「さんまのお笑い向上委員会」は面白い

 明石家さんま。「お笑いBIG3」と称される、国民的お笑いスターの1人だが、何を隠そう、筆者はこれまで、この方が出演する番組をあまり見たことがない。もちろんゼロというわけではないが、その頻度は極めて低い。「踊る!さんま御殿!!」の放送を1時間キチンと視聴したことは、たぶん一度もないと思う。

 もちろんお笑い好きなので、嫌いというわけではないが、かといって滅茶苦茶好きというわけでもない。あえて言えば、こちらの好みにあまりハマらなかったという感じだ。筆者がかつてよく見ていたのは、そんなさんまさんと双璧をなしていた、もう一人の方。さんまさんと同い年にして同期、そして同様にお笑い界のスターとして君臨した、島田紳助さんの方になる。

 いわゆる「さんま・紳助」と呼ばれていた時代だが、筆者が頻繁に目にしていたのは、圧倒的に紳助さんの方だった。割合で言えば、1対9以上の関係。「クイズ!ヘキサゴンII」や「行列のできる法律相談所」などをよく見ていた一方、さんまさんが出演する番組を当時からほぼ見ていなかった。

 そのため、今年に入ってから視聴し始めた「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ)で、筆者はほぼ初めて、さんまさんをしっかりと見ることになっている。これまでぼんやりとしか知らなかったその芸風を、いまになってようやく噛みしめているというわけだ。

 現在66歳。だが、実際にはそれよりも10歳は若く見える。それは見た目というよりも、むしろ中身の方というべきだろう。お笑い界からサッカー界まで、その持っている情報の量にまず驚かされる。アンテナが広いというか、好奇心旺盛というか、年長者によく見るような“時代遅れ感”をほぼ感じさせないのだ。知名度が低い芸人の名前もかなりよく知っている。ダウンタウン・浜田雅功さんと比較すれば、その違いは鮮明になる。浜田さんが知らないような(忘れた?)芸人でも、さんまさんならば、その名前や代表ギャグなどをスッと言えそうな感じがするのだ。こう言ってはなんだが、浜田さんには薄い、芸人としての最新モードを、さんまさんは現在もなお保っているという感じに見える。

 なにより「さんまのお笑い向上委員会」という番組そのものが、時代の先端を行くような攻めた内容の放送をしている。さんまさんから古臭いムードを感じない大きな理由のひとつだ。

 賞レースで活躍した芸人や今が旬の芸人などを、比較的にすぐ呼びつけ、その素顔を暴こうとする。最近よく見る番組のパターンはこれになる。例えば、昨年のM-1で優勝したマヂカルラブリーを、優勝してから1ヶ月にも満たない今年の1月には、すでにM-1王者凱旋という感じの企画で出演させている。これまで目立っていなかった村上(マヂカルラブリー)にスポットを当てたシーンを見たのも、この番組が初めてだったと思う。

 ゲストの顔ぶれにも、番組らしさはよく表れている。今田耕司、蛍原徹、堀内健といった大物芸人たちを頻繁にひな壇に呼ぶことができるのは、それより上の芸人がMCの場合に限られる。さんまさんがMCを務めていなければ、今田さんがこうした番組に出演することはありえないのだ。

 もうひとつ言えば、そのひな壇芸人のチョイスが面白い。吉本系から非吉本系まで、とてもカラフルに見える。今田さんからほぼ無名の芸人まで、立場が大きく異なる芸人たちが同じひな壇に座っている光景を目にするだけでワクワクする。

 さらに、そのセレクトセンスも独特だ。ぼる塾・きりやはるかがピンでテレビに出演する姿を見たのは、この番組が初。田辺さんやあんりならともかく、きりやはるかを単独で呼ぶとは。失礼ながら、かなりの度胸がなければできないキャスティングだと思う。最近見た中では、高木ひとみ○(ぽんぽこ)も強烈だった。今後ブレイクするかはわからないが、こうした番組にはうまくハマっているという感じだった。ソニー所属の元自衛隊芸人・やす子も、なかなかいい活躍を見せている。多少芸が荒い、こうしたタイプの女性芸人でもうまく目立たせることができるのが、この番組の強みなのだと思う。

 「さんまのお笑い向上委員会」はなかなかいい。最近のお笑い界をリードするような、面白い独自のスタイルを持っている。明石家さんまという超大物芸人MCの番組ながら、良い意味での軽さがある。思いのほか番組がフレッシュで、なおかつ笑いがわかりやすい。さんまさんの芸風と番組の相性も悪くない。満足度の高い、注目に値する番組だと思う。

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