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第三章 再会と新たな始まり②

健太の共感と協力の申し出

 会議を終えた真央は、そわそわと落ち着かない。

 約束の時間が近づくにつれ、期待と不安が入り混じる。

 (健太君は、私の話を理解してくれるだろうか…)

 思い悩む真央の前に、健太が現れた。

 「待たせたね、真央」

 「ううん、私も今来たところだから」

 照れくさそうに微笑み合う二人。そして、近くの公園へと向かった。

 ベンチに腰掛けた真央は、おずおずと切り出した。

 「ねえ健太君、覚えてる? 昔、将来は二人で織物の世界で活躍しようって、約束したこと」

 「ああ、もちろん覚えてるよ。あの頃の真央は、本当に織物への情熱で満ち溢れてたな」

 「今でも、その想いは変わらないの。だからこそ、市役所で働きながら伝統を守る活動をしているんだよ」

 真央は、自分の夢への想いを熱心に語った。

 健太は黙って、真摯に耳を傾けてくれる。

 「一宮の織物の価値を、もっと多くの人に知ってもらいたいの。
 そのために、色んなイベントを企画したり、若い世代に織物の魅力を伝える活動をしているんだ」

 「真央、すごいな。その想い、俺にもよくわかるよ」

 健太の言葉に、真央は驚きと喜びを感じた。

 「健太君…私の想い、理解してくれるの?」

 「ああ。一宮の伝統産業を守るのは、俺たち若者の使命だと思う。真央の活動、全力で応援したい」

 健太は真央の手を握り、力強く宣言した。

 「ありがとう、健太君.. 心強いよ」

 真央は感極まり、涙を流した。

 「真央、一緒に一宮の織物の未来を創っていこう。二人の力を合わせれば、もっと大きなことができるはずだ」

 「うん…! 二人でなら、新しい伝統だって生み出せるかもしれない」
 希望に満ちた瞳で見つめ合う二人。

 幼馴染との再会が、思いがけない協力関係を生んだのだ。

 織物の未来を切り拓くために。真央と健太の新たな一歩が、ここから始まろうとしていた。

 「...ねえ健太君、私たち、昔の夢、追いかけてみようか」

 「ああ、必ず叶えてみせようじゃないか。二人の夢を」

 微笑み合う真央と健太。

 二人の間に流れる空気は、どこか昔を思い出させた。

 将来を誓い合ったあの日のように、希望に満ち溢れている。

 「織物の神様も、二人の再会を喜んでいるはず」

 「うん、きっと。二人の絆は、神様が結んでくれたんだよ」

 二人で手を取り合い、空を見上げる。

 そこには、真央と健太の未来を優しく照らす太陽があった。

 織物への想いが再び二人を結びつけた奇跡。

 それは、これから始まる新しい伝統への第一歩となるはずだ。

 「健太君、私、これからは君と一緒に織物の道を歩んでいきたい」

 「俺もだよ、真央。二人でなら、どんな困難も乗り越えていける」

 固い決意を胸に、真央と健太は織物の未来への扉を開いた。

 二人の再会は、まさに運命の導きだったのかもしれない。

 今はまだかすかだが、真央の中には予感があった。

 この出会いが、やがて一宮の織物に革新をもたらすことになると。

 健太との再会を心の支えに、真央は新たな思いで織物に向き合う。

 伝統を守り、さらに進化させていく。それが、二人に託された使命だと信じて。

 「さあ、また一から織物の勉強だ。真央、付き合ってくれるよね?」

 「もちろん。私たちの織物は、これからが本番なんだから」

 二人は力強く頷き合った。

 かつて子供だった二人は、いつの間にか立派な大人になっていた。

 けれど、織物への情熱だけは変わらない。

 新たなスタートを切った真央と健太。

 これから二人が織りなす伝統の物語が、一宮の地に新しい歴史を刻んでいくことだろう。

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