ガヤ芸人の生みの親。FUJIWARA・藤本さんがそれに相応しい扱いを受けていないのはなぜか

 時代が動いているのか。劇団ひとり、オードリー・若林、麒麟・川島、千鳥、かまいたち、霜降り明星などが、ゴールデンタイムの番組で司会を務める姿を見て思う。高齢化著しい日本のお笑い界は、徐々に変わりつつあるような雰囲気を感じる。

 爆笑問題、矢部浩之(ナインティナイン)、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)といった大物芸人たちが、後輩の冠番組にゲストとして出演する姿を見ても、同じような印象を受ける。

 ここ何年か動きそうになかったモノが動き始めたような感じだ。お笑い界の勢力図が静かに変わりつつある、そうしたムードが確実にある。

 ダウンタウンや内村光良さんなど、一部のビッグスター芸人を除けば、その下はほぼ団子状態。10年後、トップに位置する芸人は誰なのか。今から早送りして見てみたい気持ちだ。

 こうした群雄割拠のお笑い界の中で、特殊というか、その実力が世間に伝わりきっていない芸人もいる。実績に見合うような評価を受けていない芸人と言ってもいい。個人的に、もう少し讃えられなければならないと思う芸人だ。

 芸歴は30年以上。テレビでもコンスタントに活躍し続けているにもかかわらず、ポジションは決して高くはない。代表的な冠番組もこれといって特にない、注目度の低い実力派芸人とは。

 吉本興業所属のベテランコンビ、FUJIWARAの2人は、地味ではあるが、これまでしっかりと活躍し続けている。50代でここまで活躍し続けるコンビは決して多くない。というより、50代でコンビとして活動している芸人がそもそも少ない。年齢を重ねるほど、それぞれが個人での活動を中心とするコンビの方が、どちらかといえば多い印象だ。

 「リンカーン」、「クイズ!ヘキサゴンII」、「アメトーーク」、「ロンドンハーツ」、「水曜日のダウンタウン」、「クイズ☆正解は一年後」……。これらの番組でも、彼らはその持ち味を存分に発揮してきた。同年代の芸人と比べても、能力的に遜色ない。にもかかわらず、冠番組や司会など、売れた芸人が辿り着く「向こう側」へ行くことはなかった。

 その実力に対して、決して高くないポジションに収まり続けるFUJIWARA。だが裏を返せば、それこそが彼らの特徴だとも言える。持ち味を発揮しやすい立ち位置といってもいい。現在のポジションでここまで安定した成果を出し続けることすら、従来の芸人にとっては難しいことなのだ。

 ポジションが高くなればなるほど、思い切ったことは言いづらくなる。プレッシャーもそれなりに掛かってくる。今の立ち位置の方が、FUJIWARAは気楽にのびのびと仕事ができると感じているのかもしれない。

 FUJIWARAのツッコミ担当・藤本敏史さんは、自身の現状についてどう思っているのか。個人的には興味を覚える。筆者の意見を言えば、この人の実力は、有吉さんや山崎さん、矢作さんや設楽さんなどと比べても、決して劣るものではないと思っている。世間的な評価が彼らほど高くないことに憤りを覚えるほどだ。

 なんと言っても、「ガヤ芸人」というポジションを確立させた芸人だ。ひな壇の上段から面白い言葉を吐く芸人はこれまでいたが、それらを「ガヤ芸人」と称し、自らその先頭に立ったのは藤本さんが最初になる。今ではバラエティ番組に居て当たり前の存在となっているが、その存在を自ら大きな声で唱えたのは、間違いなく藤本さんだろう。

 その芸はガヤだけにはとどまらない。大喜利も巧ければ、モノマネもできる。中でも一番の発明と言いたくなるのは、少し古い物事をフィーチャーした、いわゆる「パクリ芸」だ。昔、ある程度流行った人物や出来事であれば、彼にとっては良いネタになる。コウメ太夫やゴー☆ジャスなど、彼がピックアップした芸人の露出が、その後地味に増えるところもまた面白い。

 最近では、アメトーークの「サブMC席」が一番のハマり役に見える。蛍原さんの隣からひな壇に座る後輩芸人に対して、鋭いツッコミを入れる姿が個人的には光って見える。

 芸能界に詳しいその知識を活かしたコメント力や、周りのスキャンダルな話題を笑いに変える力など、その魅力は枚挙にいとまがない。この人がいれば面白くなるという空気を持っているのだ。

 これほどの実力を持ちながら、いわゆるMC系の仕事が少ないことが不思議なくらいだ。ひな壇に座る芸人の中では、その実力は頭一つ抜きん出ている。大きな仕事のオファーも全くないとは思わないが、MC系よりもこちらの方がおそらく水に合っているのだろう。

 賞レースやネタ番組ではあまり見かけなかったためか、その評価は実力に比べると低く見える。誰かが表立って称賛している姿を見ることもほとんどない。判官贔屓のこちらの心を擽る、あえてここで取り上げたくなる存在なのだ。

 個人的には「クイズ☆正解は一年後」での活躍を毎年楽しみにしている。その放送が今からでも待ち遠しいのだ。

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