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自宅の屋根裏、2階天井の断熱・蓄熱施工

先週日本から戻ってきたら、一人親方で商売する近所の大工・木造建築エンジニアのマティアスが、私たちの自宅の屋根裏、2階天井の断熱・蓄熱施工を1/3くらい終えたところだった。翌日から私も作業を手伝った。サウナのような屋根裏で2人とも汗だくになっての作業。夏にやるもんじゃない。当初は冬にやる予定だったが、双方のいろんな事情が重なって夏まで延びてしまった。でも汗をかいて体を動かしたから、おかげで時差ボケも2日くらいで解消した。

僕の年齢とほぼ同じ、築52年の家。天井にグラスウールの薄い断熱材が6cm厚で敷いてあったが、このところの夏の猛暑時は、2階では、午後3時くらいから、もわっと熱気がこもって不快だった。扇風機でなんとか乗り切っていたが、それも限界があり、エアコンを入れた方がいいかな、とも思っていた。

屋根裏は物置として使っているので、荷物をスライドさせながらの作業。マティアスがガスマスクと長袖シャツの装備でパーティクルボードを外してグラスウールを取り出し、袋に密閉(この間、防護装備を持っていない僕は、健康上危険なので立ち入り禁止)。それが終わったら、僕が箒で断熱材を入れる梁と梁の間の枠を掃除。その間、マティアスは160mm厚の木質断熱材を丸鋸で枠の大きさに合わせて切断。それを僕が埋め込んでいく。その間にマティアスは18mm厚のOSBボードを切断し、それを2人で木質断熱材を入れ込んだ箇所に敷いて、ビスで固定。

ビフォワーとアフターの断熱・蓄熱性能を紹介したい。マティアスが使っている専門のオンライン計算ツールで導き出した値だ。

ビフォアー(6cmのグラスウールが入った天井):

  • 断熱性能はU値=0.5W/m2K

  • 蓄熱容量は22kJ/m2K

  • 位相シフト:5.5時間

アフター(16cmの木質断熱材が入った天井):

  • 断熱性能はU値=0.24W/m2K

  • 蓄熱容量は36kJ/m2K

  • 位相シフト:9.3時間

天井の断熱性能は2倍になるので、冬の暖房費が節約できることが期待できるが、蓄熱性能も高い木質なので、夏のヒート抑制にもなる。2日前に断熱材を敷き終わって、日中30度を超える真夏日を過ごしたが、2階にもわっとした熱気が生じない。扇風機なしでも過ごせる。木質断熱材の高い蓄熱容量のおかげで位相シフト(外部の熱が内部に侵入するまでの時間)が5.5時間から9.3時間になったからだ。

グラスウールやロックウールでなく木質系を選んだ理由は、健康や夏対策のほかに、木質素材の高い調湿性能もあった。気密が確保されていない屋根裏では、湿気による結露の問題がある。木質系は、その高い吸湿と放湿機能で、結露の問題を抑制することができる。

今回のうちの現場では、1つ幸運なアドリブがあった。隣の家で、時を同じくして屋根の増改築工事が始まり、大きなクレーンが設置された。うちまで余裕で届く。僕は隣の家主と、マティアスは担当の工務店とすぐに交渉。クレーンを一緒に使わせてもらえることになった。共同で使えるのだったら、2台のクレーンを設置する必要はない。

おまけとして、両サイドの妻壁に小さな木製サッシも取り付けた。断熱作業の途中でマティアスが、「通気窓があれば、屋根裏の熱気をある程度、逃すことができる」といい、その場でスマホを使って中古建材を検索した。近くでちょうどいい木製ダブルガラスのサッシが2つ、40ユーロ(約7000円)で売りに出されていた。僕はすぐに提供者に連絡し、その日のうちに引き取りに行き、マティアスが取り付けてくれた。一人親方の彼だから、このようなこともフレキシブルにできる。彼に頼んでよかった。素人の施主が一緒に働くことも喜んでくれるし。

これからも彼にはお世話になる。来年は、2階の壁の断熱と窓の取り替えを考えている。もちろんまた木質系で行うつもりだ。銀行にできるだけ頼らずに、家計の状況をみながら、無理のないステップバイステップのリフォーム。そんな小さな事業に対応できるニッチな商売をする1人親方は貴重な存在。



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