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スタートアップは飢えじゃなく、食べ過ぎで死ぬのだ。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:シリコンバレー銀行破綻から学ぶ。お金がありすぎるのは、なさすぎるよりも恐ろしいという事実、銀行にとってもスタートアップにとっても。

金利が銀行を殺す

シリコンバレー銀行の破綻については、誤解が多いので正しておきましょう。

1.シリコンバレー銀行の融資先はやばいところはなかった

シリコンバレー銀の融資先はしっかりしたところばかりで、確実な担保を持っていました。

米国債も持っていましたが、これは世界で最も安全な債券です。

金利が40年ぶりに急に上がった、これこそがシリコンバレー銀の最大の災難だったのです。

2.問われる「安全な投資」

シリコンバレー銀の問題が我々に問いかけているのは、安全な投資とは何か、ということです。

例えば国債を買うことが安全な投資なのでしょうか。

条件付きでYesです。

その条件とは、「銀行が国債の満期までそれを保持し、元本と利息をもらえれば」ということです。

しかし、それまでに金利が上がったり下がったりすると、国債の価値も上がったり、下がったりするわけです。

100万円で買った国債が、3年後の満期を金利3%で迎えれば、銀行は元本と3万円の利息を受け取ることになりますが、1%であれば、1万円しかもらえません。

安全な国債は、金利次第ということになります。

3.経済が順調でありすぎた、という落とし穴

シリコンバレー銀行の創立は1983年で、以来金利とインフレ率はダダ下がり、お金集めには絶好の40年でした。

この間、IT企業群としてのシリコンバレーは、いけいけどんどん状態でした。

コンピューターはどんどん速くなるし、価格も安くなり、よりつながるようになりました。

そしていくらでもお金は必要で、シリコンバレー銀行も「現金でも仮想通貨でも、好きなだけ持ってけ!」とやっていたのです。

そんな40年以上も続く、上昇経済に慣れたシリコンバレー銀行は、イケイケの反対の環境が到来した、などは考えられもしなかったのです。

人も企業も幸福の時代が長すぎると、不幸をイメージできません。

これもシリコンバレー騒動の大きな教訓と言えます。

4.スタートアップは飢えで死ぬんじゃない、食べ過ぎで死ぬんだ

これはシリコンバレーでよく聞く箴言です。

これは、「お金がありすぎるのは、なさすぎると同じくらい悪い」という意味です。

これは銀行にとっても、IT企業にとっても、最も警戒すべきこととされます。

例えばシリコンバレー銀は、お金はあったんです。うなるほど預金があったわけです。

でもよせばいいのに、余裕があるから債券を買ってしまった。

確かに信用の観点からは、買い入れた債券は安全であり、それを発行した国や企業は潰れるわけもなく、安泰です。

でも債券の問題は満期が来るのが遅いし、収益を産まないことです。

満期が長いのと、配当金もないのは、金利が上がる時代には最悪の取り合わせなのです。

お金を持っていると、どうしても賢くない投資をしてしまうのです。

5.シリコンバレー銀騒動の真犯人は、IT企業だ

シリコンバレー銀騒動では、シリコンバレー銀行が悪い、米国政府の監視が弱いばかり言われています。

しかし、真犯人は別にいます。

IT企業です。

IT企業ときたら、コロナ元年の2000年には、コロナ禍でのITユーザー増を見越して大量の労働者を確保しました。

しかし、2年後に1~2万単位でレイオフ(一時解雇)しました。

なんという先の見えなさ、でしょう。

だから、この問題のオチは、「IT企業に引っ張り回された挙げ句崩壊した、シリコンバレー銀行」と言ってもいいのです。

皆様今日もおつきあい頂き、ありがとうございました。

ではまた明日。

野呂 一郎

清和大学教授






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