この芸人から目が離せない。ニッポンの社長・辻に「設楽統超え」の期待も
昨日放送された、「有吉の壁」2時間スペシャル。今が旬の芸人が多数出演する日本テレビの人気番組のひとつだ。しかし、昨日の放送を、チャンネルを変えず、飽きることなく、2時間最後まで視聴した人はどれほどいただろうか。決して多くはなかったのではないかとは個人的な見解になる。
有吉の壁が最初に放送されたのは2015年4月。そこからレギュラー化される2020年までの間は、年に3回程度放送される特別番組だった。
正直な話をすれば、レギュラー化される前の方が好みだった。特番時代よりパワーダウンした印象は否めないと、最近の有吉の壁を見ていて思う。レギュラー化によって毎週放送されるようになれば、その分、一度の放送に費やすことができる「エネルギー」は少なくなる。番組内容が徐々に薄くなることは、この手の番組では避けられない、宿命のようなものだ。
2時間スペシャルだったが、こちらの期待を超えるような満足感は得られなかった。最初の「おもしろキャンプ場の人選手権」はまだよかったが、後半以降は正直言って尻すぼみに終わった感じだ。
このままいけば有吉の壁は長期間持たないのではないか。「エンタの神様」のように、年に数回不定期に放送する方が合っているのではないか。その方が視聴者が飽きることなく、放送を楽しみにすることができると思う。余計なお世話だが、有吉の壁の先行きを案じたくなった。
ただ、そうは言っても、メインコーナーである
「一般人の壁を越えろ!おもしろ〇〇の人選手権」は、やはり面白い。この番組の生命線であり、出演者である芸人たちの大きな腕の見せ所でもある。
即興ネタを披露する「一般人の壁」では、主にコントを得意とする芸人の出演が多い。そんな「一般人の壁」で、筆者が個人的に気に入っているのが、さらば青春の光になる。センスの良いミニコントの出来栄えは、他の芸人よりも明らかにワンランク上だ。昨日の放送でも筆者が一番面白いと思った瞬間は、「おもしろキャンプ場の人選手権」で披露された、さらば青春の光のネタだった。
さらば青春の光、かが屋、ジャングルポケット、シソンヌ、タイムマシーン3号、ハナコ等々、昨日の放送には、キングオブコントファイナリスト経験者が数多く出演した。さらにはマヂカルラブリー、空気階段、ニッポンの社長という、今年のキングオブコント決勝に進出した3組も堂々とした即興ネタを披露していた。
10月2日に行われるキングオブコントで、さらなる飛躍の可能性を秘めた3組。この3組の中で僕が個人的に注目しているのが、関西出身の実力派コンビ、ニッポンの社長になる。今年に入ってから、こちらの関心はますます高まっている。
なぜニッポンの社長に目を奪われるのか。ひと言でいえば、オリジナリティに溢れているからだ。お笑い芸人なら当たり前じゃないかと言われそうだが、少なくともニッポンの社長と似たタイプは、彼らの周辺には見当たらない。ニューヨークがやや近い感じがするが、それでも似ているとは言えない。野田クリスタル(マヂカルラブリー)や鈴木もぐら(空気階段)のような、キャラクターが先立つタイプでも全くない。
「その部分を笑いに変えることができるのかよ」という感想が一番しっくりくるが、それでもまだ説明不足な気がする。着眼点が滅茶苦茶イイ。他の誰とも被らない正統派……。彼らの魅力をひと言で表すことは難しい。確実に言えることは、面白いということだけだ。
ネタ作り担当・長身の辻と、小柄で小太りのケツ。「ケツ」という芸名を使っているように、見た感じではケツの方には何か独特のキャラを感じる。少し前のアメトーークでも存在感をいい感じで発揮していた。しかし、そんなケツのキャラが気にならないくらい、ネタそのものが面白い。このネタを作っているのが、見た目は普通な長身の男、辻だ。
見た感じキャラのある相方と、その一方で、シュッとした感じに見えるもう片方の相方。このイメージで筆者が想起するのは、ブレイク前後のバナナマンだ。
バナナマンがテレビに出始めた頃。注目されるのはいつも日村さんだった。まず日村さんがイジられる。そこに補足やツッコミを入れる設楽さん。それで彼らのターンは終わりという感じ。早い話、バナナマンが出始めた当初は設楽さんにスポットが当たることはほとんどなかった。
最初の何年かは日村さんが中心だったバナナマン。日村さんの「じゃない方」になりかけていた設楽さんだったが、そこからキレのあるボケやトークでジワジワと評価を高めていった。そして気づけば、番組出演本数ランキングでトップを争う、今や日本を代表するタレントになっていた。
第1回キングオブコント準優勝(2008年)。筆者は2010年頃に、バナナマンから1レベル上のブレイクを感じたが、その飛躍にはキングオブコントの実績も深く関わっていると思う。バラエティ番組でも面白いが、ネタも面白い。さらには両者とも大喜利的なセンスもある。バナナマン、特に設楽さんにカリスマ性が出てきたのも、たしかこの2010年〜2011年頃だった。そして2012年に「ノンストップ!」が始まったことで、それは決定的なモノになった。
設楽さんとまでは言わないが、ニッポンの社長・辻にそれと似たようなムードを感じるのは確かだ。ブレイク中だが、その魅力や実力がまだ全開にはなっていない。多くの人の視界には入っていないノーマークの存在に見える。設楽さんのように同世代のライバルたちを追い抜く大きな可能性を感じるのだ。
設楽さんとの違いは、関西出身であるところと、もう一つは、M-1グランプリにも出場できるところだ。バナナマンはコント一筋だったが、ニッポンの社長は漫才とコントの二刀流。もっと言えば、M-1の決勝に進出する力も十分にある。コンビ歴は浅いため、M-1に挑戦するチャンスはまだ多くある。第2のかまいたちになる可能性もなきにしもあらずだ。
辻は今年35歳。バナナマンがキングオブコントで準優勝したのも設楽さんが35歳の時だった。キングオブコントでバナナマン並みの結果を残せば、もっと陽の当たる舞台へあがることができる。そうなれば、この人に目を付ける業界人が必ず現れるはずだ。関西系の匂いも大きな武器になると思う。
辻は高みに行けるチャンスを掴むことができるか。キングオブコントの結果はいかに。
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