見出し画像

バイク屋さん

昔、中古で買った249CCのネイキッド型バイクに乗っていた。4気筒で良く走り、見た目もカッコいい。初めてのバイクでもあって、盗まれないよう、U字ロックとキーカバーロックをかけていた。とても大事にしていた。

どこに行くにも、バイクを使っていたけど、駐輪場がないところへ行く時は、電車を使っていた。ある日、友人たちと一緒に朝まで語ろうという日があって、電車で行くことにした。バイクは自宅アパートに置いて行き、家に戻ったのは翌朝6時くらいだった。

家の前まで来て、何か違和感があった。いつもバイクは家の前に停めている。でも今はない?!
「どこかに停めてきた?」と考えるも、
「いや、置いていった、はず???」だけど。。。

人って自分の普段から予想できないことがあると、なかなか、その事を呑み込めないみたい。

バイクが置いてあるはずの場所をよくよくみると、バイクの配線のカスらしきものが、落ちている。

ということは?

「バイク、盗まれた!」

若干、バイクを盗まれたことを認識し始めたものの、混乱していた。とりあえず、家の中に入り、部屋の中をウロウロ。
「ええと、盗まれたってことは、ええと、何をすればいいんだ??」

そう、警察に電話をしなければ!

警察に電話して、担当の方と話していると、だんだんとバイクを盗まれたことが、実感に変わってきた。腹が立ってきた。警察の方は「もう見つからないと思ってた方がいいよ、残念だろうけど。。。」ってことだった。

そのあと、ヘルメットを眺めて「バイク本体がないと、こんなん役にたたねえ」とか、「配線切りやがった」とか、「いくらしたと思ってんだ、バイク欲しいなら、自分で買え!」とか、ふつふつと湧き上がる怒りを自分の中で消化することで、精一杯だった。

そこから1週間後。

警察から電話があった。何だろう?
聞くと、私のバイクがみつかったとのこと。ただ結構、ボロボロにされたみたい。配線を切って、持って行ったものの、エンジンをかけることが出来なかったみたいで、道に置いてあったそう。配線が切られ、左前のミラーが取れて傷もある状態らしい。

後日、警察にバイクを引き取りに行った。警察の方には聞いていたものの、実際に目の前にすると、思ったよりもボロボロで、悲しくなった。

もう一度乗れるようになるのだろうかと思いつつ、いつもお世話になっているバイク屋さんに電話をして、持っていくことに。もちろんエンジンがかからないので、手押しで持っていくのだが、その距離は2kmくらいはある。

途中、休み休み、バイク屋さんへ着いた時には、バイクで10分もかからないところ、1時間近くかかってしまった。

バイク屋さんに到着すると、バイクを盗まれて戻ってきたことを伝えていたせいか、愛車を押して来た私に気付き、事務所の扉を開けてくれた。

事務所で、盗まれて戻ってきて良かったものの、エンジンをかけるためにボロボロにされたこと、キーカバーロックのおかげでエンジンをかけられなかったけど、結局、知らない道に置きっぱなしにされたこと、とにかく、人のものを盗もうとするやつなんて許せない、とか怒りと不満とを話した。バイク屋さんは途中に相槌をうちつつ、聞いてくれていた。

そして「大変やったなあ。でも見つかってホンマ良かったなあ」と言いつつ、あったかい缶コーヒーを差し出してくれた。
「バイク、直るからな。これ飲んで行き。」

同じバイカーだから、気持ちを分かってくれたんだろう。その言葉に安心した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?