アメトーーク“同期芸人”企画は面白い

 この放送回が面白くなりそうなことを予想するのは簡単だった。出演メンバーの顔ぶれを見れば一目瞭然。いまをときめく実力者が勢揃いしていると言っても過言ではない。6月8日に放送されたアメトーーク「霜降り同期芸人」の話だ。

 アメトーークで定期的に放送されるこの”同期芸人”企画。これまでにも何度か行われているこの企画だが、筆者の感想を率直に言えば「ハズレはない」。どの同期芸人企画も大抵は面白くなる。今回の「霜降り同期芸人」はもちろん、昨年放送された「見取り図同期芸人」なども、少なからず通常レベルより面白かったという印象が残る。

 「NSC11期芸人」、「NSC8期生」、「キングコング同期芸人」、「ロンブー同期芸人」、「オリラジ同期芸人」、「ハリセンボン同期芸人」……。さらにこれ以外にもいくつか行われたこの同期芸人企画だが、そのなかでも筆者の印象に最も残るものを挙げよと言われれば、真っ先に思い浮かぶものがひとつある。2009年に放送された「泥の97年デビュー組芸人」。筆者がアメトーークで最初に目にした同期芸人企画でもあるのだが、後に2度(2010年と2011年にも同じ企画を行った)も放送されたこのシリーズが、とりわけ僕の記憶には深く残っている。なぜ印象に強く残ったのかといえば、出演者の多くが知名度の低いメンバーで固められていたからだ。ガリットチュウ、あべこうじ、ハローバイバイ金成(当時)、Bコース、カリカなど、ゲストは当時(現在もだが)ほとんどテレビには出演していない、いわば燻っている芸人ばかりだった。なのになぜここであえて述べたくなったかといえば、その放送が滅茶苦茶面白かったからだ。全国的に有名な芸人は誰一人いなかったにも関わらず、彼らの口から出てくるエピソードは面白さで弾けまくっていた。メンバーはお互いが同期で深い関わりがあったということもあるが、それを差し引いても面白すぎた。もう一度見たいアメトーークの同期芸人企画はといえば、筆者は迷わずこの「泥の97年デビュー組芸人」を挙げる。この時の何組かはすでに解散したり、あるいは引退したりしているが、アメトーークCLUBの過去のクラシック版でいつか再び目にすることができないものかと、実は密かに期待していたりする。

 「泥の97年デビュー組芸人」をはじめ、その他の同期芸人企画もそうだが、出演者はお互いが同じキャリアのためか、そこにいわゆる変な遠慮などはほとんどない。加えて養成所時代が一緒だったり、デビュー当時から深い関わりがあったりすると、世間にはあまり知られていない意外なエピソードを出演者それぞれが持っていたりもする。この同期芸人企画が比較的面白くなりやすい大きな要因だと言ってもいい。そこにライバルへの嫉妬心などが絡めば、番組はさらに盛り上がる。同期の筆頭組から遅咲き組まで、多くの出演者が活躍しやすい、見ていて楽しい回になるというわけだ。

 話を今回の「霜降り同期芸人」に戻せば、この2011年にデビューした同期芸人が行われそうなことは、少なくともこれまである程度想像することはできた。霜降り明星、ハナコ、ヒコロヒー、ZAZY、コロコロチキチキペッパーズ、男性ブランコ、ビスケットブラザーズ。以上が今回集まった同期芸人たちになるが、この他にも吉本興業ではマユリカ、ケツ(ニッポンの社長)、ゆにばーす、吉本以外ではカミナリなど、近年活躍が目立つ芸人がひしめいていたからだ。すでに1〜2年前から企画することができたと言っても言い過ぎではない。第七世代の始まりとも呼べるこの世代は、それくらい目立っていた。

 こちらの想像した通りというか、やはりお互いがそのデビュー当時を知っているため、過去のエピソードが飛び交う期待に違わぬ面白い回となった。全員が結果を残している実力者なので面白くなるのは当然といえばそれまでだが、それでも少し驚いたというか、発見ではないが新たに気付かされたこともあった。

 せいや、粗品、岡部、ヒコロヒー、ナダル……。メンバーのなかでもとりわけ知名度の高い彼らがそれなりに面白い話をすることはすでにわかっていたことだが、そうしたなかで新鮮だったというか、こちらの目に止まったのが昨年のキングオブコント王者、ビスケットブラザーズになる。今回のメンバーの中では一番最近に売れたコンビになるが、その喋りはキングオブコント優勝がまぐれでないことを証明するには十分なものだった。

 そんなビスケットブラザーズ2人のうち、どちらが良かったかをあえて言えば、金髪のツッコミ担当・きんになる。出演者が多かったため喋る機会は決して多くなかったが、そんな少ないチャンスのなかでも2度ほどサラッとしたトークで爆笑をさらった。この時のきんの姿が、個人的にはこの放送回で最も印象に残るシーンになる。

 どこか落ち着いているというか、余裕がありそうというか。なんとなく自信がありそうに見えたきんの姿に、筋の良さ、ピンとくるものを感じた。ひと言でいえばそうなる。キングオブコント後の活躍度合いでは準優勝のコットンにやや押され気味に見えるが、ビスケットブラザーズも決して捨てたものではない。やや地味ではあるが、優勝した彼らもまだもうひとつ跳ねる可能性はある。どっしりと構えながらも確実に笑いを誘ったビスケットブラザーズになんとなくやりそうなムード感じた。まだ底は見えていない。この「霜降り同期芸人」を見てそう思った次第である。

 「霜降り同期芸人」は十分面白かった。10段階で言えば最低でも7以上は付けられる。だが、あえてマイナスな意見をあげれば、こちらのイメージ通りというか、予想を大幅に越えるものではなかった。面白かったが驚きは少なかったと言い換えてもいい。そうした意味では先述の「泥の97年デビュー組芸人」を見た時の方が、衝撃度は高かったと言える。「泥の97年デビュー組芸人」が1回目に放送されたのは2009年、奇しくも「霜降り同期芸人」のメンバーと同じ、彼らが芸歴13年目での出演だった。知名度ではそれぞれの出演者で大きな差はあるが、14年前を回想する限り、芸人としての実力に大きな差があったとはあまり思わない。「泥の97年デビュー組芸人」のメンバーもそれなりに高いポテンシャルを備えていた。それでも世に出ることができなかったのはタイミングや運が悪かったというべきかもしれない。現在は主にラジオパーソナリティなどで活躍するマンボウやしろを見ていると思わずそんなことが言いたくなる。

 次にアメトーークで行われるのはどの同期芸人だろうか。個人的に期待しているのは「霜降り同期芸人」の1年上、ニューヨーク同期(2010年デビュー)芸人だ。現在大活躍中のニューヨークを筆頭に、鬼越トマホーク、おかずクラブ、横澤夏子などがその該当芸人になるが、ここにあともう2〜3組出てくるか、あるいは賞レース優勝者が出現すれば、実現の可能性は高いと見る。そしてもうひとつ期待したいのは2012年デビューの同期芸人だ。該当芸人は空気階段、オズワルド、コットン、さや香、蛙亭、亜生(ミキ)、真空ジェシカなど。メンバーの顔ぶれを見る限りは十分に可能だと考える。こちらも数年後の実現を期待したい。

 次回の同期芸人が楽しみだ。

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