yume


一夜の夢。女は男を誘惑し、男はその興に金を落とす。
あの夜もそんな夢だった。いや、夢のはずであった。
月が照らしたのは、私たちの淡い思い出でも、輝いた日々でもなく、
男のいい加減さだけであった。
一夜ばかりか、一年もその興に溺れた男と月と共に約束を待つ女
戯言。
なぜ私はこんなとこを彷徨っているのであろうか。
ずっと歩いても夜が明けなかった。君は手を伸ばすと届くところにいるのに、
手を伸ばせなかった。
どんな人より愛をくれたし、愛を教えてくれた人。
離れているけど近くにあった想い。いつも間にかその距離と同様に離れて行った。
孤独を分け合うことができたなら、もう一度願うよ。
君の幸せを。
いくら喚こうと、叫ぼうと君にはもう届かない。
その慟哭さえも。


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