見出し画像

インソールの考え方

インソールとは

インソールとは、広い意味では靴の中敷きです。

一方、医療的な治療を目的としたインソールは、中敷きに凹凸をつけ、足の形(踵骨、アーチ)や使い方(足趾など)に変化を与えるものです。このようなインソールを一般に機能性インソールと言います。

足の各アーチが低下すると衝撃吸収能力の低下や、異常足底圧の発生により障害を起こす場合があります。小さなストレスの繰り返しが、疼痛などの症状を引き起こします。

また、足の異常が体全体のバランスを崩し、膝痛や腰痛の原因となる場合もあります。


インソールによる足部の制御によって、身体重心、足圧中心、床反力ベクトルを変化させ、姿勢や歩行に影響を及ぼし、症状を改善します。

画像7

インソールの効果

インソールには下記の効果があります。

・各アーチの支持
・足底圧の分散
・荷重線の矯正
・側方動揺の制限
・衝撃吸収作用
・脚長差の補正
・除圧

これらの効果により、疼痛軽減や効率的な姿勢・歩行の獲得、スポーツであればパフォーマンスの向上などが期待できます。

インソールの種類


■機能性インソールとその他

100円均やホームセンターなどに行くと、沢山の種類のインソールが売られていますよね。保温用、防臭用、身長を高く見せるためのもの、クッション性を高める目的のものなどが多いです。

画像9

使用者の希望に合ったインソールを気軽に購入できるようになっています。しかし、各アーチの保持効果がないため、機能性インソールとは区別し、ここから先は、機能性インソールについての分類を書いていきたいと思います。

■機能性インソールの分類

機能性インソールは、その作成方法から
①レディメイド
②カスタムメイド
③オーダーメイド

の3つに大きく分類されます。それぞれ詳しく、見ていきましょう。


①レディメイド

レディメイドは既に形が出来上がっている、既製品です。アーチサポート特化型(複数アーチorシングルアーチ)とクッション性特化型に大きく分けられます。メーカーはありすぎるのですが、SIDASZAMSTソルボDSISAshimaruなどはスポーツ用品店や靴屋さんでよく見るのと、店員さん情報でよく売れているメーカーとのことです。


②カスタムメイド

カスタムメイドは、大きく2種類あります。

1つ目は、店舗でインソールを専用ヒーターで温め、その上に立つことで、本人の足の形態に合わせて成形するインソールです。メーカーとしてはSIDASCustomBalanceなどがあり、設備のあるスポーツ用品店やフィットネスジムなどで購入できます。

2つ目は、購入したインソールの中に、カスタムキットが入っており、説明書を読みながら、自分でカスタムしていくものです(ReaLineインソール)。


③オーダーメイド

オーダーメイドでは、静的評価(足型、足底圧など)から作成する方法と動的評価(歩行など)から作成する方法があります。

この両方の評価を用いる場合もあり、その考え方の違いやインソールに使用する素材の違い、作成方法(グラインダーの使用など)の違いなどによって、様々な団体・メーカーが存在しています(入谷式インソールDYMOCOmysoleSIDASなど)。

画像9


団体ごとに中心となる職種も医師、理学療法士、義士装具士、トレーナーなど様々です。しかしながら、踵骨アライメントや足の3つのアーチが重要であるという認識は概ね共通しています。

整形外科などで医療保険で作成する場合、医師の指示のもと、義士装具士が作成します。病院内でも保険外での作成の場合や整骨院などでの作成の場合、価格等は各々の施設によります。

■レディメイドとオーダーメイドの考え方

目的に合ったインソールを選ぶことができれば、レディメイドの商品でも十分効果が得られると思います。しかし、足の形は人それぞれであり、もっと言えば同じ人でも右足と左足では形が異なります。足部に変形があるとなおさらです。

その形の違う足のアーチ踵骨を適切にサポート・誘導することを考えれば、左右対称のレディメイドでは限界があると思います。何を目的にインソールを使用するかにもよりますが、特に疼痛などの症状がある場合は、オーダーメイドの方が望ましいです。

これらのインソールの適応・比較・選び方などは“インソールの適応と比較”で詳しく説明しています。


■サポートする機能とインソールの種類

フットファンクションの項目でも説明されているように、踵骨アライメント(距骨下関節)や足の3つのアーチ(内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチ)は姿勢や歩行に重要な役割を果たします。これらのどこをサポートするかでインソールの種類も分けられます(下図参照)。

コメント 2019-12-28 185850

コメント 2020-01-29 191127


インソールの構造


機能性インソールは大きく分けて
①表面材 ②クッション材 ③ベース材 ④底材
の4層からなります。


①表面材
クッション材の妨げにならないように伸縮性のあるのもが多い。横方向の動きが多いスポーツ(バスケ、サッカー)用のインソールでは、滑りにくい素材を使用しています。


②クッション材
足底圧分散、衝撃吸収のための緩衝材。足や荷重線の矯正を優先したい場合は薄いものを選ぶ


③ベース材(狭義のインソール)
足に変化を起こすための基礎となる部分。個々の足に合わせて作成することが望ましい。
オーダーメイドの場合、ベース材単独でインソールと呼ぶこともある。


④底材
インソールの耐久性を高めたい場合に使用する。また、前足部に硬い素材の底材を使用し、踏み返しを制限することもある。

オーダーメイドインソールの中でも、グラインダーでベース材を削る作成方法の場合は、①②だけの中敷きにベース材を作成し、底面は補強のテープを使うことが多いです。

画像7

インソールと靴


インソールの効果を十分に発揮するためには、踵骨アライメントの保持、靴内で足が滑らないことが重要となります。

靴選びでは最低限、以下の条件は満たしたいところです。

・ヒモやマジックバンドで調整、固定できる
・踵を保持できる月形しんが入っている
・中敷きが取り外せる

ですので、パンプスやハイヒールなどはインソールに適していません。


しかしながら、臨床的にはどうしても靴が変えられないということも多々あります。

その中でどうするか?というのは、インソールを作成する側としては逆に燃えます(笑)が、症状や機能の改善を考えるとやはり適切な靴を選ぶ方が近道です。

画像2

インソールのリスク

インソールは姿勢や歩行に影響を与えますので、場合によっては(高すぎるアーチサポート、不適切な荷重線の矯正により)、対象者に痛みを生じさせるリスクもあります。

特にバランス能力の低下した高齢者では、荷重線を大きく変えてしまうと、例えそれが正常歩行に近づく誘導であっても、その変化に対応できず、痛み歩きにくさなどに繋がってしまうこともあります。

ですので、最低限の歩行分析やフォローアップ、事前説明(急に長い距離を歩かない、違和感が出たら使用を中止する、など)が必要となります。また、長く使用した場合、インソールのへたりが生じ、効果が十分に得られなくなる可能性もあります。


まとめ

インソールを考える場合、足(フットファンクション)、靴、歩行の知識は最低限必要です。そして、知識があることと、実際の患者さんで良い変化を出すことにも雲泥の差があります。

トライ&エラーが大量に必要です。一緒に諦めずに、トライし続けていきましょう!!

その分、適切なインソールが処方されれば、即時的な症状や歩行の変化を起こすことが可能です。また歩行を変えられるということは、治療時間外にも影響を与えられ、その後の治療もスムーズに進みやすいです。

そのような点でもインソールは効果的な治療手段と言えると思います。本項目でインソールの大枠が理解していただけたら光栄です。最後まで読んで頂きありがとうございました。

画像8






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?