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世界の住みやすい「小都市ランキング」日本の都市も3位に【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】

海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。

今回は世界の住みやすい「小都市ランキング」日本の都市も3位にの回を文字起こししました。

東京、パリ、ニューヨーク――大都市での生活は、ビジネスや文化活動が盛んで、エキサイティングな魅力に満ちています。しかし、その一方では高騰する家賃や物価、押し寄せる観光客による混雑や汚染といった弊害も目立っているほか、新型コロナウイルスの拡大で自宅生活が中心になると、高い家賃を払って大都市に住む必要性に疑問を持つ人たちも出てきました。

そんな中、注目されているのが人口25万人以下の都市を対象とした「小都市インデックス」。どのような都市が評価されているのでしょうか(出演:山本直子岡徳之 / 写真:Nick Karvounis on Unsplash)。

都市生活のクオリティは失わない

山本 岡さんはアムステルダムにお住まいですが、住み心地はいかがですか?

 住み心地はいいですよ。僕は都会が好きなので、まわりで常に何かが起こっている環境っていうのは大好きです。ただ、家賃がね・・・。

山本 ですよね。アムステルダムの家賃の上がり方はちょっと尋常じゃないですよね・・・。

 うーん、来年も家賃が上がりそうなので、ちょっと今引っ越しを考えているところです。

山本 そうなんですね。それなら、岡さんに参考にしてもらえるランキングがありますよ。

 おお、なんですか?

山本 「小都市インデックス」です。イギリスのライフスタイルマガジン『Monocle』が発表しているインデックスで、人口25万人以下の都市を対象にして住みやすさをランキングにしたものなんです。

 ほお。

山本 都市生活のクオリティを失うことなく、スケールダウンした街で新たなスタートを切りたいっていう人たちの指標になっているんですよ。

 興味深いです。

山本 マイナーな都市も含まれているので、ちょっと予想しにくいかもしれないですけど、どこが今年の1位に選ばれたと思いますか?

 人口25万人以下の都市ですよね。

山本 でも都会の生活クオリティが失われていないところ。

 どこだろう・・・。フランスのニースとか?

ポルトが1位に選ばれた理由

山本 ニースはちょっと大きすぎですね。1位は、ポルトガルのポルトです。

 なるほど。行ったことありますけど、すごくいいところですね。たしかに住んでみたいと思いました。

山本 そうでしたか。ここはポルトワインが有名ですけど、それだけじゃなくて、すごく経済活動が盛んだし、今や家具とかファッションのクリエイターが集まる国際的な街になっているらしいですね。

 たしかに、中世の街並みなんですけど、古いポルトガルのタイル張りの建物に、すごいモダンでオシャレなギャラリーとかたくさんありましたね。

山本 国際空港へのアクセスもクルマで20分だし、南行きの電車でスペインにもすぐ行けるそうですね。

 そうですね。しかも、ポルトガルの料理って、実は日本人の口にもすごく合うんですよ。

山本 へえ、そうなんですね。

 なので、ここが1位なのは納得です。住みたくなってきた!

2位はルーベン、日本の都市も3位に

山本 では次、第2位はベルギーのルーベンです。

 ルーベン・カトリック大学があるところですか?

山本 そうです。

 世界的に有名ですよね。結構テック系の企業も多いところ。

山本 よくご存じですね。ここは人口10万人と、小さい街なんですけど、ヨーロッパ有数のテクノロジー、イノベーションハブでもあって、ビジネス機会も豊富です。

 外国人も多そうですね。

山本 はい。海外からも多くの専門家が集まっていて、街の住民の国籍は、171カ国におよぶそうです。アムステルダムみたいですよね。

 ほんとですね。小さな街なのに国際的。

山本 多くの住民が英語を話せるほか、外国人やその家族に対して、住宅とか雇用機会の面でサポートも厚いそうです。

 すばらしい。ここもいいですねえ。

山本 続いて行きます。第3位はなんと日本の都市が選ばれています。どこでしょう?

 え、日本の小都市・・・。地方都市ですよね?

山本 はい。

 金沢とか・・・?

山本 人口25万人以下じゃなさそうですね。

 うーん、どこだろう・・・。

山本 正解は、糸島です!

 糸島・・・?

山本 私も知らなかったんですよ(苦笑)。調べたら、福岡県の西の半島に位置する都市で、人口は約10万人。

 福岡かあ。

山本 福岡市にも国際空港にもクルマで35分のアクセスだけど、海や山に囲まれていて、自然が豊富です。都会と自然の両方を楽しめるという立地が評価されているんですね。

 山あり海ありで食べ物も美味しそう。

山本 まさにそうなんです。ここでは糸島ブランドの豚肉、牛肉、鶏肉とか、有機農産物が生産されているほか、玄界灘で獲れる安くて美味しいシーフードも魅力的です。

 いいなあ・・・。

山本 酒屋や製塩業者、 そして若い農民が集まって、小規模ながらもクオリティの高い製品を提供しているそうです。それから、工芸文化への投資も積極的で、職人さんも集まっています。今やバイヤーが東京や大阪から訪れる街にもなっているそうです。

 いいですねえ。行ってみたい。

住みやすい小都市の共通点は?

山本 こんな感じでランキングが25位まで発表されているんですが、4位以下、10位まで発表しますと、

4位 ルツェルン(スイス)
5位 ビクトリア(カナダ)
6位 ローザンヌ(スイス)
7位 バーゼル(スイス)
8位 ボルツァーノ(イタリア)
9位 オールボー(デンマーク)
10位 ベルゲン(ノルウェー)

となっています。岡さん、この中で行ったことのあるところは?

 ローザンヌで電車の旅をしたことありますよ。すごい景色綺麗だったなあ。物価高いけど・・・(苦笑)。

山本 私は1位から10位まで全部行ったことないですね。観光都市じゃないですからね。

 僕も聞いたことのない都市がいっぱい入ってました。

山本 実は11位に、私が今住んでいる、オランダのアイントホーフェンがランクインしているんですよ。

 おお、すごいじゃないですか!

山本 人口は22万人ぐらいなんですけど、ハイテク系の企業が多くて、今テック系の専門家を世界中から惹きつけています。

 やっぱりビジネス機会が多くて、経済活動が活発っていうのは、これらの都市の共通点なんですね。

山本 そうですね。あと、アイントホーフェンは「アイントホーフェン工科大学」とか「デザインアカデミー」とか、世界的に有名な大学がありまして、それが世界中から若者を集めているという側面もありますね。

 若い活気に満ちた街になるんですね。

山本 はい。2位のルーベンもそうですし、スイスのローザンヌとか、デンマークのオールボーなども、それぞれ大学が街の看板的存在ですね。

 若者が多いと、街にはおしゃれなカフェとかショップが増えたり、大学の卒業生がスタートアップ企業を興したりとか、やっぱり活気を呼びますよね。

山本 そうですね。5位にランクインしているカナダのビクトリアは、これまでは「落ち着いた政治の街」といったイメージが強かったんですが、子ども向けの無料バスパスを導入したり、市内の自転車レーンを拡充したりしたことで、若い家族や外国人が増えて、「若い街」に変貌したことが評価されています。

 なるほど。それはランクインしている都市の一つの大きな特徴ですね。

山本 あと、上位にランクインしている都市に共通しているのは、大都市や外国へのアクセスがよく、経済活動が盛んな一方で、まわりは自然が豊富ということですね。

 都会生活と、きれいな空気を両方楽しめる環境ですね。

山本 はい。それと関連しますが、これらの都市はサステイナブルな取り組みでも注目されています。

 ほお、例えば・・・?

山本 2位のルーベンでは、歩行者ゾーンと新しい自転車レーンを設置し、バスのネットワークを拡充しています。これによって、わずか1年の間に市民が自転車で移動する回数が32%増加し、空気がきれいになって、子供や高齢者が歩きまわるのに安全な環境を作り出したそうです。

 ほお。

山本 それから、8位にランクインしているイタリアのボルツァーノでも「自転車フレンドリー」な街をつくっているほか、公共交通網で周囲のハイキングコースやスキー場へのアクセスをよくしているそうです。

 いいですね。夏はハイキング、冬はスキー。

山本 あと、私の住んでいるアイントホーフェン市も世界で最も早く「電気バス(eバス)」を導入した都市で、二酸化炭素排出を減らすためのモビリティ計画に積極的なんです。

 なるほど。サステイナブルな街というのは人を集めるんですね。

山本 そうですね。

 こうしてみると、自分が住む場所になにを求めるのかを考えさせられますね。

山本 そうですよね。アムステルダムもいいけど、アイントホーフェンもいいですよ!

 そんな気がしてきました(苦笑)。住居選びの参考にさせていただきます!

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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