文具店を勝手に応援したい
Twitterで「#勝手に応援文具店」というハッシュタグを作りました。
いま、苦境に立たされている文具店さんを応援したいです。まだそのお店のことを知らない人に向けた「いつか行ってみたいお店リスト」ができたらと思い、勝手に始めてみました。
すでにちらほら、投稿が増え始めているようです。
なぜ文具店を応援するか
文具や雑貨を企画するメーカーを経営する身として、これまでたくさんの文具店に支えられてきました。
最近でこそオンライン直販に重心を置いているものの、創業期から今に至るまで、文具や雑貨を扱う小売店さんの存在なくして事業を続けることはできませんでした。
ところがいま、小売店は苦境に立たされています。
文具はスーパーなどのエッセンシャル・サービス(生活に必須なサービス)とは違って不要不急なものです。トンボ鉛筆の広告で「ロケットも、文房具から生まれた。」という名コピーがありましたが、いくら価値ある鉛筆でも食べられるわけではありません。
ですから今、どの文具店も「決断」を迫られています。
自粛要請に従ってお店を休むも地獄、家族や社員を守るために続けるも地獄。経済的に行き詰まるか、心無い声に非難されるか、どちらかの地獄を選ばされる究極の選択。こんな理不尽なことがあるでしょうか。
このような状況に置かれているのはどこも同じですから、文具店だけを特別視する理由はありません。とはいえ、そこは政治のリーダーシップに期待するとして。
ただ個人的な動機として、勝手に「お世話になってきた業界」を応援したいと思います。
声を上げることが大事
このような「勝手に応援する取り組み」は、すでに文具関係以外でも見られます。文筆家の塩谷舞さんは2月の時点でいち早くTwitterで呼びかけをされていました。
ものすごい数の投稿が集まっていて、自分自身、このタグのおかげで「いつか行ってみたいお店」が見つかるという恩恵を受けました。有能すぎるリスト!
さらには「ミニシアター・エイド基金」というプロジェクトも始まっています。ミニシアター文化の灯を消すまいと、映画監督の深田晃司さん、濱口竜介さんが発起人となって、多くの方の賛同が寄せられています。
全国の劇場に公平に分配できるようMotion Galleryで資金を募っているのですが、なんとプロジェクト開始から3日間で1億円以上の支援金が集まっています。
こうした活動を見ていて思うのは「声を上げることの大切さ」です。
族議員を政界に送り込み、業界に利する提言を行って、政治の「内側」からアクションを起こさずとも、個人の発信ツール(SNS)やクラウドファンディングのような仕組みが普及した現代では政治の「外側」からアクションを起こすことも可能になりました。
自分たちの利益ばかりを叫んで「クレクレ星人」になるのも考えものですが、とはいえヘルプの声を上げなければ人の耳には届きません。それぞれの立場の人が「いま何に困っているか」を適切に発信することは、けっして恥ずかしいことではないと考えます。
そして私は文具店を営んでいるわけではありませんが、文具店に支えられてきたメーカーのひとりとして「文具店を応援しよう!」と声を上げたいと思います。
勝手に応援することの是非
もちろん誰かを勝手に応援することは偽善的な態度に見えるかもしれません。「自分のことだけやっとけよ」と思われても仕方ありません。
でも、一周まわって、偽善でもいいかなとも思っています。もしもそれが誰かの役に立つのなら何でもやってみればいいし、ダメならダメで「ごめんなさい」して取り下げればいい。そう思います。
勝手に応援されることで「そこまで落ちぶれちゃいない」と感じるお店もいらっしゃるかもしれませんが、そのときは素直に「ごめんなさい」です。
吉本隆明さんは、こんなことを仰っています。
いいことしている時とか、いいことを言ってる時っていうのは、だいたい図に乗ることが多いわけです。やっぱり、図に乗ることが多いし、逆なことを言いますと、他者が悪いことをしている場合には、けしからんじゃないかっていうふうになってしまうことが多いわけなんです。
だから、それは、そうではないのであって、だいたい人間っていうのは、微妙なところでいいますと、いいことをしていると自分が思っている時には、だいたい悪いことをしていると思うとちょうどいいっていうふうになっているんじゃないでしょうか。
いいことをしている時は、悪いことをしていると思った方がいい。
そういう気持ちを忘れずに、あまり図に乗らず、叱られたら素直に「ごめんなさい」する心づもりで。
その上で、勝手に応援できたらと思います。これが「いま私にできること」です。
賛同していただける方には、ぜひ「#勝手に応援文具店」のタグをつけて発信していただけたらと思います。