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コーヒー好きもインドではチャイを飲む

インドにいる間いつもチャイを飲んでいた。朝食を食べてはチャイ、昼食を食べてはチャイ、夕食の後もチャイ。「コーヒーを飲まなければ目が醒めない」「スタバではドリップコーヒーしか飲まない」僕も、インドでは一切コーヒーを飲まずチャイばかりを飲んでいた。

僕はチャイ専門店、いわゆる「チャイ屋」でチャイを飲むのが好きだった。道端でやっているチャイ屋もあれば、小さな店でやっているチャイ屋もあった。店の周りにはベンチが置かれていた。チャイ屋のオヤジが一日中チャイを入れ続けている。それを何年もやっているのだ。うまくないはずがない。たかがチャイ、されどチャイ。オヤジは職人のごとくチャイを作っている。

約10年ぶりにコルカタを訪れたとき、当時よく通っていたチャイ屋を思い出して行ってみた。すると当時と変わらず、オヤジはチャイを作っていた。しかもまだ素焼きの使い捨てカップを使っていた。飲み終われば地面に捨てて土に還るそのカップに、当時感銘を受けたのを覚えている。まだ、やっていたのか。そんな高揚感に包まれながら、冷静にチャイをひとつ注文する。オヤジはそんなこともつゆ知らず、笑顔を見せずに淡々と手を動かし、見ず知らずの外国人にチャイを作ってくれた。

チャイを飲みすぎたせいか、ふと「日本でチャイ屋をやりたいな」と思ったことがある。至極の一杯を作りたいというよりは、チャイ屋という雰囲気に憧れていたのだ。気軽に誰でも行けるようなチャイ屋。昼間っから働いているかどうかわからない連中が集まるチャイ屋。他愛もない会話が始まるチャイ屋。ビルとビルの路地裏にチャイ屋があれば、都会の喧騒や日々の忙しさからふと離れられるそんな場所になるのではなかろうか。

そんなことを思いながら、チャイ屋のベンチでチャイを飲みながら、街ゆく人々を眺めていた。チャイを飲みきってオヤジに礼を言って店を去る。再びインドの喧騒の中に紛れ込んで行く。「チャイを飲む時間」はそんな刺激的なインドの旅にひとときの安らぎを与えてくれる。

ああ、オヤジたちは今日もチャイを入れているのだろうか。

なんだかチャイを飲みにチャイ屋に行きたくなってきた。

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