プロレス&マーケティング第81戦 地方という新たな市場を獲得せよ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:見知らぬ土地でプロレス興行をやるのは、無謀。でも、全国行脚こそ、団体の危機を救う切り札ではないのか。それは、プロレスらしい、自力でマーケットを切り開く企業家精神そのものではないのか。
知らない土地で興行をやる、ということ
プロレス界は、コロナ前の観客動員水準になかなか戻りません。
業界最大手の新日本プロレスすら、例外ではありません。
そんな中、申し上げた通り、新潟・燕三条で行われた2AW(ツーエイダブル)の興行に行ってきました。
燕三条出身・仁木琢郎選手の凱旋興行でした。
試合内容どうこうにはあえて触れませんが、この興行を通じて、これからのプロレス営業はどうあるべきかを感じたので、皆様と共有させていただきたいと思います。
そもそも、よその団体が新潟に来て試合を組む、なんて無謀ですよねえ。
新日本プロレスだったらわかりますよ、全国にファンがいて、テレビ中継もあり、サイトやネットもしっかりしているから、そうしたメディアで告知すれば3千人くらい集まりますよね。
しかし、知名度のない団体は、せいぜい団体のサイトで宣伝し、熱心なファンがレスラーにDMしてチケットをさばくくらいが関の山でしょう。
100枚でも売れれば、御の字でしょう。
しかし、今回の興行は300人以上の超満員、大成功と言えるでしょう。
人間関係で売れ
「知らない土地で小さい団体が興行をするなんて、どだい無理、地元の有力者、プロモーターにまかせる、いわゆる『売り興行』」一択だろうよ」。
プロレスファンのあなたに、そう怒られそうですね。
まったくそのとおり。
でも、知らない土地だからこそ、市場開拓ができたときはとてつもなく大きいインパクトがありますよ。
地方での営業の極意は「人間関係」です。
売り興行は簡単ですが、利益を持ってかれちゃいます。
苦労をしてでも、ご自分で土地の人間関係を作りましょう。
これが100年続く金のなる木になりますよ。
インターネット時代の欠点
フェイス・トゥ・フェイスがなくなり、何でもかんでもメールやリモート会議でコミュニケーションをする時代。
これではいつまでたっても、お客さんとの距離は縮まりません。
まずは居酒屋でビールを頼んで、プロレス関係者と明かし、大会のポスターを貼ってもらいましょう。
都会では見られない家族経営のお店をくまなく周り、優待券をおかせてもらいましょう。
青年会議所にも、乱入しましょう。
リーダーと仲良くなれたら、もっけものですよね。
新日本プロレスの会場の近くで、手作りの興行告知のチラシをプロレスファンに手渡ししましょう。
メジャーのプロレスもいいけれど、「インディにも来てよ」、的な話しかけができれば合格点です。
ギブ&テイクのつきあいができるか
人間関係構築の秘訣は、いつだってどこだって、相手に利益を与えられるかどうか、ですよね。
ポスターを貼ってもらう前に、チケットを買ってもらう前に、コミニュティの奉仕をしましょう。
清掃だったり、青年会議所の書記を買ってでたり、地域貢献を積極的にしましょう。
一番理想的なのは、地域の人たちに興行を手伝ってもらい、そのことが
参加してくれた人たちの連帯と結束をもたらし、地域活性化の実感を得てもらうことです。
プロレス興行に限りませんが、現代人はネットに引きこもりがちで、実際の活動を通じて、ひとが繋がり、相互理解や友情を育み、連帯を強めるなどという体験はなかなかできません。
プロレス興行を通じて、地域ですら失われた精神的なレガシーを取り戻すのです。
実際、僕もプロレス興行で地域がつながったという経験を何度もしています。
これは、地域の皆さまと団体だけの関係にとどまりません。
レスラーとファン、そして地域の皆さまが一体になることにより、プロレスは新たな価値を生み出していくのです。
ネットに頼ることなく、売り興行に逃げることなく、自力で新しい土地を開拓していく、その開拓者精神と行動力こそが、ポストコロナの「プロレス膠着状態」をぶっ壊すと信じてやみません。
野呂 一郎
清和大学教授
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