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水曜日のダウンタウンはなぜ面白いのか

 僕はこれまでバラエティ番組を数え切れないほど見てきたが、水曜日のダウンタウンに勝るものはない。そう断言したくなる。2014年4月、番組がスタートして早くも7年半が経過した。番組が始まった当時、7年半にわたるそれ以降の躍進を予測した人はどれほどいただろうか。

 始まった頃は、当然のことながら、人気番組だったわけでは全くない。ネットニュースで目にする頻度も少なかった。知る人ぞ知る面白い番組。少々人気が落ちれば、いつ終わってもおかしくはない匂いもあった。

 視聴率が下降傾向にあれば、番組の内容はとかく変わりがちだ。大手術を施し、開始当初のコンセプトから大きくかけ離れる番組をよく見かけるものだが、水曜日のダウンタウンは違った。スタッフ陣は思いのほか冷静だった。そう見えた理由は、番組のスタイルを簡単に変えなかったところだ。MC(浜田雅功)、パネラー、プレゼンター、VTR(ナレーション)。この番組の大枠に対し、苦し紛れに手を加えるようなことは一度もなかった。7年半を同じスタイルで押し通してきた。

 番組のスタイルやコンセプトはほぼ不変。変わったところをあえて言えば、説(VTR)の内容だろう。番組スタートから1年くらいは、道ゆく人や専門家などにインタビューをしながら検証するタイプの説が多かった。そこから徐々に、主に芸人にスポットを当てた説、ドッキリ系の企画が中心になっていった感じだ。一般人中心から芸人(タレント)中心へ。この微調整は効いていた。面白さが跳ね上がったように感じる。水曜日のダウンタウンのそれ以降の放送にはすべて、笑いの匂いが漂うことになった。番組のスタイルが大きく変わったわけではないのに、だ。

 その中心にいたのはもちろんダウンタウンになるが、彼らのボケとツッコミのバランスと、番組のそれとが一致しているところに、水曜日のダウンタウンらしさがあった。出演者と番組の関係がとても円滑に見えると言ってもいい。番組のリズムが良いので、見ていて楽しいのだ。誰かひとりに依存している、ワンマン番組度も低い。

 この番組の魅力について語ろうとすれば、三日三晩ブッ通しで喋り続けてもまだ足りないほどだ。一冊の本にまとめられるくらい、ネタは揃っている。これほど声を出して笑わせてくれる番組は他にはない。

 ゴールデンタイムの番組とは基本的にスタンスが違う。ゴールデン進出を狙っているわけではない。現在の出演者は、ゴールデン番組とは異なるコンセプトで集められた人たちだ。VTRには、他にはない組み合わせが成立している。

 たとえば、2020年3月11日に放送された、「バンジーNG芸人でも飛ぶまで帰れなかったらいつかは飛ばざるを得ない説」に出演したメンバーの関係性だ。多田健二(COWCOW)、上田浩二郎(Hi-Hi)、堤下敦(インパルス)、久保田かずのぶ(とろサーモン)、森田哲矢(さらば青春の光)。

 なんとも言えぬ顔ぶれだ。高視聴率を狙う他の番組には集まりにくい5人。考えにくい組み合わせなのだ。彼らによって生み出される面白さも、他とは全然違う。新鮮で独特の味わいに満ちている。それに絶妙な編集やパネラーのコメントが加わると、VTRの見方も意外性溢れる唯一無二のものになる。

 他のバラエティ番組と比較すれば一目瞭然。話題の人物や人気者揃いとはいえ、あちらは「普通」だ。華やかではあるが、驚きはない。どこかで見た覚えのある番組だ。

 出演者の凸凹感も、見る側の目を釘付けにする展開力に富んでいる。

 これまで見たことがないようなアイディア溢れるクリエイティブな企画を連発する水曜日のダウンタウン。演出を担当する藤井健太郎さんのこだわりのある姿勢にも見える。こういう企画を繰り返していけば、いつか終わってしまうぞという、悪い予感が走ることはほとんどなかった。むしろ余裕、自信の表れと解釈する方が自然だった。

 これまで見たことがない、まさに前例のない新鮮さがある。独自性溢れる番組なのだ。もちろんダメな番組が陥りがちな、ベタな企画で固める後ろ向きなスタイルではない。番組は当然、面白くなる。ファンに応援されやすい番組だ。

 「オールスター後夜祭」、「クイズ☆正解は一年後」なども同様。藤井さんのこだわりを強く感じるオリジナリティに溢れた番組だ。特に「クイズ☆正解は一年後」は、筆者が1年の中で最も放送を楽しみにしている番組と言っても過言ではない。

 細かいところは、また後日記すことになると思うが、たとえ視聴率が下がっても、最後の最後までそのスタイルを貫いてほしい。番組の次回予告だけで笑ってしまったのは、筆者はこの番組が初めての、まさに驚きの経験なのだ。

 この世界に漂うヒエラルキに自ら勝手にはまり込まず、今後も画期的な企画を披露し続けてほしいものだ。

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