東京~大阪の乗り心地再現も可 超電導リニア実物使用「リニア走行試験装置」の仕組み
JR東海が小牧研究施設に「リニア走行試験装置」を設置。本物の超電導リニア車両1両と3分の2両で、7両編成全体のゆれを、またデータを入れれば東京~大阪間全線の乗り心地を再現できるそうです。この装置の目的と技術を解説します。
(この記事は2020年12月に会員限定記事として配信したものです。)
JR東海の研究施設に
JR東海が2020年12月4日(金)、同社の小牧研究施設に設置した「リニア走行試験装置」を報道陣へ公開しました。2020年3月6日から運用が開始されているもので、目的は以下の3つです。
▲JR東海が新たに導入した「リニア走行試験装置」(2020年12月4日、恵 知仁撮影)。
・さらなる超電導リニア技術のブラッシュアップや、建設・運営・保守の効率化を目指し、実際に車両を走行させることなく、模擬編成の走行試験を実施。
・乗り心地向上のための改良や、超電導磁石の耐久性検証などを、走行試験よりも効率的に短期間で実施。
・山梨実験線の設備では設定が困難な異常状態(地震や機器故障など)を模擬する試験を実施。
本物の超電導リニア車両を使用
「リニア走行試験装置」は、全長約66m、幅約47m、高さ約19mという大きな建物のなかにありました。
▲「リニア走行試験装置」がある実験棟(2020年12月4日、恵 知仁撮影)。
かつて山梨実験線で使っていた本物の超電導リニア車両を使っているのが特徴のひとつで、L0系改良型試験車の導入によって入れ替えになったL0系1両(L25-904)を、同じくかつてその実験線で使っていたMLX01(長さを3分の1にしたもの)で挟んだ「模擬編成」が組まれています。
▲「リニア走行試験装置」がある実験棟の概要(2020年12月4日、恵 知仁撮影)。
詳細は後述しますが、今回の公開ではこの実車体による「模擬編成」と「編成車両模擬装置」によって7両編成の状態がシミュレートされており、「模擬編成」は向かって左奥から3両目、4両目、5両目に相当する設定。なお「模擬編成」の長さは約40m、重量は約40トンだそうです。
「電磁加振装置」で浮上
「模擬編成」の台車の横に「電磁加振装置」が設けられています。外部から、その加振コイルへ誘導電流に相当する電流を流すことで、実際の走行時と同じ磁力(浮上力)を発生させ、車体を浮かせることが可能。なお、実際の超電導リニアにおいて誘導電流は、車両の走行によって側壁にある浮上・案内コイルへ自然に流れるものです。
▲「リニア走行試験装置」の「電磁加振装置」(2020年12月4日、恵 知仁撮影)。
また超電導リニアは、ガイドウェイ(軌道)の敷設誤差によって磁力の変化があり、それによって車両に振動が発生しますが、この磁力の差による揺れも「電磁加振装置」によって再現されます。
▲「電磁加振装置」のしくみ(2020年12月4日、恵 知仁撮影)。
山梨実験線のガイドウェイ敷設状況(敷設誤差)のデータを入力し、この装置を用いることで、山梨実験線走行時の揺れを再現できるそうです。
なので、たとえば中央新幹線全区間(東京~大阪)のデータを入力すれば、その乗り心地もこの「リニア走行試験装置」で確認できるとのこと。「リニア走行試験装置」は、全区間の所要時間である67分以上の連続運転もできるといいます。
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