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スケスケエレベーターで深さ83m「リニアの穴」に潜ってみた 中央新幹線名城非常口

JR東海が建設を進めているリニア中央新幹線。名古屋城近くに「地中連続壁工法」建設中である、深さ約83.5mもの「名城非常口」の底へ、スケスケのエレベーターに乗って降りてきました。

(この記事は2020年11月に会員限定記事として配信したものです。)

かつての名古屋城三之丸内に「リニアの穴」

 JR東海が進めている、リニア中央新幹線の工事。名古屋城の天守近くでも、「名城非常口」(名古屋市中区三の丸)の工事が進行中です。2020年11月12日(木)、その様子を取材してきました。

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▲リニア中央新幹線の名城非常口建設現場(2020年11月12日、恵 知仁撮影)。

 名城非常口があるのは、名古屋城天守の南南東。かつてその三之丸内だった、現在は愛知県警本部や名古屋法務局といった官公庁が立ち並ぶ地域の一角です。以前は名城東小公園だった場所とのこと。

全長およそ34.2kmの「第一中京圏トンネル」

 壁と木々で囲われた現場へ入ると、背の高いクレーンの下で、大きな穴が秋空に口をあけていました。内径およそ38m、底面上部までの深さが約83.5mの巨大な穴です。

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▲リニア中央新幹線の名城非常口建設現場(2020年11月12日、恵 知仁撮影)。

 リニア中央新幹線は、岐阜県内から約34.2kmの「第一中京圏トンネル」で大深度地下などを通り、愛知県に入って名古屋駅に到達します。このトンネルを造るための立坑が約5kmごとに設置され、名城非常口はそのひとつです。

両方向にシールドマシンが発進

 この名城非常口からシールドマシンが入れられ、まず品川方の「勝川非常口」(愛知県春日井市)まで第一中京圏トンネルを掘削。その後、シールドマシンは名城非常口へ戻り、今度は名古屋駅へ向けて第一中京圏トンネルを掘削します(第一中京圏トンネルは名城非常口以外からもシールドマシンを投入)。

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▲名城非常口の位置(2020年11月12日、恵 知仁撮影)。

 トンネルが完成し、営業運転が開始されたあと、こうした非常口はトンネル内の換気、異常時の避難、保守作業などに使用されます。

「地中連続壁工法」

 さて名城非常口の立坑は、まず上から見ると円周状の線になるように「地中連続壁」を深くまで設けたのち、その内側を掘っていく手順「地中連続壁工法」で造られます。

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▲名城非常口の役割(2020年11月12日、恵 知仁撮影)。

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▲名城非常口の役割(2020年11月12日、恵 知仁撮影)。

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▲名城非常口の構造(2020年11月12日、恵 知仁撮影)。

 名城非常口では2020年11月12日(木)現在、地中連続壁と掘削、底面のコンクリート打設を終え、内部の壁の構築に入っているそうです。

地下水の噴出などで遅れている工事 開業への影響は?

 なお名城非常口は、掘削中に地下水が噴出するなどして工事が約1年半遅れています。

 地下水は、くみ上げて、掘削途中の立坑の内部に貯水、そして地中の水を通す層に薬液を注入することで止水したそうで、工事の遅れは、中央新幹線全体の工期に影響を与えるものではない、とのこと。

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▲名城非常口で行われた止水工事の概要(2020年11月12日、恵 知仁撮影)。

 ちなみに勝川非常口などでは、圧縮空気で地下水の浸入を防ぎながら掘削し、地上で作成した「ケーソン」という函体を沈下させる「ニューマチックケーソン工法」を採用しているそうで、地下水の状況などによって「地中連続壁工法」と、工法を使い分けているそうです。

 2021年度初頭のシールドマシン発進が予定されている北品川非常口(東京都品川区)も、「地中連続壁工法」です。

工事現場に「金のシャチホコ」

 今回、名城非常口の工事現場へ入ると、「名古屋」らしいものもありました。小さな名古屋城と金鯱を飾った「門」です。

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