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虫の音(ね)に静寂を感じた台風の夜

我が家の周辺では、今日約4日ぶりに青空が広がりましたが、このたび日本中に影響を及ぼした台風10号は、本体から遠く離れた関東にもかなりの雨を降らせ、場所によっては甚大な被害を与えて行きました。

私が住んでいる横浜南部地区も、土砂災害警戒情報や避難情報が出たりしましたが、海に近い我が家の周辺には土砂崩れを起こしそうな斜面もないため、私はもっぱら数日にわたる断続的な大雨や雷などに注意しながら、ひたすら台風の通過を待つという日々を送っていました。

そんな中、かなりの大雨と雷が続いたある夜に、ちょっと今までにない面白い感覚に気がついたので、そのことについて書いてみたいと思います。


それは、ここ数日で最も多くの雨が降った日の夜のことでした。ひとしきり強い雨と雷が続いた後で、ふと気がつくと窓の外から虫の音(ね)が聴こえてきました。

最初は「ああ、虫の音が聴こえるということは、少しは雨が落ち着いたんだな〜」と思い、ちょっと安心したというか、気持ちがほっとしたのでした。

雨が強く降っている間は、雨音がかなり大きくなるし、虫も鳴かなくなるだろうから、当然虫の音などは聴こえず、雨が打ちつける音や雷が轟く音などが聴こえるばかりなのですが、その勢いが弱くなると、ふっと虫の音に気づくようになるというか、耳に入って来ていました。

そんな、大きな雨音と小さな虫の音という音のコントラストが何度か繰り返された後の、何度めかの虫の音を聴いている時に、ふとそれまでと違った感覚が湧き上がってきたのです。

それは、虫の音の奥に静寂があったことに気づいたというか、虫の音を聴きながら、今自分は静寂を聴いているんだなという感覚が強く出てきたのです。小さな虫の音によって、静寂が引き出されてきたような、より強調されているような、そんな感じがしたのでした。

松尾芭蕉の「静けさや岩に染み入る蝉の声」は、うるさいぐらいの蝉時雨の中に静寂を感じる境地だと思うので、それとは全く違うというかむしろ逆なのですが、小さい音だからこそ、より静寂が強調され、引き出されて聴こえてきたような気がします。

特に、強い雨の音や雷鳴を続けて聴かされた後たから余計に、それと真逆の小さな虫の音と、その奥にあった静寂の中に、とてもほっと安心する気持ちや、平和な気持ちを感じたんだとも思います。

もちろん、以前から虫の音が聴こえる秋の夜の静かな雰囲気は好きでしたが、そこに静寂があるんだということは特段意識していませんでした。なので今回、静寂の存在をありありと感じられたことは、今までにない新しい経験だったと言えます。

ちなみに、今この記事も虫の音とその向こうにある静寂を聴きながら書いています。今年の秋は、じっくりと虫の音と共にある静寂を味わいながら、過ごしてみたいなと思っています。

この睡蓮からも静寂を感じます

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