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サンドイッチの作り方


ユダの山羊

サンドイッチの作り方について、真剣に考えている。
往々にして何かを真剣に考えていると、眠くなってくるものだ。そんな時は遠慮なく寝ることにする。
眠れるときに眠る。何らかの事情で眠りたくても眠れなくなる時が、そんな夜がいつかはあるに違いない。きっと。
サンドイッチと睡眠欲を秤にかけたとき、後者に軍配があがるのは必定だ。

ボストンの私立探偵もよく料理をつくる。
彼にはひとりの美しい恋人がいるが、彼女はもっぱら食べる側だ。
たまに彼女も何かを拵える場面に出くわすが、その際、私立探偵特有の毒の効いた、しかし愛情あふれる評を、彼は心の中で下す。
そういった描写を見ていると思わずほくそ笑まずにはいられない。
有り金があろうと無かろうと、人に好かれようとそうでなかろうと、
彼はあまり気にしない。
少しは気にしているかも知れないが、少なくともそれに惑わされるそぶりは見せない。
大事なのは自分がそれらを気に入るかどうか、なのだ。
指標はいつも、自分の中にある。
あるいは自分の愛する者の中に。
そのいっかんしたブレなさが、シリーズを通して背骨としてあるのは強い。
ここに来れば、ちゃんと彼が居てくれる。そんな安心感がある。

彼の仕事にマニュアルはない。
彼独自の規律があるだけだ。
規律は多くの人に理解はされないかもしれない。
規律は何人かの敵を作るかもしれない。
しかし彼は独りで、またはその心情を理解しあえる相棒と共に事にあたる。相棒と彼は、しかし言語的にそのことをいちいち確認しあったりはしない。そこがカッコよかったりする。

そんなことを考えつつ、
サンドイッチの骨格が見えてきた。
何を作るかではなく、どう作るかが大事だと考えて、真剣にまな板の前に立つ。
包丁一本。
冷蔵庫の中に、トマトを探す。


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