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おいしいごはんが食べられますように。


おいしいごはんが食べられますように 高瀬隼子


ダイヤル回して手を止める。
ピザ屋に久しく電話をしてない。
それよりもお寿司が喰いたい。
ひとりで食べたい。
こんどは婆ちゃんと一緒に食べるから。
いまは独りで食べたい。
考えてみれば俺にはもう婆ちゃんはいない。
祖母は俺の心の中にいる。
母は、祖母ちゃんはお前を愛してなかったんだよ、と俺に告げた。
ショックとは違う、軽い驚きがあった。
じゃあ嫌われていたのだろうか?
俺も特段、祖母に愛されていたとは思わなかったけれど、
さすがに嫌われていたという領域までは行ってないだろう。
でもわかんない。どっちでもいいや。
祖母は自分の娘の、つまり俺にとっての母、の
第一子に特別な思いを抱くものだ。往々にして。
第二子である俺はそう思う。
そのことについて俺は、特に意見を持たない。
そういうものなんだろう、と思うだけだ。
無論、他の家のことはわからない。
云うまでもなくこれは一般論ではない。
愛はきっと愛されてばかりで知るものでもなくて、
「愛されていない」ということでも何か学ぶべきものがあるのだろう。
好きな食べ物が栄養のあるものばかりとはかぎらない。
いやむしろ、栄養の偏った、ジャンクな食べ物ほどうまいと感じるところが、少なくとも俺にはある。
バランス良くと、よく人は云うが、綱渡りじゃあるまいし。


俺は今日も明日も栄養のバランスよく、食べ物をいただく。
おいしいごはんが食べられますように。自分の頭で方法を考えて、工夫を凝らし、最善(と思われる)の道を選び、死んだばあちゃんに苦笑いでもしてもらえるような食生活をしばきたおしてゆく。



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