呂 一郎
清和大学教授



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?