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ドーナツでヴィラソー円

友人の三好潤一さんが、有名な美術造形作家である戸村浩氏の「ワインキューブ」に着想を得て、透明なドーナツ型のグラスにワインを注いで傾けると「ヴィラソーの円」が出る「ワイントーラス」なるものを思いついたと書かれているのを見て、なるほどこれは面白いと。

戸村浩(1938-)氏は、「MOVE FORM」等、多数の幾何学造形を発明した人物として有名ですが、その著作「基本形態の構造―立方体はブドウ酒の味がする」(1974年 美術出版社)において、立方体を同じ大きさ形の2つの物体に平面で切断する方法について考える課題において、透明なプラスチックの板で作った立方体の中にワインを丁度半分だけ入れて傾けることで正六角形を作ったという学生時代のエピソードを残している(実際の切断の仕方は無限大通りある)。

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ヴィラソーの円とは、この立方体の切断のトーラスバージョンに出てくる解の一つに現れる円のことである。ドーナツ型(トーラス)を切断して、切断面に「円」が現れるやりかたは、ドーナツを輪切りにして2つの小円を作る方法と、水平に半分にすることで、外側の大円と内側の小円を作る方法がすぐに思いつくが、もう一つ特殊な解がある。それが「ヴィラソーの円」であり、穴にそって斜めに切ることで、丁度円ができる切り方が存在する。

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https://www.youtube.com/watch?v=ve1M-0gPLao

より作成。

愛知県立春日井高等学校の堀部和経先生によると、ヴィラソーの円の発見は、Antonie Joseph Francois Yvon Villarceau(1813-1883)が1848年に発見したとされていますが、ほぼ同じ頃に長谷川弘,内田久命の「算法求積通考」(天保15年=弘化元年=1844年)の39番の問題に記載があるとのこと。

http://horibe.jp/PDFBOX/cut_torus.pdf

三好さんのアイディアを実現するには、まず透明のガラスやプラスチックなどでトーラス(ドーナツ型)を作り、その丁度半分を満たす液体等を入れて適当な確度に傾ける必要があるが、透明な中空のドーナツ型を作るのはなかなか難しそう。ガラス細工で発注すればかなり高価になりそうだし、プラスチックでは探せばあるかもしれないがなかなか思いつかない。3Dプリンタで透明樹脂で出力した後、表面処理をすればできるかもしれないが、すぐには作れそうにないので、とりあえず近所のミスドでドーナツを買ってきて切ってみることにした。ドーナツでヴィラソーの円を作ることは、龍谷大学理工学部 山岸義和先生による「江戸期の数学を授業に生かす」という教員免許状更新講習で行われているようだ。

2017年 龍谷大学 教員免許状更新講習募集要項

http://www.ryukoku.ac.jp/faculty/kyoshoku/images/youkou_2017.pdf

購入したのは、形状がトーラスに最も近そうな、ハニーディップチョコリングココナッツチョコレート、の三種。チョコレートではなくココナッツチョコレートにしたのは、なんとなくチョコレートはドーナツの内側がいびつになっているような気がしたから。

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最近、ダイソーの包丁を8時間も研いでいる動画を見た影響で、一応家の包丁を300番と1000番の砥石で研いだ後、カットに挑戦!その結果がこちら。

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なんとなく、2つの円らしきものは見えています。

ドーナツの大円と小円の比が2:1の場合、お互いの中心をお互いの円周が通る形となり、それは通称「ヴェシカ・パイシス」や「ヌースコンストラクション」と呼ばれ、スピリチャルな神聖幾何学の世界で特別視されているようですね。

円が重なるモチーフは、マスターカード、グッチ、シャネルなどのロゴブランドにも多く使われていますが、2つのものが重なる様は、人間に様々なものを思い起こさせるようです。

面白かったという方は、ミスド大好きな妻のためにドーナツ代300円サポートお願いします。

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