世界詩箱 8 【自作詩】

シャシャーンカクラハ

私たちを見下ろして
シャシャーンカクラ
古代の科学と哲学を
失った後の乾いた血
私たちを遠く見て
シャシャーンカクラ
何度も同じ子音を繰返し
奇跡を唄うその文化
私たちに忘れられて
シャシャーンカクラ
一たび広げた感情の世界は
足の下にまだ眠っている
私たちのシャシャーンカクラ
私たちの故郷は
シャシャーンカクラ
砂の雨の降り積もってから30000年
蓮の眼を開くと予言した
シャシャーンカクラは追憶の源
シャシャーンカクラは円環の兆し



天稟

この世界の真理を知る者とは、
 この世の全ての本を読む者である
いかなる本もその一部に真理の一部を有するからである

この世界の真理を知る者とは、
 この世の全ての本を読む者である
が、その者が存在する確率は日々減少する。

この世界の真理を知る者とは、
 この世の全ての本を読む者である
なぜなら言葉のみが人にとって存在する唯一のものだから

この世界の真理を知る者とは、
 この世の全ての本を読む者である
そしてよく眠る者である

この世界の真理を知る者とは、
 この世の全ての本を読む者である
そしてそこから何も解釈しない

この世界の真理を知る者とは、
 この世の全ての本を読む者である
彼は本当の幸せを説いた

この世界の真理を知る者とは、
 この世の全ての本を読む者である
ある日彼は本を閉じた

この世界の真理を知る者とは、
 この世のある本を読んだ者である
そこには短い物語が書いてある


呪いと救いの悪魔

世界は呪いにかけられた
世界は呪いにかけられて
彼らは歩いて幸福を味わった
のろい 呪い のろい
呪いの音 太鼓の音
おそろしい 爪の音と焔の色の宇宙の破れた欠片
宇宙の破れた欠片

指が渦巻きになって
これは呪い
胸の奥底から 滲みでる痛みに似た
他者からの呪いの水圧

笑みが溢れる 笑いが収まらない
赤い舌 地獄からの遠吠え

夢を見た
ひどく味の悪い夢
自分を特別視してすわる
そうして人を眺めていると
夢の中は熱く膨らんで
ついには本来の姿——泥人形へと
変じた
我を医するは、聖なる無関心だ
尊き無為だ
憧れの無情だ
あるいは全き自然である





禁忌

まっしろの 雪 玉 すわったガラス
やわらかいガラス もしかして
私のため だけのやわらかい
がらす玉 手のつかない 未来の
永遠にとど かない 匂いだけの
布 白いもの 永遠に白いもの

砂にうめたい ような すべすべの
舌のうえでも 色のつかない
この部屋は寝ても  さめても
いつまでも いつかは
かわって しまうもの
それが悲しい 私だけの夢

やがて目に 触れるだろう
何千何万の 寂しい目玉に
あのときの 白い椅子の
冷たさも忘れて いるだろう
やがて ひとりになるだろう
あのときの やわらかいものは
そのままであって そして
私だけの   じっ  





うそぶきすと(独唱)

鼻と歯を奪われた
髄と腸もなくなった
眼を打ち砕かれてこなごなだ
木がひねくれて
石が反旗をひるがえす
野菜(を愛する)王が立ち
「野菜の団子をたべなさい」
彼はとなりを通った菜食主義者をあざ笑い
「野菜の団子をたべなさい」
……すべてがこんな調子だ
みなが葦のように行為する
置かれた場所で咲いている
そして おうむだ!
紙を眺めて水を飲んで
次の朝にはおうむの本分をまっとうしている
らくたかやてぃん
赤き苦行者
他人の血を纏う赤き苦行者たれ
野菜の団子も食おう
小鳥の腸も頂こう
我が血肉となれ
しかるのち紙を喉に詰め眼を回そう
らくたかやてぃん

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