Umbrella SamplingとWeighted Histogram Analysis Method

Umbrella Samplingは,反応座標のある点にピン止めされるようなポテンシャル(umbrella potential)を反応座標軸に沿って複数用意し,反応座標軸周辺を重点的にサンプリングする手法です。Umbrella Samplingで得られたサンプリングデータはUmbrella Potential込みの状態ですが,興味があるのはUmbrella Potentialがない状態での自由エネルギー形状(反応座標の確率分布)です。Umbrella Samplingで得られたサンプリングデータをUmbrella Potentialがない状態の情報に変換する手法の一つにWeighted Histogram Analysis Method(WHAM法)があります。この記事では,Umbrella SamplingとWHAM法を簡単に説明します。

Umbrella Potentialが有る無しでの確率分布

系のPotential energyをV(q),Umbrella Potentialをw(s(q))(複数あるUmbrella Potential),反応座標をs(q)とおくと,反応座標点s(q) = xの存在確率は以下の様になります。
Umbrella Potentialがある場合:

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Umbrella Potentialがない場合:

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ここでβは逆温度を表します。
P_b(x)を式変形することでP(x)を用いた形で表現できます。

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Umbrella Potentialは反応座標軸に沿って複数設けられるので,そのindexをθとすることにします。

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Umbrella Potentialは調和型ポテンシャルが採用されることが多いです。

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WHAM法

各Umbrella Potentialでの反応座標の確率分布を足し合わせると以下の様にり,これがWHAM法の出発点となる式となります。

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Umbrella Samplingで得られたHistogram(分子)がRe-weightされる(分母)されることで目的の確率分布が得られる表式になっています。

Umbrella Potential有の確率分布の推定

上記で得られたP(x)の表式を計算するためには,各Umbrella PotentialでのP_b^θ(x)の情報が必要です。P_b^θ(x)はUmbrella Samplingの結果から以下の値を代用することにします。

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N_θはindex θのUmbrella Potentialにおける全サンプリングデータ数,n_θ(x)はs(q)=xとなったサンプリングデータ数です。

Umbrella Potentialなしの確率分布の推定

P(x)の表式は自分自身も含んだ形となっているため,P(x)に対してself-consistentな解を得る必要があります。WHAM法ではP(x)の適当な初期値を用意し,self-consistentな解が得られるまでiterativeにP(x)を更新します。以下の定義式

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を用いて,より具体的な手順を説明します。

1. P_{θ,i}を計算
2. a_iを計算
3. c_{θ,i}を計算
4. P_iの初期値を適用に用意
5. d_{θ,i}を計算
6. a_i, c_{θ,i}, d_{θ,i}を用いてP_iを更新
7. P_iの値が収束するまで手順5~7を繰り返す



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