アジアのイメージ~日本美術の「東洋憧憬」 東京都庭園美術館

チケットが金券ショップで安かったからという理由で観に行ったのですが、予想外に結構良かったです。
そもそも関心が持てなかった理由として 、なぜ今頃このテーマをわざわざ持ってくるのだろうと思っていたからです。
日本の美術は大陸からの影響を受けながら、独自の文化も組み合わせて発展させてきました。あまり日本美術を知らない人でも、それくらいは知ってること。
なのに、なぜまた?というマンネリを感じてしまってました。

けれど、もう一つのアジアブームが近代にあったということは知らなかった!

という意味で面白かったです。
展覧会テーマの「アジア」や「東洋」という言葉の使い方は少し分かりづらいですが、、

まず、この展覧会の構成は、3つのテーマで構成されています。

Ⅰ アジアへの再起
古くは弥生時代頃から、中国大陸をはじめ、朝鮮半島などからの影響を受けていた日本。貴重なアジア諸国の美術工芸品を観ることができる人はごく一部に限られていました。
(例えば、王様のお墓への副葬品などは庶民だと絶対に見れない。)
そんな時代が長らく続いた後、ようやく1900年以降になってから一般の人々も観れるようになります。その頃にはすでに西欧諸国で学び、その影響を受けた作家も多く、そうした彼らの感性に、アジア諸国の古美術品は新鮮な驚きをもたらします。

Ⅱ 古典復帰
西欧と日本が混じり合った日本人作家たちが、その感性で捉えるアジア諸国の古美術品からインスピレーションを得て、さらに独自の表現を試みました。
アジアの古美術と、近代日本美術という対比によって作品を紹介し、日本人作家がどのようにこ美術品を解釈したかが分かる内容でした。
日本人作家の作品を観るとともに、アジアの古美術は今見てもお洒落な感じがしたことは新しい発見でした。
特に好きだった古美術は、《白釉鉄絵束蓮文瓶》中国・磁州窯 12世期。
装飾的な模様に惹かれたのですが、この磁州窯という窯元が官営ではなかったという点にも納得。
もう一つ、日本人作家の《草花鳥獣文小手箱》松田権六作 蒔絵 1919年。
鹿が走っているような模様の蒔絵なのですが、おそらくこの模様の参考にしたとされるのが紀元前から存在する狩猟文。
狩猟文の動物は必死に逃げていて、必死。
狩猟文を描いた目的も、狩がうまくいくようにといった祈りが込められていて、結構真剣差を感じるのですが、近代の日本美術で表現されるのは「走獣文」。
鹿が走ってて可愛いよね、といった感じ(怒られそうですが)なのが面白い!
もちろん、表現に対する真剣さはあるのですが、楽しむ感性に惹かれました。

Ⅲ 幻想のアジア
最後に、現代の作家たちがアジアの造形文化から今でも影響を受けている、という点にフォーカスして制作した作品の展示で終わります。


近代の日本人作家の視点を知ることで、アジアの古美術を新たな視点から感じ、楽しむことができる良いきっかけになりました!

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