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祥月命日

父が魂だけの存在になってから
十七回目の祥月命日がやってくる

父は彼の世に旅立つ前から
時々身体から魂を抜け出していたようである

不思議な顔をして
母に「知らないおばあちゃんが来た」と話していた

母は毎日、朝早くから父の病室に詰めていた
ずっと父のことだけ見つめていたのである

看護師さんから褒められるほど、上手にご飯を食べさせて
いつもいつもそばにいた

「二人の心と心が繋がっていればいい」
若い頃、父が母に言った言葉を母はずっと忘れずに覚えていた

わたしはその言葉を聞いた時
羨ましいと感じたのである

身体なんかいらない
心さえ
寄り添えれば
それでいい

それがわたしの理想だから

父の祥月命日にアゲハ蝶がやってくる
何回も何回も

昨年は二羽でやって来たけれど
今年は一羽だけ
何回も何回も

何を意味しているのだろう

一年前は父と母との束の間のランデブーだったのかもね

一昨年には父は母を迎えに来ていた
「来たよ、来たよ」と父の声‘をわたしは聞いた

心の繋がりのある二人の魂

仏壇でお祈りをしていると
また涙が出る

わたしは置いてきぼりを喰らったけれど
「親を見送れたことはしあわせ」と
知人から言われた言葉が蘇る

そうか…親に見送られることが一番の親不孝





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