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Fiskars デザイン村

ヘルシンキから電車で2時間、さらにバスで40分行ったところにフィスカルスという小さな村がある。この村は、かつて鉄工業で栄えたのだけれど、産業の衰退と共に村も衰退していったそう。ところが近年、この村の豊かな自然を求めて沢山の芸術家や工芸家が集まって来て、今では、デザイン村として良く知られるようになっている。

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…という話を僕も雑誌から知り、3年前の今頃フィスカルスを訪ねた。実際のフィスカルスは、写真で見るよりも遥かに美しくて森も湖もそこらに転がっている石ころですら愛おしく思えた。

東京のように毎日なにかおもしろいイベントがあるわけではないし、いつも違ったお店で美味しいものが食べられるわけではないけれど、長い冬がきて、やっとのことで春が来て、そしてまたほんの束の間の夏がやってくる。そんな季節の移ろいを人生の歓びだと感じられるような静かな時間がそこには流れていた。

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川べりに座って本を読んでいた女の子も印象的な風景だったな。静かな自然の中で本を読めるなんて、これほど幸せなことってあるだろうか。

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フィスカルスの宿に泊まった晩、冷たい雨がしとしと降った。と言っても、街灯がないから雨粒は見えず、雨が降る音だけが聞こえて来た。暗い森の中に閉じ込められたようで少し怖くもあったけれどその孤独は、むしろ心地良くもあった。

今晩の雨が、あの晩の雨に似ていてつい頭の中で赤や黄色に色づいた木々に囲まれたフィスカルスの川縁の道を歩く姿を空想してしまった。

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