トヨタと日産にみる「戦略とは世間とライバルをだますこと」。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ビジネスにも空気のようなものがあり、かしこい企業はそれを読むという事実。”戦略的沈黙”とは何か。円安で実は企業はダメージを受けてない、受けたふりをしているだけだ、という一面の事実。
円安で大変だけれど
1ドルが130円を超え、輸入品の値上がりが、日本の消費者を直撃しています。
しかし、円安は輸出産業にとっては、プラスです。
いままで1ドル100円で売ってたものが、130円で売れるんですから、それだけで利益は3割増しですよね。
今日僕が指摘したいのは、円安で日本の自動車メーカーが頑張っている、ということじゃないんです。
これは邪推であり、戦略論でもあるんですが、僕が言いたいのは
ありていに言ってしまえば、戦略とは世間と競争相手をだますこと、ということです。
大変なふりをすることの大事さ
The Wall Street Journalオンライン2022年5月12日号は、「日産とトヨタはGMやフォードより低いハードルを掲げているNissan and Toyota Set the Bar Lower Than GM and Ford」との見出しで、日米自動車メーカーの動向をレポートしています。
しかし、サブタイトルにあるJapanese car makers could perform better than U.S. peers amid high gas prices and affordability concerns(日本の車メーカーはガソリンや原材料の欠乏のさなか、アメリカの競争相手よりも上手くやっている)がとても意味深です。
僕はこれは非常にうまい皮肉と言うか、意地悪な表現だとも感じてるんです。
こう読めるんですよ、2つの見出しはこう読める。
実はトヨタも日産も、アメリカメディアに向けては「大変だ、大変だ」と言っているんです。
たとえば、日産は次年度の営業利益の予測を2500億円としています。
しかし、ファクトセット(FactSet)という分析会社の予測は、3160億円です。もっと儲かると見ているわけです。
そして、両者とも「ガソリン代の値上げ、原材料のもろもろの値上げで逆風が吹いて大変だ」と言っています。
でも考えてみれば、それはアメリカの車メーカーも同じです。
日米メーカーの正反対の行動
しかし、同じ逆風でも、日米メーカーの企業行動は違います。
フォードやGMははっきり「この痛みは値上げで相殺する」と言っています。
しかし、日本のメーカーは、値上げについては何も話しません。
値上げなんかするつもりはないんです。
何故ならば逆風どころか、神風が吹いているからです。
日本のカーメーカーに吹く神風
なぜ、日本のメーカーはアグレッシブな値上げをしないですむのか、3つの理由があります。
記事は、最後に皮肉めいた調子でこう結びます。
戦略的サイレンスの重要さ
さて、いかがだったでしょうか。
申し上げたとおり、今日のポイントは
「戦略的沈黙」です。
ガソリン代が激しく上がって、部品が足りずにクルマの供給が滞っている。
クルマこそ、アメリカのアイデンティティとも呼べるなかで、クルマ産業の危機。
そんな中で大きな声では言えない有利さを利用して、外様の日本メーカーだけが漁夫の利を得る。
現実はこんなところですが、日本のメーカーは
「だからこそ、こんな時に、はしゃいではいけない」
と心得ているんですね。
これこそ日本的Silence is gold (沈黙は金)、なのです。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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