~離婚するとき、「協議離婚」と「調停離婚」どちらがおすすめ?(1)~
神奈川県横浜市戸塚区の女性ライダー弁護士西村紀子です。
一人の弁護士として、一人のライダーとして、そして、一人の人間として、日々感じたり観察したりしたことで、皆様のお役に立つと思えることを、つぶやき発信していきます。
本日は、一人の弁護士として、
"離婚するとき、「協議離婚」と「調停離婚」どちらがおすすめ?"
です。
配偶者と離婚をしたい、というとき、スタート時点の方法としては、
「協議離婚」
「調停離婚」
があります。
もうひとつ、「裁判離婚」という訴訟での離婚がありますが、これは、基本的に調停離婚が成立しなかったときに行うもので、スタート時点では、上記の2つとなります。
「協議離婚」は、当事者間で話し合いをして離婚の条件も取り決めた上で、離婚届を二人でそれぞれ署名をした上で、その離婚届を役所に提出して行う方法です。この場合、離婚は、「届出」により成立します。
これに対して、「調停離婚」は、当事者が、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて話し合いを行い、家庭裁判所の調停手続で離婚を成立させる方法です。この場合、離婚は、調停成立時に成立し、役所の届出は、報告といった位置づけです。
この2つの方法のうち、どちらが良いのか?
というと、一長一短ではあります。
「協議離婚」は、離婚届を作成して役所に提出するだけで、離婚が成立します。
ですから、双方がすぐにでも離婚をしたい、という具合に急ぐ場合には、この方法が良いでしょう。
これに対して、家庭裁判所での調停手続で行う「調停離婚」では、それなりに時間がかかります。最初の期日は、調停申し立てから1ヶ月後、その後も、期日は、大体、1ヶ月ごとです(最近は、コロナのせいで、家庭裁判所も使える換気のいい部屋に限られるために、さらに、時間がかかることもあるようです)。
ですが、当事者間の間に、調停委員2名(男女1名ずつ)が入って、相互に話を聞いてまとめる方向にもっていってくれるため、当事者間で、条件等でもめている場合には、こちらのほうが良いのは間違いないところです。
このように、それぞれ一長一短があるわけですが、長い目でみたときに、どちらが良いか?と聞かれた場合。
お子さんがいる等して、養育費等それなりに取り決めをする必要がある一方で、どうしても急ぐ、というケースでない限り、「調停離婚」をおすすめしています。
理由は以下のとおりです。
当事者間の「協議離婚」を行う場合で、お子さんの養育費の支払い等が必要になってくる場合には、たいてい、離婚条件を話し合いでまとめた上で、それについて「公正証書」を公証役場で作成していることが多いのです。
ここで、「公正証書」とは、「公証人役場」で作成する公文書のこと。「公証人」は、法律家出身の人たちがなりますので、法律面がそれなりに担保され、「公正証書」は信頼性があります。
加えて、この「公正証書」で養育費等金銭債務を取り決めた場合には、「強制執行認諾条項」を入れておくことにより、強制執行ができることになります。
これは、裁判所で出される判決書や和解調書と同じ効力で、本来的な威力は同じなのです。
たしかに、この「公正証書」を作成しておくことは、離婚にあたって、最低限、必要です。
ですが、、、残念ながら、このせっかくの本来威力抜群の「公正証書」を、使いこなせていないことが多いのです。
ここで定められている離婚後の支払の約束はどういうものなのか。
実際にその通りに支払われないときにどうするか。
支払わなかったときにどうなってしまうのか。
こういった義務の重みを、当事者双方がしっかり共有して実感しないと、せっかく公正証書で養育費の金額を定めていても、「公正証書」での取り決めも、絵に描いた餅になってしまいます。
こういうケースの相談は、じつは、結構あるのです。
養育費をずっと支払ってもらえていない、といって、公正証書をもって、相談に見える。
“なぜ、こんなに長い間未払いになっているのですか?”
と聞くと、
相手方が、最初は払ってくれていたけれど、あるとき、苦しいから今月は勘弁してくれ、と言われ、それに応じたところから、段々、金額を減らされたりして、ぐだぐだになってきた、そして、支払われなくなった、
という具合です。
本来、最初に減額された時点で、強く出て、足りない分を翌月にでも補充させ、それがなされないならば、即、強制執行を検討するべきでしょう。
そのタイミングで強制執行することが得策かどうかは、具体的事情を把握しないと断言はできませんが、それをするべきかどうかは、最低限検討するべきです。そのために、すぐにでも、弁護士による法律相談なりを検討するべきでしょう。
ですが、当事者間だけで行う、公正証書を作っての「協議離婚」だと、残念ながら、なかなか、そこまでのイメージを持ちにくい、ということがあります。
「協議離婚」だと、手続上、ここまで見通した過程にならないため、こういう状況になってしまいがちなのだろう、と考えざるを得ないところです。
(続く)
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