平均力ポテンシャルを用いた結合定数の表記について

はじめに

Funnel metadynamicsの論文を読んでいると,リガンドータンパクの結合(会合)定数が

画像2

なる表記から議論が始まっていることに気づきました。各記号の意味は下記の通りです(OnlineのLatexで書いたため,やむなしで拙い英語での説明に。。。)。

画像5

上式は如何にも尤もらしく見えますし,何より複数の論文で当たり前のように使用されているので,特に導出を説明するまでもないレベルで認知されている表記の模様です。
ですが,,,個人的には良く考えると導出方法がいまいち分からないことが判明したので,ちゃんと調べることにしました。

重要なポイント

結論から言いますと,導出にはdilute limit(希薄極限)の操作が必要です。具体的には,系の体積Vに対して∞の極限を取る操作です。実際のリガンドータンパクの会合現象は希薄条件であることが(ほぼ?)全てなので,この極限操作は合理的なのですが,それに気づかず極限or近似なしで解析的に導こうとしていた自分はドツボにはまってしまった次第です。。。

導出

結合定数の定義式から出発して上式の導出を以下に説明します。
結合定数の定義は,リガンド単体の密度[L],タンパク単体の密度[P],リガンドータンパク複合体の密度[PL]を用いて

画像6

と定義されます。簡単のため,系にはリガンドとタンパクがそれぞれ1つずつ存在する場合を想定します。すると,

画像5

となります。
[PL],[L]はそれぞれ平均力ポテンシャルを用いて以下のように記述されます。

画像6

V[L]の極限操作は以下の様になります。

画像8

V^2[PL]の極限操作は以下の様になります。

画像8

そのため、結合定数K_bは希薄極限において,

画像9

となります。以上より,目的の表式を得ることができました。

参考文献

1. Vittorio Limongelli et al, PNAS April 16, 2013 110 (16) 6358-6363
2. Hengbin Luo and Kim Sharp, PNAS August 6, 2002 99 (16) 10399-10404

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?