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#7 言葉は意味を織りなすのではなく、織りなす形そのものが意味である

#6から少し時間が空きましたが、「すがたかたち」の陰と陽を見ていきましょう。今日は「言葉の形」です。その前に、前回やった陰と陽の見分け方のもう少し整理します。

note生理学 (1)

形而下、見える世界での形姿のうち、①の縦線には遠心力(陰)が働いています。横線は求心力(陽)が支配しています。
②の三角形では、逆三角形の上部に遠心力がかかり、おむすび型は安定しています。縦線と横線が重なると十字形、正三角形が重なると六芒星形(ヘキサグラム)。十字は太陽のシンボルとして使われ、世界を四要素に分ける力を持ち、キリストが磔刑にかかる形でもあります。

六芒星形は相補するエネルギーの調和であり、創造のシンボル。ヘキサグラムの外側の頂点を結ぶと籠目紋 = ヘキサゴン、内側の頂点を結ぶと麻の葉紋ですね。
ちなみに五芒星形(ペンタグラム)は光の波の側面を表しています。波の側面とは循環するエネルギーの五つの動きで、陽へ、最大の陽、陰へ、最大の陰、バランスを表します。光の粒子の側面は、粒子の数で光の強さが決まります。

⑤のように管になっているものは、内がウツロで外側に広がっているので、▽(陰)で、人間の臓器でいうと、食道、胃袋、小腸、大腸といった消化器官はみんなこのチューブ型です。胆嚢や膀胱も袋型。
心臓は血液を受け入れる一大ターミナルとなっていて、発生学から見ても、先に血液の流れがあり、流れが集まって心臓器官を形成しています。心臓は、それがないと血液を送り出せないような灯油ポンプではなく、血液という生命システム全体の、中央集権の役割の果たしている臓器と言えます。その形は△(陽)です。
血液の詰まった形が心臓、腎臓、脾臓、膵臓細胞の詰まった形が膵臓、肝細胞の詰まった形が肝臓で、どれも△(陽)です。

東洋医学は形ではなくエネルギーの働きなので、陰陽は反対になります。
胃、小腸、大腸、胆嚢、膀胱のエネルギーラインを陽経、心臓、腎臓、脾臓、膵臓、肝臓のエネルギーラインを陰経と呼びます。

陰陽をどうみるかで混乱しないコツは、対象が見えるか見えないかではなく、「体」と「用」をわけることにあります。

体は、実体、主体、形、構造。すがたかたち。
用は、働き、機能、メカニズム。しかけしくみ。

太陽は、「体」では大きな球体と強い引力をもつ陽、「用」では燦々と明るいエネルギーを放射する陰の働きがあります。ウィキペディアの陰陽の説明は、体と用が混在しています。

陰陽のもつ「体」の側面と「用」の側面を見事に使って、森羅万象から心の世界までも写とろうしているのが言葉の世界です。

言葉の、母音を発声する声帯の形は、内から外へと同じ音素を切れ目なく出せる遠心性(陰)の声を実現します。
父声(一般に子音と呼ばれる音)を発声するためには、口蓋、歯、舌、唇を使って空気の流れをコントロールするので、遠心性の母声に対して、父声の複雑な口の形は求心性(陽)になります。

父声の音素 k, g, d, t, r, n, h, s, z, p, b, mは、空気や形のある三次元世界において単体では持続的な音にならず、母声との組み合わせによってはじめて聴き取れる声になります。

父声と母声の組み合わせで言葉は作られます。

犬が歩く。血は赤い。という文の中で、「犬」と「血」は体言、「歩く」と「赤い」は用言です。体言の動作や状態、性質を表したものが用言です。

用は働きなので、活用があります。活用をコントロールするのは母声です。
#2 の記事で使った「発生/発声の力学と身体との照応」をもう一度みてみましょう。
前は、真ん中の「ス」だけを純粋な中心として入れていました。今度は母声と父声の組み合わせを全部入れてみます。

FireShot Capture 128 - note生理学 - Google ドキュメント - docs.google.com

今の主流である五十音からみると、ずいぶんとっつきにくい配列に感じるでしょう。

意味を主体に、つまり音義で整理した五十音は、現代の「あ・かさたなはまやら・わ」の音図の他に、いろんな言霊学者の先生たちが整理した音図があります。

わたしは、響きに意味が先にあったのではなく、その響きを実現する口の構造と、その構造に流れる陰と陽の力が織りなすもの、その形そのものに意味があると考えます。
言葉は意味を織りなすのではなく、織りなす形そのものが意味である、というのが今日のタイトルです。

この表の出典は大石凝真素美の八咫鏡で、父声は発声の口腔部位と、それらが天火水地のどこに属するのかで順番が決まっています。

前に、紫式部が生きていた頃は源氏物語をこう読んでいただろうというコンピュータ解析の結果を聞いたことがあります。その時の、現代とは異なる微妙な音素の表現は、こちらに近いだろうと感じたので、わたしはこの音図を使っています。

用言の活用は、母声がコントロールします。
分かりやすいように、表のタテヨコを入れ替えて、母声を柱から段にし、ます。「ゑ」もややこしいので同音の「え」にします。

FireShot Capture 125 - note生理学 - Google ドキュメント - docs.google.com

「血は赤い」の用言「赤い」は形容詞で、母声のコントロールは動詞とは変わり、う段が連用形になります。
 赤い  :終止形/連体形 
 赤けれ :仮定形
 赤く :連用形
 赤かっ(かり) :連用形 
 赤かろ(から): 未然形

文法に興味がない人にとってはなんともおもしろくないでしょうが、言葉が意味を説明する世界ではなく、言葉が創造行為をを行う領域においては、これ以上に大切な法則はありません。

天地を分け、国を生み、体を編み、意識を内から外へ広げ、感じて動く人間の働き全てを与えたのは、母声・父声の響きと、その流れの制御です。


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