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第7回「【講義】【演習】プレスリリース」

みなさん、こんにちは。
「広報リーダーシップ学」の授業の7回目となります。
今回はプレスリリースについて学びたいと思います。




【5W1H】 プレスリリースの基本

プレスリリースは広報のメインの仕事の一つであり、広報の本を読めば必ずと言っていいほど プレスリリース の章が作られ説明がなされています。
プレスリリースだけに特化した本も何冊も出版されています。

記事にしてもらいやすいプレスリリースの書き方や、配信の方法、タイミングなどのテクニカルなことはそうした本にお任せをして、ここでは広報リーダーシップの視点からプレスリリースを考えていきたいと思いますが、学生の皆さんはプレスリリースのことなんてそもそもあまり知らないと思いますし、そうでありながら広報の重要な業務の一つであるので、基本的なことは説明していきたいと思います。

Why
PRESS RELEASE(プレスリリース)は「報道発表」と訳されます。
企業や非営利の団体・組織などが新製品開発や発明、新サービスの開始、イベントの開催、受賞、資格取得、認証、発足、新設、合併などといった伝えるべき、伝える価値があるニュースネタがある場合に、報道機関の記者向けにわかりやすく伝える資料を作成して、公式に伝える活動がプレスリリースです。

What
プレスリリースはプレス(報道機関)へのリリース(発表)なので、報道機関向けに行われます。
特定の報道機関に個別にメールなどで知らせる方法(リークとも言います)とたくさんの報道機関へ一斉に通知する方法があります。
プレスリリースの一斉配信には省庁や役所に設置されている記者クラブを訪問して資料を届ける「投げ込み」や、一斉メール配信、ワイヤーサービス(プレスリリース配信サービス)の活用といった方法があります。

Who
プレスリリースを誰が誰に対して行うのかと言えば、通常は企業の広報担当部署や広報担当者が、報道機関の記者に向けて行うものです。
しかし、企業内、組織内の、伝達すべき価値ある有効な情報を集めるためには、広報だけが孤軍奮闘するのではなく、他の多くの部署の協力を得ることが必要不可欠で、そのための仕組みづくりは重要な課題です。
ですから、企業、組織に所属する多くの人たちの広報マインドを育む活動も広報セクションの重要な任務であり、発揮すべきリーダーシップと言えます。

プレスリリース配信の方法として、プレスリリース配信サービスがありますが、これは企業の広報が書いたニュースネタ資料がそのまま掲載されるもので、報道機関に限らず一般生活者も見ることができることから、一般生活者を対象とする広告的な使い方をする企業もあります。

When
イベント開催日、新製品発売日など、特定の日が設定されている場合に、事前にプレスリリースすべきか、事後報告としてプレスリリースすべきかという選択肢があります。
プレスリリースは、基本的には一般生活者へのニュース記事ではなくて、プレスに向けての発表であり、取材を受けて記事にしてもらうことを目的としていますから、通常は事前に行われるものだと思います。

新聞や雑誌などはそれぞれの発行のスケジュールがあるので、それを把握してプレスリリースのタイミングを考えるのも効果的です。

著名な企業が、とんでもなくすごい製品を開発・発売するなどといった場合は別にして、プレスリリースの内容にメディアが興味を持って、そのまま記事にしてくれるというケースは、残念ながら多くはありません。
メディア側が予定している企画に対して当てはまる内容のプレスリリースがタイムリーに配信されたときに、記事になる可能性が高いといえるでしょう。
そう考えると、国際○○デーや○○記念日などといったタイミングで、イベントや製品発売を企画して、プレスリリースを配信するという方法は有効です。
東日本大震災があった3月11日には、毎年、新聞各社はそれにちなんだ記事を掲載するので、震災復興活動のプレスリリースを3月初旬に出すことで、記事として取り上げてもらったことは多くあります。

Where
リリースの方法は様々あり、メール、FAX、ホームページ掲載、郵便、投げ込み、ワイヤーサービスなどから有効なチャネルを選択します。
記者クラブは省庁や役所などに設置されていて、事前のアポが必要な場合もあります。
私の勤務先の学校法人は埼玉と東京に学校を設置しているので、「文科省」「都庁」「埼玉県庁」の記者クラブへの投げ込みを使い分けています。

(How many)
プレスリリースをするために無理やりニュースネタを作るわけではないので、プレスリリース配信本数をKPIとするのはどうかという意見があるかも知れません。
しかし目標を設定することで、ニュースへのアンテナが立ち、感度が良くなることは確実にあります。
情報の受け取り方、姿勢、他部署との接し方なども変わります。

また、ワイヤーサービスを利用すると費用が掛かるので、予算を立てておく必要があります。


【How】 プレスリリースの書き方

前の章で5W1Hの " H " は " How many " としてプレスリリースの本数について書きましたが、あらためて本来の " How " 、プレスリリースの書き方について、ここで詳しく説明したいと思います。

プレスリリースは自由な書式で書いて構いませんが、最初は決まったフレームを使った方が取り掛かり易いかも知れません。

以前、私が書いたプレスリリースをサンプルにして、掲載すべき項目などを一緒に考えていきましょう。

以下のプレスリリースは2018年7月に配信したものですが、BSジャパン(現BSテレビ東京)の密着取材につながり、「14歳からのスタートアップ〜Young CEOの魔法の杖〜」という番組において2週連続で聖学院みつばちプロジェクトの活動が取り上げられました。

  1. 宛先 私は宛先を「報道関係各位」としています。

  2. 配信日

  3. 配信元(企業・団体名)

  4. タイトル 記者のもとには毎日たくさんのプレスリリースが届くのでタイトルはとても重要だといいます。簡潔かつ要点が絞られていることに加えて、記者の心に響くインパクトも必要です。

  5. 本文 私は最近は、最初の段落を全体のサマリーとして、5W1Hを意識して必要な項目を入れるようにしています。忙しい記者が最初の一文を読んだだけで全体の内容がわかるようにです。そしてその後で、具体的なことや詳細を追記するような書き方をしているのですが、この頃のプレスリリースはそうなってはおらず、本文全体で5W1Hをカバーしていました。

  6. 特記事項、ポイント、関連項目 本文で伝えきれないポイントなどをあらためて項目を立てて追記しています。このプレスリリースでは本文中で説明し切れなかった、「聖学院みつばちプロジェクトの目的」「聖学院みつばちプロジェクトのハチミツの特色」、そして「高校生科学教育大賞2017」奨励賞受賞の実績について、特記事項として記載しています。

  7. 写真 写真はあったほうが印象に残り易いと思います。みつばちプロジェクトのプレスリリースでは、生徒たちが養蜂用防護服を着て、みつばちの巣を内検している写真を掲載しました。なかなかのインパクトだと思いませんか。

  8. 問い合わせ先 当時のプレスリリースの問い合わせ先は、現在では古い情報となってしまっているので、ここでは伏せさせていただきましたが、通常は、担当部署、担当者名、電話番号、メールアドレスを記載しています。住所やFAX番号は最近は入れていません。


【How】 心に残るプレスリリース

チップ・ハース、ダン・ハース兄弟の『アイデアのちから』(2008,日経BP社)という本に、メッセージを記憶に残らせるための6つの原則、「SUCCESsの法則」が紹介されています。

自分では伝える価値があると判断をしてプレスリリースを配信しているわけですが、伝え方がうまくなければ、メディアに記事として取り上げてはもらえません。

記者の心に刺さるプレスリリース資料の作成にもSUCCESsの法則は参考になります。
そのSUCCESsの法則、6つの原則とは以下の通りです。

  1. Simplicity 単純明快

  2. Unexpectedness 意外性

  3. Concreteness 具体性

  4. Credibility 信頼性

  5. Emotions 感情(に訴える)

  6. Stories 物語性

プレスリリースも、やはり「単純明快」であることが重要です。
タイトルで目を惹こうとして、冗長な表現や、気取った表現をしてしまうことに注意してください。
また、「素晴らしい」「素敵」など評価の伴う言葉を自ら使ってしまうことがありますが、そうした評価をするのは記者や一般生活者です。
広報である私たちは、事実を正しくストレートにタイトルにすべきであると思います。

本文もやはり単純明快であるべきで、最初の段落を読むだけでプレスリリースの全体がわかるように、5W1Hを意識して書くことを推奨します。

プレスリリースするには、プレスリリースするきちんとした理由があります。
例えば、世界で初めて、日本で初めての発見、発明、開発されたときや、コンテストで受賞するなど、日常と異なることがあったときは理由の一つとなります。
固定されたイメージと違うことだけを「意外性」というのではなくて、そうした日常と違うイベントも「意外性」といえると思います。

「みつばちプロジェクト」のプレスリリースでは、高校生が本格的にみつばちを飼育してハチミツを採っていることが意外性ですが、さらに採蜜したハチミツを使った食品を提供するカフェを経営するということにも意外性がありました。

そして「具体性」や「信頼性」があると、記事の納得感が高まります。
例えば「みつばちプロジェクトは数々のコンテストで受賞しています」と書くだけでなく「高校生科学教育大賞2017 奨励賞受賞」と具体的に書いた方が説得力があります。

信頼性に関して言えば、「日本で初めて」「日本最大」と書くにはしっかりとした根拠が必要で、勝手に言うだけなら信頼性がないばかりか、嘘の発表になりかねません。

そして、「感情に訴える」ことで共感が生まれます。
環境問題の解決につながる商品開発や、ジェンダー問題に関連するサービスの開始など、多くの人の共感によってビジネスの成功が近づくことがあります。
「みつばちプロジェクト」のケースでは、高校生がビジネスを行うということから、未来を担う若い世代を応援したいという気持ちが喚起されています。

さらに、感情に訴えるために「物語性」があることは効果的です。

日本は海外諸国に比較して、年間の新規の起業数が多くありません。
しかし、倒産する数が極端に少ないことも大きな特色です。
すなわち、「日本人は起業に対して慎重な気質を持っている」ということが仮説として考えられます。
とはいえ、新しく会社が設立されなければ、イノベーションは起こりづらく、経済も活性化しません。
モノを作れば売れる時代の成功体験が染み付いてしまっている日本では、サラリーマン気質が根付いているからか、アントレプレナーシップが育まれてきませんでした。

このような状況から、現在は、行政や地域が起業を推進する活動を多く行なっており、特に若い世代へのアントレプレナーシップ教育に力が入れられています。

日本政策金融公庫の「高校生ビジネスプラン・グランプリ」もそうした活動のひとつであり、BSジャパンの「14歳からのスタートアップ」には若い世代の起業マインドを刺激するというコンセプトがありました。

そしてこの若い世代の起業家育成の具体的な物語の一つとして「みつばちプロジェクト」の活動はぴったり嵌ったのだと思います。


【演習】 プレスリリースを書いてみよう!

それでは、これから実際にみなさんにプレスリリースを書いてもらいたいと思います。

フォーマットは企業によってさまざまで、決まりがあるわけではありません。
書ける人は自由に書いていただいて構いませんが、どのように書いたら良いかわからない場合は以下に添付したフォーマットを利用して書いてみてください。


プレスリリース作成用に、架空のお題を以下に用意しました。
最初から上手には書けないかも知れませんが、実際に書いてみないと上達することはありません。
うまく書けなくても全然大丈夫なので、まずはとにかく書いてみましょう。

稲作工場でのお米生産の新ビジネス開始のプレスリリース
レタスを屋内の植物工場で生産している○○株式会社が、昨年から新たに工場での稲作栽培を開始し、今年の秋から市場にそのお米が並ぶことになりました。
今年2024年は米不足によってスーパーマーケットなどで米が品切れの状況が起こりました。
高齢化による農家の廃業、台風や大雨の災害、猛暑などの異常気象による不作など、米不足の背景には多くの社会課題が潜んでいます。
植物工場での稲作栽培は技術的には可能と言われながらも、コストや効率性の問題から実現は不可能と言われてきました。
10月1日より販売されるお米の品種はコシヒカリですが、値段は田んぼで生産された一般のお米の相場より10%程度高い価格となる予定です。

ここで示されていない詳細については自分で想像して構いません。
社会課題や社会的な背景とのつながりなども考えて、その根拠となる資料はWEBで探してみてください。

プレスリリースが書き上がった人は、こちらのGoogleフォームから提出してください。
↓(Googleアカウントが必要です)


以上で今日の授業はおしまいです。
プレスリリース作成体験はいかがだったでしょう。
難しかったですか?

次回は、メディア記者、あるいはワイヤーサービスを行う通信社の方をゲストに迎えてリアルなプレスリリースのお話をしていただく予定です。
次回もどうぞお楽しみに。

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