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コラム:専修大学カストリ雑誌コレクションを見てきて(ニューズ・レターNo.62、2019年6月号)

 4月、専修大学生田キャンパス図書館で開催されていた春の企画展示「時代にゆれた表現の自由- 江戸から平成、そして〇〇 -」を観てきた。会場では、江戸時代、戦前、戦中、戦後から現在まで、規制に翻弄されながらも出版された多くの資料が展示されていた。中でも、初出品となる「カストリ雑誌コレクション」に注目していたこともあり、ちょうど大学関係者に誘われたこともあり、足を運んでみた。
 2000年代初頭から、筆者も20世紀メディア研究会の占領期雑誌研究会で雑誌研究に取り組んできたのでカストリ雑誌にも少なからぬ関心を寄せてきた。また2016年の研究所主催の早大中央図書館「福島鋳郎コレクション」でカストリ雑誌展示を担当したこともあり、ある程度の資料勘もあった。資料的には、プランゲ文庫にも国会図書館にも早稲田大学福島寿郎旧蔵資料、同志社大学山本明文庫にもないものが、唯一無二のカストリ雑誌であるとの認識もできつつある。
 そうした中で、専修大学の「カストリ雑誌コレクション」では、展示された雑誌以外にも、書庫の全235誌(295冊)を、教員・図書館の方々のご厚意により見せて頂き、所蔵リストも拝受した。一部、1928~1933年の戦前のものも含まれているが、その形態・内容も戦後期のものと近く、むしろこれらの雑誌スタイルが戦後カストリ雑誌にもつながっているとも考えられ興味深かった。これらコレクションは、風俗資料収集家であった石崎正吾氏より1990年頃、大学に寄贈されたという。
 筆者としては二つの課題を頂いたと認識している。一つは、専修大学にしか所蔵されていないカストリ雑誌はどの雑誌かということ。もう一つは、これまでも繰り返されてきた、「カストリ雑誌」というカテゴリーの問題。すなわち、どこからどこまでがカストリ雑誌の範囲であるかという明確なコンセンサスは、まだ確立していないようにみえる。前者については、今後、リストの照合作業が残されており、後者の問題は未解決の大きなテーマでもあるので、参考となるような指標、定義を考えていきたいと思っている。
(『Intelligence』購読会員ニューズ・レターNo.62)

【付記】
『戦後出版文化史のなかのカストリ雑誌』勉誠出版、2024年5月刊行
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=103732

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