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突然始まった週7日家庭保育、幼稚園の先生に聞いた「コロナ時代のサバイバル育児術」

新型コロナウイルスの影響で保育所や幼稚園が閉鎖となり、いきなり子どもとべったりと家で過ごす毎日が始まった。これまで週2日を「パパの日」としてきた僕も、さすがに週7日となると、気力・体力に限界が・・・・・・。今回はヘルプを求めるべく、オランダで働く保育士、西島さんに家庭保育の心構えやティップスを伺った。

子どもと過ごす1日は、長い(苦笑)

―オランダでは新型コロナウイルスの影響で3月16日から幼稚園・保育所が閉鎖されていますが、西島さんのお仕事にはどんな影響が出ていますか?

日本人幼稚園は4月に入園式をする予定だったのですが、延期になってしまって再開のメドが立っていません。オランダの現地校が5月11日から再開するなか、日本人幼稚園は検討中で、現地校と政府の動きを見てから・・・・・・という形になっています。

週5日だった勤務日は、今は週1~2回登園するのみです。4月20日の週から「オンライン保育」を始めて、週1〜2回、1日25~30分、60人ぐらいの子どもたちと「Zoom」でつながって、手遊びや体操をしたり、一緒に歌を歌ったりしています。子どもたちはミュート(消音)にしているので、こちらから一方的に動画を流す「YouTube」みたいな感じですけど。

―それだけでも親御さんはだいぶ助かりますよね。わが家もそうなんですけど、いきなり週7日で家庭保育することになって、正直きついです・・・・・・。

幼稚園の親御さんともたまたま道で会ってお話しする機会があるんですが、みなさん結構ストレスが溜まっているようです。子どもとずっと家にいて、何をしていいか分からないというのもストレスになるようだし、旦那さんが在宅勤務になって、子どもが邪魔をして仕事にならないストレスを奥さんにぶつけてしまうケースもあるようです。

―同僚や友達と外に飲みに行って気分転換、というのも今はできないですし・・・・・・。僕の場合、これまでも週2日は「パパの日」ということで育児を担当してきましたが、今こうして毎日子どもと接してみると、幼稚園の先生ってあらためてすごいな、と思ったんです。もちろん、お仕事としてやるのとは違うと思うんですが、保育の仕事を始めて、最初のころはストレスや疲れを感じませんでしたか?

疲れを感じることはありますが、子どもと一緒にいると楽しいし、ストレスを感じたことはあまりないですね。自分の子どもと過ごすのと、他人の子どもを預かるというのは違うかもしれません。子どもも親に対する場合と、幼稚園の先生に対する態度は違うと思うんですよ。「私の言うことは聞かないけど、先生の言うことはよく聞くので、先生から言ってくださいよ」と、よく言われます(苦笑)。

―子どもの「保育園モードの顔」ってありますよね。それにしても、家で子どもと遊んでいて、1日が長いなって思ってしまうんです。テレビを見せて「まだ1時間しか経っていないんだ」って。

そうだと思います。子どもに何時間もYouTubeを見せたり、ゲームをさせたりしてしまうという方もいますが、私はそれでもいいんじゃないかな、と思います。そうでないと、1日が長すぎますよね。

1日1つだけ、子どもが喜ぶことを

―疲れやストレスなどもあって、家事以外に生産的なことには気が向かないし、今日1日が早く終わってくれないかな、と待っていると、「何のために今日を過ごしているのかな」と思ってしまうんです。

私も外出自粛になってから1週間は、ただただボーッと時を過ごしていました。それで体重も増えたし、スマホを見ている時間が1日の大半を占めていたことに気づいて、このまま続けると怖いなと思い始めて、1日の流れを習慣化することにしました。

あとは英語を上達させたいと思っているので、そのために何をすればいいか考えて、1つは目標を設けて1日を過ごすようにしています。独り身だからできることかもしれませんが・・・・・・。

―いや、逆に独り身でも同じような気持ちになるんだ、と勇気づけられました。「このままではいけない」と、自分で気づけるってすごいですよね。1日の流れを習慣化しようと思えたのはどうしてですか?

もともと時間を無駄にしたくないタイプなので、ある程度先を見越して1日の目標を立てて、その目標に合わせて午前中は何をすればいいか、それが終わったら何ができるか・・・・・・と考えるのが好きなんですよ。

1日の目標設定を家庭保育に持ち込むとすれば、例えば、これはお子さんを持っている方に聞いたことなんですが、「毎日1つは子どもが喜ぶことをする」というのを心掛けているそうです。この時期、子どももストレスを抱えていると思うので、1日1つでいいので子どもがどうすれば楽しめるのかを考えます。シャボン玉をするとか、絵の具でなにかを描くとか、簡単なことでいいんです。

―「家庭保育の目標」というと、「子どもが何かをできるようになる」とか、子どもが主語になることを想定していましたが、そうじゃなくて「大人の」目標設定が大事なんですね?

そうですね、状況によりけりですが。本当は、例えば、子どもの「鉄棒を頑張りたい」など自発的な気持ちを親がサポートするのがいいんですが、今の状況は子どもも何をしていいか分からないと思うので、大人から働きかけてもいいんじゃないかな、と。

ただ、いくつもやるのは難しいし、この期間がいつ終わるかも分からないので、最初から無理して何かをさせようとしなくてもいいと思います。本当に些細なことでいいと思いますね。

それから、1日の流れを固定してしまうと、それができなかった時に「ああ、できなかった・・・・・・」となってしまうので、お子さんがいる場合の習慣は、朝起きる時間と夜寝る時間を習慣化するぐらいで、その間の時間は毎日変わってもいいと思います。

「この時期は、子どもと過ごしているだけですごい」

―今回の外出自粛で、小さな子どもたちの発育がスローダウンしているのかな・・・・・・とも思われるんですが。

親御さんの気になるところですよね。幼稚園が閉まってしまったことで、子どもの運動量は落ちていると思います。外に出るのがいちばんいいんですけど、日本人だけで子どもを遊ばせていたら、オランダ人に注意されたというケースもあって、「子どもを外に出すのはちょっと怖い」という声も聞かれます。家で体操するなどで工夫するしかないですね。

―例えば、幼稚園でやっている「体を動かす遊び」で、家でもできることってどんなことがありますか?

YouTubeとかでダンスの動画が出ているので、それを利用して一緒に踊ってみるとか。その時、「じゃ、これやってみなよ」ではなくて、自分も一緒にやってあげることが大事ですね。あとは、日本の伝承遊びで「あんたがたどこさ」の「さ」の部分でジャンプしたり、動きのバリエーションをつけるとか。

ほかには肩幅に足を開いて、子どもがその間を繰り返し抜ける遊びとか、音楽をかけて四つん這いになってリズムに合わせて歩くとか・・・・・・。布団の上ででんぐり返しとかもいいですね。

―いいですね。体を動かさない遊びだったら、どんなものがありますか?

折り紙を折ったり、絵を描いたり・・・・・・という創作系の遊びがありますよね。あとは、宝探しとか、家でファッションショーとか。SNSで見たんですが、「家でレストラン感覚を味わおう」というのをやっている家族がいて、ちゃんと両親もスーツを着て本格的なレストランごっこをしていましたね(笑)。

―それには親も「やるぞ」という気合が必要ですね(苦笑)。ただ、親の気力と体力の限界がきて、つい子どもに対して不機嫌になってしまいそうだったらどうすればいいですか・・・・・・

私は怒る前に一回止まって、冷静な気持ちを保とうと頑張ります。感情的になってしまうと子どもの受け取り方も変わると思うので、一回自分の中で考えを整理して、否定的なことを肯定的な言葉に変えて言うように心がけています。

例えば、「勉強しなさい。あれもしなさい」ではなく、「一緒にしよう」と声をかけてあげたり、「走ったらダメ」ではなく、「歩いてゆっくり進もうね」みたいに。親になると、なかなか難しいとは思いますが・・・・・・。

―いやあ、できた人だなあ(苦笑)。夕方になって疲れてくると、いろんな手を打っても子どもが泣き続けるような場面もあるんですけれど、そんな時はどう対処すればいいでしょう?

何が原因かを考えて、それで子どもに声がけしたりしても泣き止まなければ、気持ちを切り替えさせたり、何かに目を向けさせてもいいと思います。それがアニメとかYouTubeとかであってもいいのではないでしょうか。「テレビは1日に1時間」などルールがあったら、それはなるべく守ったほうがいいんですが、やむを得ないこともありますよね。

―親はそんな時、自分の罪悪感とどう向き合えばいいんでしょうか?

今は外にも出られないし、ただでさえ気が滅入ってしまうと思うので、罪悪感を感じなくていいと思います。もうこの時期は、子どもと過ごしているだけですごいことだと思うんです。だから親御さんは「ダメだ」と落ち込まず、「今日はこれだけやったぞ!すごいぞ」って自分の中で思ってもいいのではないでしょうか。

―ああ、ちょっと気が楽になりました(苦笑)。こんなに家族でべったり長時間過ごすのは初めてのことで、いろいろ大変ではありますが、逆に今回のことでポジティブな面は?

幼稚園に通う時期の子どもたちは、いちばん成長が見える大事な時期だと思うんです。長期間、一日中一緒に過ごすのは大変ですが、マイナスにばかり考えるのではなく、子どもの成長が見られるチャンスだと思って、この時期を過ごせればいいな、と思います。

―今日はいろいろ愚痴を聞いてもらった感じですが、勇気づけられるお話をありがとうございました!

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。
構成・文:山本直子
フリーランスライター。慶應義塾大学文学部卒業後、シンクタンクで証券アナリストとして勤務。その後、日本、中国、マレーシア、シンガポールで経済記者を経て、2004年よりオランダ在住。現在はオランダの生活・経済情報やヨーロッパのITトレンドを雑誌やネットで紹介するほか、北ブラバント州政府のアドバイザーとして、日本とオランダの企業を結ぶ仲介役を務める。

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