水曜日のダウンタウンを批評する(10月20日放送)。ラヴィット!のよいところを引き出しながらも、番組を面白くさせた離れ業

 「生放送の裏で色々やってましたSP」と題して放送された、昨日の水曜日のダウンタウン。

 放送前、筆者のモチベーションは、いつにも増して高かった。「結構な高確率で面白い放送になる」。企画の内容や出演者などを見て、期待に胸を膨らませていた。

 とはいえ、期待が裏切られることは、この世界では日常茶飯事だ。終わってみれば、前評判を上回るような満足感を得られなかった、というのはよくあること。いくら水曜日のダウンタウンといえども、十分あり得る話だ。だが、そうした心配は杞憂に終わった。こちらの読みは、良い意味で見事に外れた。

 放送は滅茶苦茶、面白かった。どこで笑いが起きるかわからない、目が離せない内容になった。特に面白かったのが、前半のラヴィット!に関するドッキリ企画だ。実際のラヴィット!の放送を見ただけではよくわからなかった裏側の仕掛けに、他では味わえないスリルとドラマ性を感じることができた。

 ラヴィット!のゲストはもちろん、MCの川島にも気付かれないドッキリを仕掛けるとは。しかも生放送で、だ。生放送は何が起きるかわからない。収録のように不要な部分をカットしたり、途中で内容を変えたりすることはできない。思い切って言えば、ちゃんと面白くなるかどうかもわからないのだ。そうした十分すぎるリスクを背負い、それで結果を残せば、番組は誰の目にも面白いものになる。“これくらいだろう”と勝手にイメージしていた娯楽度のマックス値が高まること請け合いだ。

 その企画力と実行力には恐れ入るばかりだ。水曜日のダウンタウンには、テレビのバラエティ番組が面白いコンテンツであることを改めて世の中に知らしめる潜在的な力がある。リスク覚悟で企画を採用するということは、バラエティの分野にも大きく貢献することになる。

 この日の水曜日のダウンタウンを見た人は、ラヴィット!のことをどう思っただろうか。普段ラヴィット!を見ていない人でも、「ラヴィット!面白そうだな」、「今度一度見てみようか」などと思った人が、たぶん多かったのではないか。この日の水曜日のダウンタウンは、ラヴィット!の大きな宣伝にもなっていたのだ。

 決して番組の肩を持つわけではないが、ラヴィット!は見ていて普通に面白い。平日の週5回、2時間生放送される番組の内容としては、満足度はかなり高い。MCの川島の力も大きいが、レギュラーやゲストの顔ぶれにも良いメンバーが揃っている。お笑い好きにとっては、一見に値する番組であることはたしかだ。

 ワイドショーの「グッとラック」から、情報バラエティの「ラヴィット!」へ。この変更は成功だったと思う。裏番組のワイドショーとは180度異なる、独自のポジションを確立した。始まってまだ半年だが、そう簡単に終わりそうな匂いは感じない。安定感もある。このハイテンションがどれほど続くかはわからないが、いまのところは心配無用だと思う。

 話を水曜日のダウンタウンに戻せば、後半に放送されたキングオブコントの企画に関しては、先週の予告では明かされなかった別企画が存在していた。僕が面白いと感じたのは、ダイアン・津田篤宏にスポットを当てた、こちらのシークレットだった企画の方だ。

 この時紹介された、『津田が昨年のM-1生放送中、自身のYouTubeチャンネルで「どうぶつの森」の生配信を行っていた』という話を、筆者は全く知らなかった。そのため、このエピソードを番組で知った瞬間、思わず、この日一番の笑い声をあげてしまった。

 津田にスポットを当てた、この「隠し味」の効果は抜群だった。この日の放送が、僕の期待を上回った理由でもある。放送前のハードルは高かったが、それを見事に超えてくれた。

 この日の放送に力が入っていたことは、パネラーの顔ぶれからも見て取れた。ビビる大木、いとうあさこ、小峠英二(バイきんぐ)。パネラー全員を、ベテラン芸人の実力者で固めていたからだ。

 ラヴィット!のレギュラーでもあるビビる大木と、キングオブコントの審査員を務めたバイきんぐ・小峠。この2人を呼んだ理由はわかるが、いとうあさこは、このどちらにも特段関わりはない。いとうあさこの席は、乱暴に言えば、誰でもよかったはずだ。今回の企画には(面白い)自信がある。だからこそ、アイドルではなく、鋭いコメントが期待できるベテラン芸人のいとうあさこをあえて呼んだ。そうした見方もできると思う。

 さらに言うならば、ドッキリ企画が行われたラヴィット!が生放送されたのは、10月13日だ。そのドッキリ企画のVTRを含む、水曜日のダウンタウンが放送されたのが10月20日。つまり、たった1週間の間に、VTRの編集、ナレーション撮り、スタジオ収録とその編集、この全てが行われたことになる。生放送が話題になった、その熱が冷めないうちになんとかオンエアしたい。この素早い対応に、番組スタッフの熱意を感じたのは筆者だけだろうか。

 ラヴィット!の良さも引き出しながら、そしてキングオブコントも利用しながら、面白い放送を披露した水曜日のダウンタウン。この番組に対してこれまで以上に、僕は尊敬の念を抱いたのだった。

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