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第三章 再会と新たな始まり①

市役所での健太との再会


 真央が夢に描いていた織物の世界。

 その実現のため、真央は大学卒業後、一宮市役所に就職した。

 伝統産業の振興を担当する部署への配属を希望し、見事にその夢をかなえたのだ。

 市役所での仕事に意欲を燃やす真央。

 しかしある日の出来事が、彼女の人生を大きく変えることになった。

 織物関連の企業との打ち合わせのため、会議室に向かう真央。

 ふと視線を感じて振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。

 「真央…?」

 「健太君…!」

 驚きのあまり、思わず資料を取り落としてしまう真央。

 そう、目の前にいたのは幼馴染の篠崎健太だったのだ。

 「まさか、ここで会うなんて思わなかったよ」

 健太は優しい笑顔を浮かべながら、真央の手を取って資料を拾い上げた。

 「私も...健太君がここで働いているなんて」

 「うん、建設課に配属されて半年になるんだ。真央こそ、どうしてここに?」

 「私は織物振興課で働いているの。伝統を守る仕事がしたくて」

 「そうか、真央らしいね。昔から織物好きだったもんな」

 久しぶりの再会に、二人は言葉を交わしながらも、どこか照れくさそうにしていた。

 真央は、健太との思い出がよみがえってくるのを感じていた。

 一緒に過ごした学生時代。将来の夢を語り合ったあの日々が、走馬灯のように蘇ってくる。

 「...ごめん、真央。俺、会議に行かなきゃ」我に返った健太が、申し訳なさそうに言う。

 「ええ、私も行かなきゃ。でも、健太君…また会えるよね?」真央は真剣なな期待を込めて尋ねた。

 「もちろん。今度は、ゆっくり話がしたい。真央の夢、もっと聞かせてよ」

 「うん、約束だよ。健太君にも、私の想いを伝えたいの」

 約束を交わし、真央は会議へと向かった。

 健太との再会は、真央に新たな希望をもたらしてくれた気がした。

 幼馴染との再会。それは、真央の織物人生に新たな彩りを添えるものとなるはずだった。

 あの頃描いた未来。二人で織物の世界に羽ばたく夢。

 それを、もう一度追いかけてみたい。

 そんな思いが、真央の中に芽生え始めていた。

 「健太君、私の夢、応援してくれるかな...」

 真央は胸の高鳴りを感じながら、そっと呟いた。


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