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政府を信じるのか、ビットコインを信じるのか。アルゼンチンの場合。

この記事であなたが得られるかもしれない利益:通貨とは何か。通貨の上がり下がりはどうして起こるのか。アルゼンチンの通貨危機を考えることで、経済を考える。

通貨より仮想通貨を信じる国民

W杯で優勝したから、アルゼンチンのペソは上がっている(はずです)と思うので、現在これは当てはまらないかもしれません。

でも今年9月時点で、アルゼンチンのインフレ率は90%でした。

ニューヨーク・タイムズWeekly2022年9月4日号は、For Argentines, cryptocurrency is safer than pesos(アルゼンチン国民にとって、ペソよりも仮想通貨のほうが安全)と題し、この国が深刻な経済危機に瀕していることを報じています。

この記事の内容を一言でいうとこうです。

「今やほとんどのアルゼンチンの人々は、自国通貨ペソを信用していない。仮想通貨のリスクは知りつつも、『ペソよりも仮想通貨のほうがマシ』と考えている」。

仮想通貨の代表格ビットコインは昨年11月65,000ドルをつけましたが、現在は22,000ドルに急落、下落幅は2倍です。

しかし、それでも、アルゼンチンの人々はこういうのです。

「仮想通貨はまだ来るよ。ペソと違ってね」。

前掲ニューヨーク・タイムズ

ペソはアイスクリーム

アルゼンチンの首都ブエノス・アイレス在住のあるエコノミストは、ペソについてこう語ります。

「ここでは、お金はアイスクリームみたいなもんなんだ。「もしあなたがペソを長い間持ちすぎると、アイスクリームみたいに溶けちゃうんだ。ペソを持っていればいるほど、溶けちゃう、つまり使う価値は減っていくんだ」。

前掲ニューヨーク・タイムズ
https://qr.quel.jp/pv.php?b=3FQaqfx

通貨暴落のメカニズム

ところで、円安もそうですが、通貨の価値って、どうして下がるんでしょうか。

それは、人々がその通貨の価値を信じなくなるからです。

僕の一番大好きな経済学の教科書The Economics Bookは、図でこう說明しています。

The Economics Bookより

要するに、アルゼンチンの人々は政府のやることを信頼しておらず、投機筋という自分たちだけの利益を追求する人々が「ペソがやばい」と騒ぎ立てれば、カンタンに通貨崩壊ということになる、というわけです。

経済とは信じること

しかしアルゼンチンの人々も、ファンダメンタルズ(経済成長率、物価上昇率、財政収支などの経済的基礎要件)の弱さが、通貨安の原因だと知ってはいます。

しかし、それ以上に政府の無策、無能ぶりに愛想を尽かしているのです。

しかし、どう考えても通貨よりもリスクの大きな仮想通貨を人々が支持しているアルゼンチンは健全だとは思えないんですがね。

でもあなたは、こう反論するかも、ですね。

お前は投資っていう経済取引の本質がわかってない。
仮想通貨とはボラティリティ(価格変動率)が大きい、ハイリスク、ハイリターンの投資にすぎない。セキュリティをちゃんとしてれば騙されることなんてない。仮想通貨市場の将来性を考えてない等々。

仮想通貨擁護派の主張

まあ、結局は経済の本質は「人の気持ち」、「信じること」ってことか。

政府とビットコイン、どっちを信じるのか、ってことか。

なんか、経済がわかったような気がしてきた。

今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
 
                             野呂 一郎
                清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー


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