解離(一瞬で穏やかに)の自覚

エンプティチェアの技法で、母・兄と向き合う。そのプロセスを後で振り返ってみたら、感情が大きく動くような場面で、凪のようにフラットな気持ちになっている。解離が浮き彫りになったワークでのやり取りを残しておく。

F=ファシリテーター(ゲシュタルト療法)
N=のりぞう
お互い座布団に座って向き合っている。

F 今日は何を変えたいと思っていますか?
N 感情を出すことにブレーキをかけすぎていて、そのことが人といる時に緊張しすぎてしまっていると思うので、ブレーキをかけすぎないで緊張も和らげるようになりたい。
F どうなりたいですかという質問にすると、どうなりますか?
N もっと楽に話したいです。
F どんな時に感情を出しますか?
N 感情でしか表現できないような時しか、感情を出しません。感情を出すというか、爆発するような感じです。1年に1回あるかないかという感じです。
F 緊張する場面とは、具体的にはどんな時ですか?
N 仕事の場面が多いですが、その他の場面でも、友達といる時でも緊張しています。日常に占める仕事の時間が多いので、仕事が多いです。
F 緊張する感じは身体のどのあたりで感じますか?
N(胸のあたりに手を当てて)この辺りです
F この辺りが、どんなことを言っていますか?
N(目をつむりながら)苦しいというか焦りというか、ぴったりくる言葉は見つかりません(胸のあたりではなく、全身に圧を受けている感じであることに気付き伝える)
F 感情にブレーキをかけることは昔からなじんでいる感じですか?
N 高校時代からです。
F どんなことがありましたか?
N 私は四人家族で、父・母・兄がいます。お父さんっ子だったのですが、高校1年の時に突然くも膜下出血で倒れ(Fがああ、という苦悶の表情)、10日後に亡くなりました。
その後、感情を抑圧したことが関係していると思っています。
F お母さん、お兄さんはどんな方ですか?
N 親というのは、自分のことよりも子供のことを考えるのが親だと思っています。母は、名は親ですが実が伴っていません。子供のような親です。兄は、自分のことで精いっぱいな人です。
F ゲシュタルト療法では、身体への接触もするが大丈夫ですか?
N 大丈夫です。
F(僕の背中に座布団をあてて、Fがゆっくりと力をつけて押してくる)全身に圧を受けている感じは言葉にするとどんな感じですか?
N(かなり重みがある気はするが心理的には)慣れている感じです。
F(さらに重みをかける)
N(すごく重みを感じるのに心理的には)慣れている感じです。
F 押し返してみてください。
N(背中から押し返すことをしてみる)
F 何か思いを声にしてみてください。
N 言葉にはできません
F うー。でもいいです。
N うー。(押し返す)うー。(押し返す)

FもNも元の位置に戻る。

F どうでしたか?
N こんなにも重みを受けているのに、なんで耐えているんだろうと思いました。
F 押し返している時は?
N 慣れない感覚です。普段使わない力を使っている感じでした。
F(畳の部屋なので座布団を)お母さん、お兄さんがいると思って、置いてみてください。
N(Fから横に向きを変えた正面に座布団を2つ置く。以後、横からFが話しかけるが、僕は座布団の方だけ向いて、目をつむり、Fに答える。)
F いま、お父さんがなくなった時だと思って向かい合ってみてください。
N(当時を思い出し、込み上げる)
F そのままでいて下さい。涙はなんと言っていますか?
N(泣きながら)さびしい。本当にさびしい。
F お父さんを座布団で置いてみてください。
N(2つ置いた座布団の真ん中の後ろに3つ目を置く)
F お父さんに、さびしいと伝えてください。
N さびしい。
F どんなお父さんでしたか?
N 優しくて、なんでも聞いてくれて、僕のすべてだった。
F どうして突然死んだんだと。
N どうして突然死んだんだ。
(少しやり取りがあったが、この喪の作業はやったなあと、冷静になってくる。あらためて、喪の作業はちゃんとしたんだなとも思ったりする。)
F 突然死んだことへの思いを、お父さんに伝えてください。
N 突然死んでびびったわ。
F どんな気持ちがしますか?
N なにかザワザワするような感じです。
F どこにぶつけたいですか?
N 誰にもぶつけたくないです。
F お父さんに対しては?
N お父さんにぶつけたいという気持ちにはなれません。
F お母さん、お兄さんにお父さんがいなくなってさびしいという気持ちを伝えましたか?
N 伝えていません。
F 伝えたい気持ちはどうしていますか?
N 受容しています。
F いまどんな気持ちですか?
N フラットな気持ちです。
F(怪訝な感じで)いまの状況では、不自然な気はしませんか?
N このシチュエーションでどういう気持ちになるのが自然なのか想像できません。
F いまはどんなことを感じますか?
N 自分は、本当にいまフラットな気持ちなので、おかしいのかな。ちゃんと診てもらった方がいいのかなと思いました。
F おかしいとは思っていませんよ。
(いったん座布団を片付けて、FとNで向かい合う)
F ここまでを通して、どう感じましたか?
N 最後はフラットな気持ちだったので、自分を変えよう変えようと思っていたが、選択肢の一つとして、このままでもいいのではないかという気持ちになりました。
             END

ワークの後、全体(参加したゲシュタルト療法では、参加者が輪になり、輪の中心でワークがある)のフィードバックがあり、最後にFが言葉を選ぶ感じで感想を言ってくれた。
「お父さんは僕のすべてだったと言ってたから、一度自分を殺してしまったのかもしれないね 。」
と。

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