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エッセイ 割り箸こわい

 「割り箸の恐怖」というタイトルのエッセイを読んだのは、私が大学生の頃だと思いますから、今から40年近くも前になります。作者は開高健という魚釣りの好きな芥川賞作家です。割り箸が怖いとはどういうことなんだろう。呪いのこもった割り箸なのだろうか。その箸を使うと死んでしまうのだろうか。興味津々で読み始めました。
 しかし、内容は予想とは全然ちがうものでした。日本人が好んで使う割り箸。それは森林資源のとてつもない無駄遣いであり、割り箸を作るために、木が切られ、森が消え、山が形を変えていく。それがひいては、洪水や異常気象の原因になっていく・・・。そう考えると我々が日頃割り箸を無造作に使い捨てにしていることは、なんと恐ろしいことなのだろう、という主旨のものでした。
 最近ようやく、スーパーの過剰包装やレジ袋に対する見直しがされ始めたり、割り箸を使わないように自分の箸を持ち歩くといった運動が始まったりしていますが、40年も前に割り箸に恐怖を感じていた作者は時代を見通す目を持っていたのかなあと感心させられます。
 私は恐い話が大好きなので、今でも割り箸を愛用しています。


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