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4年に1回の大会はそもそもアスリートファーストなのか?

そもそもオリンピックはなぜ4年に1回なのでしょうか?

日本オリンピック委員会のHPによると、

最も有力なのは、古代ギリシア人が太陰歴を使っていたからという説です。現代、一般的に使われている太陽暦の8年が、太陰暦の8年と3カ月にほぼ等しいことから、8年という周期は古代ギリシア人にとって重要な意味をもっていたのです。暦を司るのは神官であり8年ごとに祭典が開かれるようになり、後に半分の4年周期となりました。太陰暦では49カ月と50カ月間隔を交互にして開催されていたようです。

これは古代ギリシャの話で、それでも尚現代において4年に1回なのはなぜなのでしょうか?私なりに考えた理由は二つです。

① 大きな大会なので毎年開催するのは難しいから
② 4年に1回の方が大会の価値が上がるから

①に関して、オリンピックを開催するには施設の建設など莫大な費用がかかります。この費用負担をして開催するところを毎年探すのは至難の業です。準備にも相当時間がかかります。お金や開催都市、運営上の問題を考慮すると4年に1回が丁度良いのではないでしょうか?

②に関しては特に1984年のロス五輪以降の話かもしれません。4年に1回しか開催されないという事は、4年間の様々なストーリーがそこに凝縮されます。それが見るものに感動を与えるのです。この「4年間のストーリー性」という絶妙なスパイスが価値の根幹をなす「希少性」と相まってオリンピックの価値をさらに押し上げるているように思います。

以上は運営者側、見る側の見方です。ここでは4年に1回とはアスリートにとってどのような事なのか、検証してみたいと思います。

①年齢の問題

まず、オリンピックを迎える年齢を見てみましょう。

15歳、19歳、23歳、27歳、31歳、35歳

16歳、20歳、24歳、28歳、32歳、36歳

17歳、21歳、25歳、29歳、33歳、37歳

18歳、22歳、26歳、30歳、34歳、38歳

上記は生まれた年により、何歳の時にオリンピックがやってくるかです。競技特性、トレーニングの仕方、男女などによって当然変わってきますが、何歳でオリンピックを迎える事が出来るか、というのはアスリートには決める事が出来ない要素の一つであり、重要な要素でもあるように思います。

②各国から出られる人数が制限されている

そもそもまず、オリンピックに出るには記録などの基準を満たさなければなりませんし、国の代表にならなければなりません。例えば柔道のように1階級1人しか出られない競技もあります。ライバルとの力関係も五輪選出の大きな要素となります。例えばこの4年で世界大会を2勝づつした日本人柔道選手が2人いた場合、どうするのか?国的にはどちらがオリンピックに行ってもメダル確実なので、メダルの数そのものには影響しません。しかし、選手個人を見れば、二人とも「世界大会2勝」という価値をもっており、両選手とも素晴らしいのに、片方は「オリンピックメダリスト」というチャレンジすら出来ないわけです。こうした物語そのものがオリンピックの面白さなのかもしれませんが、見てる人や運営者には敗者の人生の保証をすることは出来ません。アスリートにとっては、オリンピアンであったかどうか、メダリストであったかどうかはその後の人生に大きな影響を与えます。

③4年間の肉体的、精神的コンディショニングづくり

何より難しいのはコンディショニングです。選手も人間ですから、良い時も悪い時もあります。オリンピックに向けて3年目まで好調だったのに、最後の年で調子を落としてオリンピックに行けなったという選手もいるでしょう。「そこを合わせていくのがオリンピック選手だ」と言われてしまえばそれまでですが・・・4年に1回しかない、失敗出来ない、というプレッシャーは相当なもののはずです。肉体的、精神的に4年に1回に合わせていくのは本当に難しいです。

④予期しないアクシデント

そして、予期しないアクシデントです。今回の桃田選手の交通事故などが良い例です。ケガや病気などももちろんいつ起こるか分かりません。これが毎年行われている世界選手権であれば、ケガを直して来年頑張ろう!と気持ちを切り替えやすいですが、4年後となると全然違います。

⑤出場した時の過剰なプレッシャーとメダリストとなった瞬間の過剰な注目

メディアでの取り扱い方も、各種目、オリンピックとなると世界大会とは全く違う扱いとなります。様々なプレッシャーが選手にのしかかってきます。更にはメダルでも取ろうものなら、国中がフィーバーとなります。もちろんそれはアスリートにとって素晴らしい経験となると思いますが、それが逆に出るケースもあります。

⑥引退のタイミング

どんなアスリートにも訪れるトップ活動からの引退。引き際は非常に難しい。4年の呪縛により、適切な引退のタイミングを逃してしまうケースもあるように思います。(そもそも適切な引退のタイミングの定義があるかどうかも分かりませんが・・・)それがその選手の残りの人生に影響を及ぼします。良く考えてみましょう。ほとんどのアスリートにとっては競技人生よりも残りの人生の方が長いのです。そして他人はほとんど誰も残りの人生に関して手助けしてくれるわけではありません。

⑦世界レベルで活動するにはお金がかかる

スポーツをするにはお金がかかります。それが世界レベルで戦おうと思えば尚更です。それがオリンピックを目指すとなると、更にお金がかかります。

ここに来て新型コロナウィルスが世界で猛威を振るっており、人間生活が混乱に陥っています。こんな時にスポーツなどしている場合ではありません。オリンピックに関して扱いが非常に難しいのは4年に1回だからです。毎年開催されている大会であれば、今年は非常時だしまあ仕方ない、とあきらめる事が出来ます。しかし、オリンピックは4年に1回です。

様々な状況を鑑みて判断しなければなりませんが、アスリートの事「だけ」を考えると中止や延期という言葉を軽々しく使えないなと思います。2020年7月に合わせてきた選手に、やっぱ来年ね、何て言えないです。もし、延期した場合、代表の顔触れは変わるでしょう。代表の顔触れが変われば笑う人も出来てきますが、当然涙する人も多くいるでしょう。それを考えると本当に切ないです。

という事を考えた時、この4年に1回の大きな大会というのは果たしてアスリートファーストなのか?という疑問にぶち当たります。この仕組みの中にアスリートが取り込まれていくことによるリスクの方がアスリートにとっては大きいのではないかと思い始めています。

1984年にLAでオリンピックの商業主義が始まりました。そして、44年後の2028年に再びLAでオリンピックが開催されます。果たして2032年のオリンピックの開催地に立候補するところが現れるのでしょうか?「商業主義オリンピック」は開催都市とアスリートへの負担やリスクが多く、持続可能性に疑問が残ります。

IOCはオリンピック及びスポーツの価値を高める努力を続けてきました。その努力のおかげで世界中でスポーツの価値が高まり、我々人類は多くの恩恵を受けてきました。しかし一方で様々な問題も生んできました。

新型コロナウィルスの感染拡大により、オリンピックの開催に関して議論されている今だからこそもう一度原点に立ち返ってオリンピックを開催する意義であったり、本当に4年に1度開催することの意味であったり、本当のアスリートファーストって何?などを議論してみるのも良いかもしれません。







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University of Wisconsin La Cross大学院卒。アスリートにトレーニングを教える仕事に従事。パーソナルトレーナーを経て、阪神タイガースで通訳や営業の仕事に携わる。2005年スポーツに特化した人材紹介の会社RIGHT STUFFを設立。