歳を取っても運動を続ける人はなにが違うのか?「4つ」の心理・社会的要素【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】
海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。
今回は『歳を取っても運動を続ける人はなにが違うのか?「4つ」の心理・社会的要素』の回を文字起こししました。
人口の約4人に1人は65歳以上の高齢者と、急速に高齢化が進む日本。同様の人口構造の変化は世界各国で生じており、それに伴い、スポーツ産業も高齢化社会への対応を求められています。
特に「アクティブ・シニア」と呼ばれる趣味や地域活動に活発に取り組む層はマーケティングの観点からも重要なグループと認識されていますが、アクティブなシニアとそうでないシニアの違いはどこにあるのでしょうか?
シニア層がアクティブにスポーツ参加を続ける心理的・社会的要素は大きく「4つ」に分けられるそうです(出演:大津陽子、岡徳之 / 写真:Anupam Mahapatra on Unsplash)。
進む、高齢化
大津 もう10月ですね。今年も時が経つのが早いですね。
岡 今年はパンデミック、安倍首相の退陣・・・ いろいろありましたね。
大津 今度の内閣の平均年齢は60.4歳、自民4役なんて71.5歳らしいですよ。
岡 そうなんですか・・・。高齢化日本って感じですね。
大津 もうすでに、日本の約4人に1人は65歳以上の高齢者らしいですね。
岡 想像以上に多い。
大津 政治家の高齢化の良し悪しはともかく、日本でシニア層の存在感は大きいですよ。
岡 いろんな産業も、高齢者を顧客としていろいろ工夫していかないといけないんでしょうね。
大津 そうですね、4人に1人ですから。若い人をターゲットにしているイメージの強い「スポーツ産業」もシニア層に向けてどんどんアプローチするようになってますね。
岡 シニアといってもアクティブな人はアクティブですもんね。マラソン走ったりとか。
大津 そうそう。
岡 でも、10代のころって運動している人多いですけど、だんだん年齢重ねるごとにしなくなるじゃないですか。高齢になっても運動を続けられるモチベーションってなにがあるんでしょうね。
大津 大きく分けると「4つ」あるらしいですよ。
高齢でも運動を続ける「4つの要素」
岡 ほお。まずはやっぱり、健康維持ですよね・・・?
大津 はい、その「健康因子」は絶対ありますよね。どの世代でもそうですけど、生活習慣病の予防とか、ストレス軽減みたいな精神面での健康維持に、スポーツってすごく有益ですから。高齢者の場合は、それに介護予防みたいな老化を遅らせようっていうのも入ってきますね。
岡 自治体とかも「運動しないと転びますよ!」みたいなポスターよく作っているイメージです。
大津 ただ、意外と他の要素も大きいらしいです。
岡 ほかの3つは、例えば、「友達に誘われた」とか・・・? イメージですけど、友達とか近所の人が参加してるから自分もしよう、みたいな。
大津 ですね。コミュニティへの帰属意識みたいなのはありますよね。地域のサークルとか。
岡 スポーツって、人とのつながりを深めるところがありますよね。
大津 そうですね、既存の人間関係をより深めるというのがモチベーションになっている場合で「コミュニティ因子」とかって言われてるそうです。
岡 なるほど。
大津 それと似てるんですが「ネットワーキング因子」っていうのも重要です。新しい人間関係を作るために、スポーツを始めるっていう。
岡 仕事を引退したりとか、子どもが独立したりすると、趣味を通じてじゃないとなかなか新しい人間関係を作る機会がなかったりしますもんね。
大津 運動しない理由に「一緒にやる人がいないから」っていうのがよくあるそうなんですが、「むしろ新しく知り合いできる」というイメージがもっと強くなると、スポーツする人がより増えるかもしれないですね。
岡 たしかに。
大津 そして3つめが「競争・目標達成因子」。
岡 試合とか大会が目標、みたいな感じですね? 10代のスポーツってそれが主なモチベーションかもしれない。でも、シニアのスポーツってそんなに激しく競い合ったりするイメージないんですが・・・。
大津 そうですね。昔はシニアというと、体操みたいなところがありましたけど、最近はシニアのバスケ大会とかも盛り上がってるらしいですよ。
岡 バスケってけっこう体力いるのに、すごいですね。
大津 アメリカに平均年齢が80代の女子バスケチーム「スプラッシュ」っていうのがありまして。ステイホームの最中でも、次の試合に向け、自宅周辺で持久力トレーニングやドリブル練習を続けていたっていうのをニュースで見ました。
岡 ステイホームのときは高齢者の体力が弱っちゃうんじゃないかって危惧されてましたけど、そういう姿は勇気づけられますね。
「モディファイド・スポーツ」が突破口に?
大津 人がアクティブであり続けるモチベーションってこんな感じで多様なので、最近はシニアのスポーツ参加への働きかけも多様になってますよね。
岡 そうなんですね。
大津 ちょっと前だと、アンドラ公国がオリンピック協会の支援を受けて、シニアスポーツ大会を国を挙げて企画したり。
岡 国を挙げて・・・?
大津 シニア選手は競技に参加するだけじゃなくて、専門家と一緒にイベント運営にも参加したそうで、世代を超えたネットワーキングイベントにもなったそうです。
岡 でも、軽い運動に比べて、参加できる人がかぎられてきたりしないんですか・・・?
大津 それはありますね。だけど、競技スポーツにもっといろんな人が参加できるように調整した「モディファイド・スポーツ」っていうのもあって。オーストラリアとかで盛んなんですが。
岡 モディファイドスポーツ・・・。「修正」というか、競技内容を一部変更するっていうことですか・・・?
大津 そうです。例えば、バスケットボールやサッカーのフィールドの広さを変えたり、走っちゃだめとか、ジャンプ禁止といった修正を加えたりすることで、より多様な健康状態の人が参加できるように修正、変更すると。
岡 なるほど・・・! そのスポーツの面白さを損なわないようにうまく調整すれば、いろんな人が一緒にスポーツを楽しめますね。
大津 競技スポーツ以外でも、そのスポーツに詳しい人やインストラクターがしっかり配慮すれば、アクティブなスポーツにも思った以上にいろんな人が挑戦できるようになるんですよ。例えば、サーフィンとかやったことあります・・・?
岡 はい。あれ、難しいですよ・・・?
大津 私は体験しかしたことないんですが、腕だけで水をかいて沖まで出ないとといけないし、ボードに立つためのバランス感覚もいるし・・・。だから、定年を過ぎた親世代がサーフィンをやってみるとか言い出したら、ちょっとびっくりする類のスポーツではあると思うんですよ。
岡 うん、想像しづらいかも。
大津 だけど、オーストラリアだと「シニア・ウィーク」に無料でコースを提供して、上は90歳くらいまで参加したりしているんです。
岡 90歳・・・?! でもたしかに、サーフィンって安全にさえできれば、いい波に乗れた達成感とか、上手な人への憧れとか、強いモチベーションになりそうですね。
大津 人の「モチベーション」って、不安・恐怖からと、楽しさからと、2種類あるっていいますけど、高齢者の運動へのモチベーションも、「やらないとからだが弱って、あなたが困りますよ!」っていうもの「以外」のアプローチが、もっとあってもいいかもしれないですね。
岡 そうですね、とにかく運動は継続が大事ですからね。仲間と会えるとか、知り合いが増えて楽しいとか、先週より上手くなったとか、試合に勝てたとか・・・。いろんなモチベーションの源泉を知れば、アクティブであり続ける人がもっと増えていきそうですね。
編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。
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